Reuters logo
焦点:短期筋は「アベノミクス」の関心低下、株下落なら円高再燃リスク
2013年11月5日 / 06:02 / 4年後

焦点:短期筋は「アベノミクス」の関心低下、株下落なら円高再燃リスク

[東京 5日 ロイター] -ドル/円は約1年前と比べ、依然として約2割高い水準にある。だが、ヘッジファンドなど短期筋はアベノミクスへの関心を失っている。一方で、海外年金など長期投資家は日本株を大幅に買い越しており、株価が下落した場合、ヘッジの巻き戻しによる円買いが入りやすい。金融緩和状況は続いているが、ドル資産を過剰に抱える投資家からのドル売りも目立っており、円高再燃への警戒感が強まっている。

11月5日、ドル/円は約1年前と比べ、依然として約2割高い水準にある。だが、ヘッジファンドなど短期筋はアベノミクスへの関心を失っている。写真は都内の株価ボード。5月撮影(2013年 ロイター/Issei Kato)

<ファンド勢からおざなりな質問>

「何か新しいことはあるか」──ある金融機関のヘッジファンドセールス担当者が、顧客から受ける最近の質問だ。アベノミクスへの関心は薄れ、問い合わせは「定時見回り」のようなおざなりなものに変わってしまったという。

戦力の逐次投入はしないとする黒田日銀のもと、アベノミクスに対する海外勢の関心は薄れ、足元における為替市場での投機筋の活動は下火だ。

ドルは昨年末の86円付近から5月のピーク103.74円まで20%強上昇。アベノミクス相場の起点とされる昨年11月14日からは約30%上昇した。この間、ドルを買えば儲かるという状況が続いていた。

しかし、年後半はアベノミクス相場が失速。米連邦準備理事会(FRB)のテーパリング(量的緩和の縮小)告知による予想外の大幅な米金利上昇や株安を受け、6月半ばに93.75円まで下落した。

日本株投資の為替ヘッジとは無関係な短期筋のポジションについては、「5月のピーク時と比べて、円売りのポジションは相当軽くなっている」(邦銀)とされる。

<ヘッジの円売り、株下落で買い戻しも>

一方で警戒されているのは、より長期の機関投資家と日本株の動向だ。財務省によれば、今年1月―9月に非居住者は日本株を10兆3665億円買い越した。その規模は、昨年の年間実績2兆1272億円を大幅に上回り、2005年以来の高水準だ。

海外勢は日本株購入に合わせて円売りヘッジをしているが、株価が下落すればヘッジの巻き戻しで円高圧力が生じる。「日本株を買って円売りヘッジしたファンドや投資家は、株価が下がるとヘッジを巻き戻す必要が生じ、自動的に円を買い戻さなければならない」(機関投資家)からで、こうしたフローの為替相場へのインパクトは大きい。

円安効果が頼りの日本株は、円高が進めば下落する可能性が大きい。円高と株安の連鎖が再開することになれば、アベノミクス相場が「逆回転」を起こす可能性がある。下支え要因になるはずだった成長戦略には「海外勢の失望感が高まっている」(外資系証券エコノミスト)とされ、売りに拍車がかかるおそれもある。

<ドルのオーバーハング、中銀の円買い>

世界の投資家による日本株買いが継続する一方で、最近の外為市場では、自国通貨高を抑制するためにドル買い/自国通貨売り介入をしたアジア等の中央銀行が、合わせて、円買い/ドル売りを実施するケースが目立つ。

この現象は、ドルのオーバーハング(ドル資産の過剰保有)という感覚に起因するものとみられる。

「投資家がドルを大量保有することのリスクを意識し、リスクを分散する必要性を感じていることは確かだろう。今回の米政府機関の閉鎖や債務上限問題の先送りなど、米国という国に対する見方は、大分変化したものと考えられる」と三井住友銀行・市場営業推進部・チーフストラテジスト、宇野大介氏は言う。

FRBによると、10月30日時点の外国中央銀行の市場性証券類保有残高(米財務省証券、米政府機関債、その他)は3兆3160億ドルとなった。年初比の伸び率は2.3%。

外国中銀による米債保有残高は、2008年、2009年、2010年とそれぞれ年率18.9%増、14.9%増、13.3%増と顕著に拡大してきたが、2011年には0.4%の縮小に転じるなど、海外公的機関による米債の保有は徐々に不安定化してきている。

<日米欧の金利差消失、ソロスチャート機能せず>

外債購入が困難なのは、中央銀行に限ったことではない。日米欧の金利差がほぼ消失したことで、中銀も民間投資家も、金利ではもはやヘッジができなくなっているという現状もある。

厳しい環境でも、世界の投資家は金融緩和による円安効果に望みをつなぐ日本と、テーパリングを粛々と進める米国という、「やや不確か」な要素にすがって、今年上半期は、ドル買い/円売りを進め、米国債へ投資してきた。

しかし、「アベノミクスの円安効果と米テーパリングが両方とも『本格的に不確か』になったことで、拠り所を失った投資家は、外債の積み増しに二の足を踏んでいる」と東海東京証券・チーフエコノミスト、斎藤満氏は分析する。

一部の市場参加者はソロスチャートを頼りにトレーディングを行っていたが、同チャートは一見マネタリーベースを根拠としているように見えるが、マネタリーベースが多いところは相対的に金利が低いとの大前提があり、金利差が消失した世界ではワークしない、と斎藤氏は言う。

<テーパリング告知の傷跡>

多くの債券ファンドや国際的な投資家の今年の運用成績は芳しくない。主因は、米国のテーパリング告知を受けて年央から予想外に高騰した米金利だ。

米ニューヨーク州のトーマス・ディナポリ会計検査官の報告によると、ウォール街の利益の伸び率は2013年終盤に鈍化し、通年の利益は昨年を大きく下回る見通しだ。

報告では、ニューヨーク証券取引所会員の証券業務利益は2013年に150億ドルと、2012年の239億ドルから減少するという見通しが示されている。金利の上昇、訴訟関連費用等が下押し要因となった。

年末の相場は乱高下することがあるが、その発生源は「その年に儲かっていない人が、やられた分を取り戻そうとしてジタバタすること」(外銀)だ。こうした起死回生をねらった動きは、今年もファンドの決算期(11月末)や年末に向けて、相場を揺さぶる可能性があると見られる。

森 佳子 編集;田巻 一彦

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」
0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below