November 6, 2013 / 7:17 AM / 6 years ago

焦点:シフトする日本株買い主体、上昇パワー低下で緩和期待の声も

[東京 6日 ロイター] -日本株の買い主体がシフトしている。今年前半までけん引役だった海外短期筋は安倍晋三政権の成長戦略に失望して後退。代わって政権の安定感や矢継ぎ早の政策対応などを高く評価する海外年金筋などの長期資金が流入している。

11月6日、日本株の買い主体がシフトしている。今年前半までけん引役だった海外短期筋に代わり、政権の安定感や矢継ぎ早の政策対応などを高く評価する海外年金筋などの長期資金が流入している。都内で4月撮影(2013年 ロイター/Toru Hanai)

マーケットにはアベノミクス相場第2幕入りを期待する声が出る一方、買いのボリュームが小規模となり、株価押し上げのパワーは低下している。今春のような上値追いの再現を期待する参加者からは、追加金融緩和を切望する声が漏れてくる。

<為替気にしない長期投資家>

日本株とドル/円の相関性が低下している。円安期待の後退は日本株の上値を押さえる要因であり、日々のトレードでは依然として材料にされやすいものの、データでみる限り、以前のような連動性は薄れている。

ドル/円が2013年8月末に98円台前半だった際、日経平均.N225は1万3300円台だった。現在は98円台半ばと為替はほぼ同水準ながら、日経平均は1万4300円台と7%以上、上方に位置する。大和証券の試算では、2012年11月中旬以降のドル/円との相関から得られる予測値に対して、実際の日経平均は500円以上、上振れているという。

円安離れの要因は、日本株の買い主体の変化だ。今年前半のアベノミクス相場をけん引してきたヘッジファンドなど短期筋は、金融緩和期待を背景に日経平均先物買い・円売りのポジションを構築。円安と株高が連動する相場を作った。だが、足元でその買いは一服。今度は、海外年金など長期投資家が日本株への投資を始めている。

実際、海外ファンドでは為替ヘッジなしの人気が高まっている。米国における主要な日本株ファンドの純資産流入累積額をみると、為替ヘッジがあるウィズダムツリー・ジャパン・ヘッジド・ETFの累積額はほぼ増えていない。他方、ヘッジなしのiシェアーズMSCIジャパンETFは概算で12億ドル弱の資金が流れ込んでいる。

大和証券・投資戦略部課長代理の熊澤伸悟氏は、為替の動向をさほど気にしないソブリン・ウェルス・ファンドや年金など長期投資家による日本株投資が、増え始めている表れと指摘。「日本株投資の動機が、円安期待からファンダメンタルズ評価に移行している」と話す。

<アベノミクス相場、第2幕入りも>

東証・大証が発表している投資主体別売買動向では、9月第1週から10月第4週の間に、海外投資家は現物を1兆2736億円買い越す一方、先物(日経平均先物、日経平均ミニ先物、TOPIX先物、TOPIXミニ先物の合計)では3268億円の売り越しだった。9月以降、先物を好む短期筋は売り優勢だが、現物を主体とする長期投資家の買いで吸収している構図だ。

日経平均ベースの予想PER(株価収益率)は15倍強と割安感はないものの、「資金のアロケーション上では、影響のないレベルだ。海外年金などが潤沢な資金をどこに振り向けるかというときに、日本株が選ばれることが多くなっている」(外資系証券エコノミスト)という。

ボラティリティの低下も長期投資家にとって好環境だ。ゴールドマン・サックス証券のデータによれば、日経平均の1カ月満期のインプライド・ボラティリティ(IV)が大きく低下する一方、2年満期のIVは小幅な低下にとどまり、足元では1カ月満期のIVが2年満期のIVを下回っている。

通常、IVは短期満期よりも長期満期のほうが大きく、期間構造は右肩上がりのケースが多い。9月上旬から短期満期のIVが相対的に急低下したことで、「IVの期間構造がダウンワード・スローピング(右肩下がり)からアップワード・スローピング(右肩上がり)へと変化し、アベノミクス相場は短期急騰の第1フェーズから、緩やかな長期上昇の第2フェーズに入った」とゴールドマン・サックス証券・エクイティデリバティブトレーディング部長、宇根尚秀氏は指摘する。

<依然高いアベノミクスへの評価>

同じ海外勢でも、ヘッジファンドと年金など長期投資家で投資行動が大きく異なるのは、アベノミクスに対しての評価が違うことも要因だ。足の速い短期筋が「岩盤規制」などを崩し切れない成長戦略への失望感を強めている。対照的に海外の長期投資家は、政権の安定感や、矢継ぎ早の政策対応などを高く評価しているという。

「アベノミクスのアジェンダ(政策課題)を順々にクリアするにつれて、日本株に対する見方がますます強くなっていく」──。10月中旬、ある外資系証券の日本株営業担当者が香港に出張訪問した際、世界最大級のグローバルファンドのアジア地域担当CIO(最高運用責任者)は、そう話したという。同担当者の出張は3日間だったが、訪問先は20社近くにのぼった。

安倍政権が誕生してから10カ月、国会開会中に限ってみれば、その半分にも満たない間に、安倍晋三首相は日銀による異次元緩和や環太平洋経済連携協定(TPP)への参加、消費増税の実施と文字通り矢継ぎ早に政策を繰り出したと、海外長期投資家は評価している。

政府が18日に打ち出した国家戦略特区での規制緩和概要に対しても、「いま一歩、踏み込み切れていない」(国内証券)との厳しい声もあるが、外資系証券などからは「国家公務員制度改革や特区推進本部の設置など今後、成長戦略を一層推し進めるうえでの土台作りは進んでいる」(BNPパリバ証券・日本株チーフストラテジスト、丸山俊氏)と好意的な受け止め方も出ている。

財政協議が混乱した米国や財政統合への道のりが険しい欧州が政治リスクを警戒させているのに対して、参院選の与党圧勝で、少なくとも3年間の安定政権を得た日本の政治は、相対的な評価ではあるが、海外の長期投資家を安心させているようだ。

<期待大きい日銀の追加緩和>

ヘッジファンドに比べ、年金など海外の長期投資家の買いはロングタームでの投資が期待できる特徴がある。

だが、今までのところ買い上げる規模は小さい。今年4─5月の外国人投資家は、週間ベースで1兆円規模の買い越しもあったが、最近は多くても2000億円程度。日経平均が1万5000円の大台をなかなか回復できないのは、ボリュームの低下が要因でもある。

「Buy my Abenomics」──。安倍晋三首相は9月25日、ニューヨーク証券取引所で世界経済回復のためとして、世界の投資家にこうアピールした。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による株式投資比率引き上げや14年1月からのNISA(少額投資非課税制度)開始など国内投資家への期待もあるが、やはりカギは日本株売買の過半を占める海外勢の動きにかかっている。

海外勢のもう1つの特徴は、日銀の金融緩和への評価や期待が大きいことだ。日銀はすでに国債市場で毎月発行額の7割にあたる量を買い取っており、追加緩和の余地は限られるとの見方もある。

しかし、量的緩和第3弾(QE3)縮小を探る米国やインフレに苦しむ新興国などに対して、金融緩和余地は大きいとみられている。何かあれば対応してくれるという「クロダプット」を信頼する海外投資家は増え始めている。

10月下旬に米国投資家を訪問した国内証券のストラテジストは「彼らは政府・日銀の次の一手に対し、固唾(かたず)を飲んで見守っている」と指摘。ヘッジファンドを含めた海外投資家が、次に本格的に動き出すのは日銀による追加緩和観測が高まる年明け以降になるかもしれない、と話している。

杉山 容俊;編集 田巻 一彦

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