January 14, 2014 / 4:12 AM / in 6 years

コラム:原発は地球温暖化の「解決策」となるのか

[10日 ロイター] - By Richard Schiffman

1月10日、NASAゴダード宇宙科学研究所のジェイムズ・ハンセン前所長は、地球温暖化防止には新世代の原子炉を建設する必要があると結論付けているが、この主張は論議を呼びそうだ。写真はフランスのビュジェ原発。2011年4月撮影(2014年 ロイター/Benoit Tessier)

米航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙科学研究所の前所長で気候科学者のジェイムズ・ハンセン氏らは昨年12月、気候変動に関する新たな研究報告書を発表した。その内容は極めて物議を醸すものだった。

先に発表された「国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告書にあるように、各国は産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑えることで合意している。だが同氏らは、地球への長期にわたる回復不可能なダメージを防ぐには、これではまだ不十分だと指摘している。

ハンセン氏はさらに、太陽光発電や風力発電といったグリーンエネルギーだけでは、温室効果ガスの排出を十分に削減することは不可能だと主張する。

そして、新世代の原子炉を建設する必要があると結論付けている。ハンセン氏の見方によれば、原子力エネルギーだけで、この先何十年分もの「クリーン」な電力を生産することが可能だという。

いくつかの理由から、ハンセン氏の主張は論議を呼びそうだ。第1に、放射性廃棄物をどう処理するかといった問題がいまだに解決されていないこと。第2に、プルトニウムが核兵器製造に利用される可能性があること。第3に、福島第1原子力発電所の事故以降の世界では、原発が人口密集地付近や地震などの災害が起きやすい地域に建設されても十分に安全性を保てるかどうかに疑問も残る。

しかし同氏は、不慮の事故が起きる可能性を考慮しても、原子力エネルギーは石炭を燃料とする火力発電よりはるかに害を及ぼさないと反論。火力発電所から大気中に飛散した微粒子を原因とする肺や心臓疾患で、米国では毎年数万人が死亡していると説明する(中国などでは、その数は数十万人に上る)。

他の環境問題の専門家たちも大気に害を及ぼさないという原子力の利点は認めつつも、慎重な姿勢は崩さない。自然資源防衛協議会(NRDC)のラルフ・カバナー氏は、安全面での懸念はさておき、原子力発電はまったく費用効率が悪いと指摘する。

原子力発電が盛んな国は現在、フランス、ロシア、中国のわずか3カ国。フランスでは、フランス電力公社(EDF) が電力の70%を原子力発電で生み出している。

ハンセン氏によると、電力はドイツよりもフランスの方がかなり安い。その理由について、フランスの電力は大半が原子力エネルギーによるものである一方、ドイツのそれは再生可能エネルギーだからだとし、フランスに倣うべきだと語った。

ハンセン氏は一体型高速炉(IFR)に期待を寄せているようだ。しかし、第4世代にあたるこの原子炉はまだ建設されていない。あまりに巨額の費用がかかるためとみられる。だがもし完成すれば、同氏によると、現在のものよりもはるかに安全であり、現在使用されている原子炉から生み出される副生成物を燃料として稼働できる。また、燃料の99%が燃焼可能で、ほとんど有毒廃棄物を出さないという。

だが、電力会社を動かすほど建設コストが下がるまでには、相当な研究開発費を要するだろう。科学分野への財政支出や業界の研究予算が削られている時代に、その費用がどこから来るかも疑問だ。安価な天然ガスが生産コストをこれまでになく押し下げるなか、電力業界には扱いにくい新たなテクノロジーを開発する動機はほとんどないと言っていいだろう。

それでも、ハンセン氏は希望に満ちている。米国政府に対し、中国と協力して原発を建設するよう促してもいる。同氏によると、米国は原子力発電の技術開発で中国に手を貸さないのであれば、中国は自分たちでそれを行い、2つの残念な結果がもたらされることになるという。1つは、開発が遅れ、その間に多くの石炭が使用されること。そしてもう1つは、原子力テクノロジーの分野を中国が米国に取って代わり、リードするようになることだ。

「クリーン」な原子力エネルギーが地球を救う一助となり得ると、ハンセン氏は環境問題専門家の一部を納得させることができるかもしれない。しかし、原子力発電がコスト削減になると電力会社を説得することはできないだろう。そして差し当たり、電力会社の意見の方が物を言うのである。

*筆者のリチャード・シフマン氏は、環境問題を専門とする作家・ジャーナリスト。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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