January 28, 2014 / 1:42 AM / 6 years ago

焦点:開幕目前のソチ五輪、プーチン大統領には「危険な賭け」

[モスクワ 26日 ロイター] -開幕まで2週間を切ったソチ冬季五輪。ロシアを率いるプーチン大統領(61)にとって最高の業績となるよう準備が進められてきたが、同国が抱える諸問題の象徴となるリスクもある。

1月26日、開幕まで2週間を切ったソチ冬季五輪は、ロシアを率いるプーチン大統領にとって最高の業績となるよう準備が進められてきたが、同国が抱える諸問題の象徴となるリスクもある。写真は19日撮影(2014年 ロイター/Alexei Nikolsky/RIA)

五輪が華々しく開幕すれば、プーチン大統領は、黒海のさびれかけていたリゾート地を7年で現代的な五輪開催都市へと変貌させた自身の功績を誇らしく思うだろう。

夏冬合わせて五輪史上最高額の予算が投じられたソチ五輪でプーチン大統領は、自身がロシア最高指導者として正しいことを証明し、国民を団結させるとともに、旧ソ連時代から進化した国の姿を映すものになることを期待している。

「五輪参加者、ファン、ジャーナリスト、すべてのテレビ視聴者に新生ロシアを目の当たりにしてほしい。そして、この国を新たな目で、公平な見方で見てもらいたい」。プーチン大統領はソチで、内外メディアにこう力説した。

しかし、五輪の準備期間中、ロシアの抱える問題にもスポットライトが当てられ、マイナスの評判がプラスのイメージを打ち消すことも少なくなかった。施設の準備は整っているが、五輪が上手くいかなければ、プーチン大統領の夢は打ち砕かれ、自身の個人的・政治的な立場も危ぶまれる可能性がある。

プーチン大統領は、ソチ周辺の検問強化などで安全な五輪の開催を約束しているが、同国の治安部隊はこの1週間、ソチで自爆攻撃を計画しているとされる1人の女の行方を追っている。

また、英国の人気歌手エルトン・ジョン氏らから批判を浴びている同性愛宣伝禁止法については、ロシア人は同氏が好きだなどと述べ、批判を抑えようとしているが、その効果は出ていない。

さらに、五輪関連施設をめぐる汚職疑惑や環境への悪影響、移民労働者の不当な待遇に関する報道も、プーチン大統領には耳の痛い話だ。

推定500億ドル(約5兆円)の五輪開催費用は、ロシアの景気が過去数カ月で悪化していることを考えると、なおさらギャンブルのように見える。

元閣僚のボリス・ネムツォフ氏は昨年、横領やリベートで約300億ドルが消えたとする報告書をまとめ、「ソチ五輪はとんでもない詐欺にほかならない」と痛烈に批判した。

<景気低迷>

五輪開催地がソチに決まった2007年当時のロシア経済は、原油高の後押しもあり過熱状態となっていた。2003─06年の4年間は国内総生産(GDP)の伸び率が毎年6%以上を記録していた。

ただ、それは2008─09年の世界金融危機の前のことだ。プーチン大統領の3期目は、政治的・経済的な停滞で海外からの投資は失速している。今年のGDP伸び率は約2%にとどまるとみられ、同国の銀行も厳しい状況に置かれている。

環境活動家で野党指導者のYevgeniyaChirikova氏は、「我々が今目にしているロシアの銀行の破たんは、少なからず、国家の最高レベルで五輪を推し進めたことに起因すると考えている」と非難する。

一方、プーチン大統領自身は、こうした批判を「外野の騒音」だとして気にするそぶりを見せていない。2011─12年の冬に起きた反政府デモで失われていた自信たっぷりな態度も完全に復活している。米経済誌フォーブスによる2013年版の「世界で最も影響力ある人物」ランキングでも1位に選ばれた。

プーチン大統領は記者団に対し、「どんなことにも反対する勢力が常におり、五輪計画でさえもそうであることを我々は良く知っている」と語った。

<安全対策>

今回のソチ五輪には、約90カ国・地域から約6000人の選手・コーチ・関係者が集まる。チケットの売れ行きは当初の期待通りではないものの、ロシア当局は自国のメダル獲得数よりも、会場を埋める観客数の方を気にしている。

最大の懸念は、五輪を狙った武装勢力による攻撃だ。ソチはイスラム教徒の多い北カフカス地域の西端に位置し、同地域では武装勢力がイスラム国家の樹立を目指している。

プーチン大統領は、約3万7000人の治安要員を動員してソチの警戒に当たらせ、無人機や軍艦も配備。全国的にも厳戒態勢を敷いている。

しかし、ソチの安全対策が強化される中、北カフカス地域の玄関口であるボルゴグラードでは先月、連続自爆攻撃があり少なくとも34人が死亡。すべての都市を守ることの難しさが浮き彫りになった。

また、「テロ脅迫状」が複数の国のオリンピック委員会に送られ、国際オリンピック委員会(IOC)が後になって危険はないと断定したが、世界がソチ五輪の安全面に神経質になっていることが改めて示された。

元米中央情報局(CIA)副長官のマイケル・モレル氏は「彼らは現地を完全にコントロールできていないことを基本的に認めたがらない」とし、ロシア政府のコミュニケーションのまずさを指摘する。

同性愛宣伝禁止法に対する抗議デモも、五輪に水を差す可能性がある。活動家らが呼び掛ける五輪のボイコットは実現に至らなかったものの、抗議活動はほぼ確実に行われ、警察の寛容さと忍耐力を試すことになる。治安部隊による弾圧が行われれば、デモそのものよりもプーチン大統領のイメージを傷付けることになる。

<政権批判>

プーチン大統領は批判を和らげるため、ソチでのデモ規制を緩和したほか、政敵の元石油王ミハイル・ホドルコフスキー氏や、反プーチンバンドのメンバーらを恩赦で釈放した。

それでも、反政府派はプーチン大統領の野党に対する態度に変化はないと口をそろえる。野党は、2012年に同大統領が再び大統領に就任して以来、政権による人権弾圧が続いていると訴えている。

反政府派は、ソチ五輪のプロジェクトは「政治上の見せ掛け」だとし、光り輝くビルを新築するかたわら、今にも崩壊しそうな住宅の存在を隠していると批判。五輪会場建設地や周辺では多くの住民が新たな居住先に引っ越しているが、一部では立ち退きへの不満も出ているという。

また、建設工事による土壌汚染を危惧する声や、移民労働者の労働条件の改善を訴える声もある。

プーチン大統領は、五輪が開幕すればポジティブな面にスポットライトが当たることを期待しており、個人的にも国家的にも五輪を成功させるための努力はいとわないだろう。

同大統領は「五輪、スポーツの発展、国家全体の発展には強い関係がある。それが実現することを期待する」と強調。国家の威信をかけたソチ五輪がいよいよ来月7日に開幕する。

(Timothy Heritage記者、翻訳:野村宏之、編集:宮井伸明)

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