January 28, 2014 / 7:07 AM / 5 years ago

焦点:構造転換迫られる任天堂、「据え置き」「携帯」の統合モデル構築へ

[東京 28日 ロイター] -3期連続の営業赤字に陥る任天堂(7974.T)が、事業構造の転換を迫られている。据え置き型ゲーム機「WiiU」の販売不振によって、赤字覚悟でハードを普及させ利益率の高いソフトで回収するというこれまでのビジネスモデルが機能しなくなっているためだ。

1月28日、3期連続の営業赤字に陥る任天堂が、事業構造の転換を迫られている。都内の家電店で20日撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

当面は、高騰するソフト開発費を削減するのが急務。並行してスマートフォンなど競合機の拡大に対抗するため、据え置き型・携帯型のゲーム機の開発統合を軌道に乗せ、次世代の収益モデルを構築することが重要な課題になる。さらに「マリオブラザーズ」など任天堂のソフト資産を生かしたビジネスを立ち上げられるかどうかも、同社の今後を左右しそうだ。

<「勝ちパターン」が逆回転>

WiiU不振の要因は「ソフトの投入不足」に集約されている。2012年末の発売当初は、自社の主要ソフトが2本にとどまり、立ち上げでつまずいた。次の大型ソフト投入では13年夏の「ピクミン3」まで半年間のブランクが生じ、本来ならWiiUの新規投入とともに発売が期待されていた「Wiiスポーツクラブ」や「WiiフィットU」の投入は13年秋まで延びた。

今期に入って任天堂の岩田聡社長は「有力ソフトを出して挽回する」と繰り返し強調。だが、この間に「WiiUには遊べるソフトが少ないというイメージが定着してしまった」(国内証券会社)という。

任天堂は、昨秋から海外でハードの値下げに踏み切り、国内でもソフトとのセット販売で実質値下げをしたものの、一度止まった流れに再び勢いを取り戻すことはできなかった。

任天堂に限らず家庭用ゲーム機の基本戦略は、赤字覚悟でハードを安く普及させ、利益率の高いソフトで回収するモデル。しかし、ハードの普及につまずけば、そのモデルは逆回転し、販売不振を背景に値下げへと追い込まれ、さらに赤字は拡大する。

最も深刻なのは、サードパーティから魅力的なゲームが集まらなくなることだ。昨年9月に死去した前社長の山内溥氏は「お客はゲーム機が欲しいのではない。ハードはソフトを遊ぶために仕方なく買っている」という言葉を残したことで知られているが、今の任天堂はまさにソフト不足に悩まされている。

<高騰するソフトの開発費>

「ゲームビジネスはたった1本のソフトで流れが劇的に変わる」というのが岩田社長の心情だ。Wiiが大ヒットしたのは、棒状のリモコンを振ってゲームをするという革新的なハードだけの貢献ではなく、WiiスポーツやWiiフィットというハードの魅力を引き出す全く新しいソフトが普及をけん引した。WiiU普及でも、WiiUでしか遊べない革新的なソフトの投入が欠かせない。

だが、任天堂は構造的な赤字体質に陥っている。今期の研究開発費は700億円と過去最高の水準。ゲーム機が大容量化して高機能化したことで、一般的にソフトの開発費は1本あたり20―30億円とされ、高騰する開発費が経営の重荷になっている。

エース経済研究所の安田秀樹アナリストは「任天堂がソフトを出せないのは開発費の高騰にも要因がある。20―30億円を回収するにはソフトをたくさん売らなければならないが、ハードが普及しなければ売れない。非常に悪循環に陥っている」と指摘する。

<次世代ハードは据え置き・携帯の開発を統合>

今月17日、岩田社長は大阪市内の記者会見で「任天堂がゲーム機を2―3万円で、ソフトを何千円かで買ってもらって、そういうことがずっと続くか疑問を持つべき。新たな事業構造を考えている」と述べた。30日の経営方針説明会で戦略を語る予定だが、すでに中長期を見据えた動きがある。

昨年2月、9年ぶりに開発組織を再編し、従来まで据え置き型はWii、携帯型はDS、といったようにばらばらに作っていたハードの開発を統合した。ハードの設計を統合し、ソフトを据え置き型・携帯型の相互に転用しやすくし、低コストで柔軟な開発をする狙いだ。今月、京都市南区の本社北側に建設した7階建ての新棟に夏までにスタッフ陣が集結し、統合プロジェクトが本格スタートする。

効果が出るのは、WiiUと3DSの次世代機からになるが、岩田社長は「これは(据え置き・携帯の)ハードを1種類にすることを意味しない。むしろ統合がうまくいけばプラットフォームを増やせる」と述べ、スマホやタブレット端末の拡大を背景に、新たなビジネスモデルを探る姿勢を示している。

<キャラクタービジネスに乗り出すか>

一方で、市場関係者が期待するのは即効性。「マリオ」「ドンキーコング」「ゼルダの伝説」など任天堂のソフト資産をアップル(AAPL.O)やアンドロイドのスマホ向けゲームにアプリ配信して収益を多様化すべきとの声は多い。

ただ、岩田社長は「他社のハードにマリオを出すのは、ハードとソフトを一体で作っている任天堂の強みを損なう」と否定的な見解を示す。

また、任天堂は持分法適用会社の「ポケモン」でアニメや玩具、雑貨へのキャラクター展開を成功させているが、マリオやドンキーコングのキャラクタービジネスは不十分。ウォルトディズニー(DIS.N)やサンリオ(8136.T)のようにテーマパークを展開するアイデアも市場でたびたび浮上している。

だが、ゲーム開発者出身で「心はゲーマー」と自称する岩田社長に、ゲーム事業以外へ経営資源を積極的に割く姿勢はみられない。キャラクタービジネスは「キャラクターの価値が傷つくことがないと確信できる場合のみに行う」などとしており、テーマパーク運営も「今あるようなテーマパークと同じようなものでは、任天堂の価値の向上につながるとは考えていない」と慎重な発言をしている。

<厚いキャッシュ・ポジションで再起期す>

昨年の年末商戦では、家庭用ゲーム機で競合するソニー(6758.T)の「プレイステーション(PS)4」とマイクロソフト(MSFT.O)の「Xbox One」が好調な滑り出しを見せた。このため、WiiUの不振はスマホやタブレットの影響だけでは説明できず、市場関係者からは「任天堂の1人負けは、任天堂自身に責任がある」(国内アナリスト)との声が強まっている。

もっとも、WiiとDSの成功で多額のキャッシュをもたらした岩田社長に経営責任をとって退任すべきとの声は少ない。これまで高配当を実施しながら13年9月末の現預金と有価証券の合計額は8500億円にのぼっている。

もともとゲームビジネスは当たり外れが大きい。「一度の失敗で企業の存続が危険にさらされることのないように強いキャッシュポジションを持つ」(岩田社長)のが任天堂の戦略だ。

WiiUでつまずいた以上、今後はできるだけキャッシュアウトを小さくして、次の準備にかかるのが得策。据え置き型ゲーム機のサイクルは5年間とされ、まだ2年目に入ったばかりのWiiUを抱える任天堂は、苦しい時期が数年続く。

村井令二 ソフィー・ナイト 取材協力:長田善行 編集 田巻一彦

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