February 5, 2014 / 5:17 AM / 4 years ago

アングル:軍備増強目指す安倍政権、裏に潜む日米同盟への不安

[東京 5日 ロイター] -自衛隊と米軍の制服組が連携を深めているのとは対照的に、日本の安全保障の政策担当者は、同盟に対する米国のコミットメントに確信を持てずにいる。

安倍晋三政権は緊張が高まる中国・北朝鮮をにらんで防衛予算を増額し、集団的自衛権の行使容認を目指しているが、その裏には米国の軍事負担を減らすことで、日本への信頼をつなぎとめておきたいという思惑も透けてみえる。

<米の戦う姿勢が後退>

1月27日、自衛隊と米軍の司令官が横田基地(東京都福生市)の地下壕に集まった。パソコンとモニターがずらりと並んだこの部屋で、コンピュータ上で作戦を展開する模擬演習を実施。弾道ミサイルへの対応や、非戦闘員の避難などで協力体制を確認した。

ここは東日本大震災の際、米軍による救援活動「トモダチ作戦」の指揮所になった場所でもある。演習に参加した米陸軍のケネス・ウェブスター氏は「トモダチ作戦で自衛隊と米軍が互いに誰と話せばいいのかが分かった」と話す。「ある意味、あれは最初の共同作戦だった」。

米軍と自衛隊の関係は、かつてなく深まっている。自衛隊の一部機能は米軍に組み込まれ、日本が弾道ミサイルを迎撃する際は米軍の早期警戒衛星が探知する発射情報が必要となる。昨年6月にカリフォルニア州で実際に部隊を投入した共同演習では、離島防衛を念頭に置いた訓練を実施した。日本が創設を決めた水陸両用部隊は、米海兵隊をモデルにしている。

こうした現場レベルの動きとは対照的に、同盟をめぐる日米政府の関係はこのところ安定感に欠ける。中国が昨年11月に設定した防空識別圏に対し、バイデン米副大統領は訪中時に批判はしたものの、日本が期待する撤回までは要求しなかった。

また、米国は尖閣諸島(中国名:釣魚島)を日米安全保障条約の適用範囲としているが、領有権については日中どちらの側にも立ってない。

昨年末に安倍首相が靖国神社を参拝した際は、米国はすぐに「失望した」と異例の声明を出した。首相補佐官の衛藤晟一参議院議員は、「日本は同盟を守るために必死に努力をしてきた。(米国は)中国に気を使うのではなく、むしろ同盟国の日本に気を使うべきではないか」と話す。

そのうえ米国は台所事情が苦しく、国防費を削減している。外交・安保で二正面作戦を取れず、アジアよりもシリアなど中東問題を優先せざるをえない状況にある。米国は有事の際に本当に守ってくれるのか、日本の中で疑念が生まれている。「米国の力は低下した。少なくとも10─15年前に比べると、いつでも戦うという姿勢は後退した」と、安倍首相に近い元外交当局者は言う。

<米が求める日本の努力>

安倍政権は今年度、それまで10年間減り続けてきた防衛予算を増額した。来年度も上積みする。さらに集団的自衛権を行使できるよう、年内の憲法解釈見直しを目指す。海洋進出に積極的な中国と、弾道ミサイルの開発を着々と進める北朝鮮をにらみ、自衛隊の能力を高めるのが狙いだ。

だがもう1つ、米軍の負担を減らすために可能な部分は日本が担い、日本の防衛に対する米国の関与を確実にしたいという思いも垣間見える。

「北朝鮮のミサイル能力は相当向上しており、日本を射程に収め、能力と意図で日本の脅威になっている。中国も軍拡を進め、地域紛争になる可能性も高くなっている」と、元防衛庁長官の中谷元・衆院議員は言う。その一方で「すべて米国に依存すれば日本の安全は大丈夫だという意識はよくない。米国の事情なども考えて、日本がしっかりとした考えを持っておくことが必要だ」と語る。

両国は今年、日本が武力攻撃を受けたり、周辺有事が起きた際の自衛隊と米軍の役割分担を定めた「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」を17年ぶりに見直すことで合意している。

米側は日本の役割拡大に前向きで、国防総省の高官は「新たなガイドラインはこの先、直面しうる安全保障上のさまざまなシナリオの中で、互いの役割をきちんと反映したものになることが大切だ」と期待を示す。

「冷戦時代は自動的に(日本を)守ってくれたが、今は日本がそれなりの努力をしなければ日米同盟だって作動しないと米国が言っている」と、衛藤参議員は語る。「我々はその現実を目の当たりにしている。ある程度のところは自分たちでやる」──。

それには日本が憲法解釈を見直し、集団的自衛権を行使できるようにする必要がある。法的整備に向けた議論を進めている政府の有識者会合が、4月ごろまでに報告書をまとめる予定。その後、政府が与党と協議に入る。公明党は慎重な姿勢を崩していないが、政府は今通常国会で憲法解釈の見直しを議論したい考えだ。

集団的自衛権の行使が可能になることで、公海上で並走する米艦船が攻撃された際、自衛隊が反撃できるようになる。米国に向けて発射されたミサイルを、日本が撃ち落とせるようにもなる。

敵の基地を先制攻撃する能力を日本が保有すべきかどうかも協議される見通しだ。だが、国内外の理解を得るのが難しいうえ、衛星などをそろえるには多額の費用が必要なため、結論が出るまでに4─5年かかりそうだという。

「米軍は日本を守るためにやってくれているわけだから、『よろしく』ということではうまくいかない。もう少し前に出て協力していく」と、首相補佐官の礒崎陽輔参議院議員は言う。「日本を強くしつつ、米国との関係も強化していく。日本がより大人になるということだ」。

久保信博 取材協力:リンダ・シーグ、ティム・ケリー、フィル・スチュアート 編集:田巻一彦

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