February 13, 2014 / 4:02 AM / 4 years ago

コラム:日中関係は「最悪の状態」か

[11日 ロイター] - 国際政治学者イアン・ブレマー

ドイツのミュンヘンで先月に開催された国際安全保障会議で、中国の傅瑩外事委員主任(副外相)は、日中関係が「最悪の状態」にあると言い切った。しかし、最近の日中関係を表現する言葉としては、特段大げさなものではないだろう。

1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では、中国の出席者の1人が、安倍晋三首相を「トラブルメーカー」と評し、北朝鮮の金正恩第1書記と同列扱いした。一方で、中国を軍国主義的かつ極めて攻撃的と評した安倍首相は、経済的に深く結び付きながら外交面では冷え込んでいる日中関係について、第1次世界大戦で戦う前の英独関係に例えて説明した。さらに、日中の駐英大使は最近、互いを「ハリー・ポッター」に登場する闇の帝王「ヴォルデモート卿」になぞらえて非難合戦を繰り返した。

行動は言葉よりも雄弁だ。両国とも、お互いを挑発的するような動きには事欠かない。昨年11月には中国が、尖閣諸島(中国名・釣魚島)を含む東シナ海上空に防空識別圏(ADIZ)を一方的に設定し、翌12月には、安倍首相が靖国神社の参拝に踏み切った。

ただ、応酬はエスカレートしても、両国のにらみ合いが軍事衝突に発展する可能性は依然として極めて低い。中国が日本との経済関係を根本から台無しにすることは考えられず、実際に地方当局者レベルでは、日本からの投資誘致への関心の方がはるかに強い。そして日本も、一部企業には「脱中国」でリスクをヘッジする動きがあるものの、巨大な中国市場での日本企業の成功を景気回復のカギとみていることに変わりはない。日中関係が沸点に達する可能性は低い。むしろ、両国間の緊張関係は息の長いサイクルに入ったと見るべきだろう。

両国に紛争を回避する意図があるとするなら、我々は日中関係をどの程度懸念すべきだろうか。軍事衝突の可能性は低いにせよ、日中関係が依然として世界で最も地政学的に危険な二国間関係であり、それは今後も変わりそうにないことを留意しておくべきだろう。そう考える理由はいくつもある。

まず第一に、確率は低いものの、重大な結果を招きかねない誤算のリスクは常に存在する。中国側の「領空侵犯」に対する自衛隊機の緊急発進(スクランブル)が常態化すれば、間違いが起こる危険性は膨らむ。外交関係が冷え切っていることを考えれば、もし何か間違いが起きた場合には、双方とも互いの意図について最悪のケースを想定するはずだ。

さらに、世界第2位と第3位の経済大国である中国と日本は、現在は経済の規模と結びつきによって互いに無視できない関係にあるが、経済的依存が弱まっていると双方が考え始めれば、衝突のリスクは高まる。中国の日系企業2万3000社では1000万人の中国人が働いているが、日本企業は現在、脱中国による多角化を積極的に進めており、対中直接投資は減りつつあり、特に東南アジアへのシフトが目立つ。一方、外交関係の緊張化などを背景とした日中貿易の縮小を埋めるように、中国と韓国の貿易は急速に拡大している。

また、日中間の火種は解決の難しい歴史的反感が背景にあり、対立の根深さが、両国関係を重大な世界的リスクにさせている。日中間の外交的働き掛けは中断しており、米国をはじめとする諸外国も、日中関係の改善に十分な力を発揮できていない。中国には日本の立場から世界を見ようとする人はおらず、逆もまた然りだ。米ピュー・リサーチ・センターの調査によると、中国では日本に好感が持てると答えた人は6%にとどまり、日本でも中国に好意的な人はわずか5%だった。日中とも、本格的な衝突は相手にとって最善の利益ではないと十分承知しているのだろうが、それは事態をさらにエスカレートさせる理由を与えるだけだ。中国高官の1人が私に最近説明したように、中国は日本を押し込むことに気兼ねしていない(彼らは「戦争したくない」し、そして日本は「その気もない」)。

軍事衝突まで突き進まないことが日中双方の利益である一方、両国ともに緊張関係を長引かせたい思惑はある。歴史的な仇敵に対する不屈の姿勢を見せることで、自国内で政治的利益を得られるからだ。対米関係などで外交政策を軟化させている中国政府は、国内の国家主義的圧力のガス抜きに反日を使っている。一方、安倍首相は中国の台頭を、地域での日本の立場に対する長期的な脅威ととらえており、中国を押し返そうと躍起になっている。

では、2014年の日中関係はどんなことが想定されるだろう。全体としては、双方で国民感情が一段と悪化し、ビジネス環境も冷え込むことが見込まれる。安倍首相は集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈変更を進め、靖国神社も再び訪れるのだろう。

しかし、短期的なリスク以上に我々を憂うつにさせるのは、日中関係に解決策がまったく見えてこないことではないだろうか。

*筆者は国際政治リスク分析を専門とするコンサルティング会社、ユーラシア・グループの社長。スタンフォード大学で博士号(政治学)取得後、フーバー研究所の研究員に最年少で就任。その後、コロンビア大学、東西研究所、ローレンス・リバモア国立研究所などを経て、現在に至る。全米でベストセラーとなった「The End of the Free Market」(邦訳は『自由市場の終焉 国家資本主義とどう闘うか』など著書多数。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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