February 20, 2014 / 6:52 AM / 6 years ago

コラム:中国信託商品の恐るべきリスク

John Foley

2月19日、中国の信託業界は短期資金を調達して長期投資に回すことで成り立っているが、このミスマッチは既に一部信託商品の破綻を引き起こしている。写真は人民元紙幣。2011年3月撮影(2014年 ロイター/David Gray)

[北京 19日 ロイター BREAKINGVIEWS] -

中国の信託業界は、金融システムにおける「恐るべき子供たち」だ。10兆9000億元(1兆8000億ドル)に及ぶこの業界は、短期資金を調達して長期投資に回すことで成り立っている。このミスマッチは既に一部信託商品の破綻を引き起こしており、こうした事例は今後も続くだろう。

愚かにもこうした商品は救済されているため、懸念の種は破綻件数の多さとは別のところにある。

信託商品は本質的には「金融の箱」だ。ローンから不動産、株式、債券に至るまで、何でも放り込むことができる。信託会社が箱を組み立て中身を詰めた上で、金融エクスポージャーを薄切りにして証券、つまり信託商品を作り、富裕な投資家に売る。信託会社は0.7%程度の手数料を取るが、箱の中身が悪くなっても理論上は投資家に補償する義務を持たない。

最近、2つの商品によってこの仕組みが試された。1つは「誠至金開1号集合信託計画」で、1月にデフォルト(債務不履行)に陥りかけたが、ぎりぎりの段階で名前を明かさない投資家によって救済された。中国証券報によると、もう一つの「松花江(77)号山西福裕能源項目収益権集合資金信託計画」は1億2600万ドルの支払いが滞った。

信託商品の需要は驚くほど増加している。銀行預金金利の上限が3.3%なのに対し、倍以上の利率を提供する商品が普通だからだ。預かり資産は過去3年間、年平均53%のペースで増加。最近鈍化しているとはいえ2013年末時点で総額1兆8000億ドルに達し、9月末から8%の伸びを示した。

<大断層>

信託商品を取り巻く心配の度合いは一様ではない。ローンに分類される資産は45%どまりだ。もっとも、その他の資産もエクイティを装ったローンかもしれない。一方、複数の投資家に販売される「集合」信託に属すのは25%の4500億ドル。誰が誰に資金を借りているのかをめぐり論争が起こった場合、最も危険なのがこのタイプになる。

信託が不信を誘う理由は三つある。最も大きいのは、短期の資金調達と長期投資というミスマッチに潜む危険性だ。多くの信託商品の満期は2─3年。しかし資金調達を望む鉱山会社やインフラ開発業者にとって、これは一瞬に過ぎないかもしれない。

第二に、本来簿外で行うべきでないローンをごまかしたい銀行が、信託商品を悪用する可能性がある。いわゆる「銀行と信託の協力」は信託の総資産の20%に減ったが、商品に何を組み込むかについて銀行が助言する例は今でも見られる。

最後に、信託会社はよく理解されていない。中国銀行業監督管理委員会の管轄下にあるため、監督当局は「シャドーバンキング(影の銀行)」ではないと主張できる。しかし資本の手当ては薄い。信託会社は窮地に陥っていない場合でも、商品の破綻を避けたがる。彼らのビジネスは将来さらに販売を増やすことを前提としており、多くの場合、相手は同じ投資家だからだ。

最大のリスクは、信託会社から資金を借りた企業が返済できなくなることだ。多くの信託会社の資産は健全だが、なりふり構わず資金を求める過剰債務の不動産開発会社や鉱山、地方政府プロジェクトも信託会社に群がってくる。

<信頼が崩れる時>

借り手が返済不能に陥ったことが理由で「集合」信託商品ががデフォルトを起こすケースを想像してみよう。面目をつぶさない、そしておそらく最も一般的な解決策は、銀行や信託会社、地方政府が白馬の騎士たる救済者を探し出すことだろう。

危険なのは、こうした救済は投資家に間違った信頼感を呼び起こしてしまうことだ。信託商品は巨額投資のかたまりではない。最低投資単位は100万元と、北京の家計の平均可処分所得の約30倍となる。しかし富裕な投資家でさえ、販売する銀行との良好な関係に基づいて商品を購入しているのが未だに実態ではないか。

より重要なことに、一握りの著名な信託会社が混乱に陥って投資家が打撃を被るだけで、より無名の会社の商品には買い手がつかなくなるかもしれない。中誠信託のような一目置かれる大手なら、1回のデフォルトで名声が傷ついても持ちこたえられるかもしれない。より小規模な吉林省信託などだと、そうはいかないだろう。

投資家が逃げ出せば、信託会社に頼っていた借り手は沈没する。後に続くのは企業破綻、失業、投資家の怒りだろう。投資家はリスクを取っていないという勘違いの信頼をあてにしていた他の金融商品にも余波は及ぶかもしれない。

もちろん、究極の場合には中国政府が国内総生産(GDP)の約5%に相当する「集合」信託商品をそっくり救済する可能性がある。このシナリオでは全員が目先の痛みを回避できるが、リスクについて意味ある学びは得られない。

デフォルトが蔓延し、投資家の信頼が失われるような事態なら、そうした解決策もあり得るだろうが、中国はまだそこまでには至っていない。現在のところ、信託商品の購入者は関係者の数の多さそのものによって保護されている。すなわち信託会社から銀行、資金の借り手、借り手に対する納入業者、地方政府に至る関係者はどれも、大規模な混乱回避を望む十分な理由を抱えている。こんな事情で投資家が保護される状況は、長続きしないはずだ。

<背景となるニュース>

◎中国証券報によると、山西省の石炭会社に関連する「信託商品」4件が17日、投資家への返済を滞らせた。この石炭会社は吉林省信託が発行したこうした商品6件を通じて総額9億7300万元を借り入れている。残り2商品の償還日は2月19日と3月11日。

◎このうち「松花江(77)号山西福裕能源項目収益権集合資金信託計画」という商品は国有銀最大手の一つ、中国建設銀行(601939.SS)が販売したが、組成したのは吉林省信託だった。

◎信託商品の利率は通常の銀行預金を上回る。預金金利の上限は3.3%。信託商品は富裕層向けに販売され、最低投資単位は100万元。

◎中国信託協会によると、発行しているのは中国の信託会社65社で、昨年末時点の運用資産総額は10兆9000億元だった。

◎「誠至金開1号集合信託計画」という信託商品も1月の期限までに返済できなかったが、名前を名乗らない投資家が、やはり山西省の石炭会社である借り手に資金を提供した。組成したのは中誠信託で、販売は中国工商銀行(ICBC)(601398.SS)。

*筆者は「ReutersBreakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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