[東京/セントルイス 25日 ロイター] -25日からウェブサイトがアクセス不能となっている仮想通貨ビットコイン取引所、Mt.Gox(マウント・ゴックス)は同日、「当面、全ての取引を停止することを決定した」とする文書をウェブサイト上に掲載した。
「このところの報道、およびマウント・ゴックスの運営に対する潜在的な影響」を理由として挙げた。
文書はまた、「マウント・ゴックスは状況を注視しており、適切に対応する」としている。
東京に本拠を置くマウント・ゴックスは「異常な活動」が見られることを理由に今月に入りビットコインの引き出しの無期限停止を発表。25日にはウェブサイトが停止され、事実上消滅した状態となった。創設者の所在は不明、東京の事務所は抗議する利用者を除いてはもぬけの殻となっている。
マウント・ゴックスのマーク・カーペレス最高経営責任者(CEO)はこの日、マウント・ゴックスは消滅したのかとの質問に対し、電子メールで、「近く正式な発表を行う。マウント・ゴックスの事業は現在、転換期に差し掛かっている。他の関係者も関わっているため、現時点ではこれ以上のことは明らかにできない」と回答していた。
インターネット上で出回っている同取引所の「危機戦略」とされる文書によると、74万4000以上のビットコインが「鍛造性に絡む窃盗」により失われた。この情報が正確なら、世界で流通しているビットコインの約6%が失われたことになる。
また同文書によると、マウント・ゴックスの債務は1億7400万ドル、資産は3275万ドル。この文書が事実に基づいているかは確認はとれていない。
マウント・ゴックスは2010年にビットコイン取引を開始。ビットコイン取引所としては老舗で、ビットコインの利用促進団体「ビットコイン財団」の発足に関わった取引所の1つだった。
ただ同取引所に対しては、競合する取引所や損失を被った投資家などが、かなり前から安全面で問題があったと指摘。日本の当局は、仮想通貨ビットコインそのものではなく、マウント・ゴックスに問題があるとの立場を示している。
米財務省の金融犯罪執行機関連絡室(FinCEN)のスティーブ・フダク報道官は、「マウント・ゴックスに関する報道は承知している」と述べるにとどめ、これ以上のコメントは控えた。マウント・ゴックスに対する監督権限を有する米当局は、今のところFinCENのみとなっている。
また、ニューヨーク州金融サービス局のベンジャミン・ロースキー監督官は声明で、マウント・ゴックスをめぐってはなお不明な点が多いとしながらも、「消費者、および消費者が仮想通貨を扱う企業に託す資金の保護に向け、個々の事例に合わせた規制が重要な役割を果たす可能性があることが、今回の件で示された」とした。
ロースキー監督官は前月、仮想通貨を扱う企業に関する規則を発表する計画を示している。
日本の金融庁報道官は、ビットコインは金のように通貨の代用となるものではあるが「通貨ではない」とし、このためビットコインは金融庁の管轄下にはないとの立場を示した。
日本の財務省当局者も、ビットコインは財務省の規制対象ではないとの見解を示している
ビットコインの主要6取引所はマウント・ゴックスとは距離を置く内容の共同声明を発表。
「マウント・ゴックスのユーザーの信頼が著しく損なわれているのは単独企業の行為の結果で、ビットコインや電子通貨業界全体の価値を示すわけではない」と指摘した。6社はコインベース、クラケン、ビットスタンプ、BTCチャイナ、ブロックチェーンとサークル。
マウント・ゴックスのカーペレスCEOは23日、「ビットコイン財団」の理事を辞任。
同氏は前週ロイターに対し、「マウント・ゴックスに対してはさまざまな批判があるのをわれわれは承知しているが、できるだけ早い問題解決に向けあらゆる策を講じている」と述べていた。
ビットコインをめぐっては、複数の取引所が正体不明のハッカーから大規模なサイバー攻撃を受けるなど、技術的な問題が相次いでいる。
マウント・ゴックスが取り扱うビットコインは、同社が引き出しを停止する前の今月7日に828.99ドルで取引されていた。それ以降は83.7%下落し135ドルとなっている。これに対し、ビットスタンプで取引されているビットコインの価格は同期間に40.5%下落し、400ドルとなった。
ビットコイン財団は声明で、「マウント・ゴックスは複数ある取引所の1つで、同社の撤退は不幸なことではあるものの、新たな機会を創出している。この事例は、信頼できる個人やビットコイン・コミュニティーのメンバーが信頼できるサービスの提供を率先して行う必要性を示している」とした。
*内容を追加して再送します。
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