[ロストフ・ナ・ドヌー(ロシア) 28日 ロイター] 親欧米派の反政府デモによりウクライナ大統領を解任されたビクトル・ヤヌコビッチ氏は28日、ロシア南部のロストフ・ナ・ドヌーで記者会見し、現在も選挙で選ばれた正統的な大統領であると主張、ロシアのプーチン大統領に対しウクライナ新政権に強硬路線をとるよう呼びかけた。
ヤヌコビッチ氏が公の場に姿を見せたのは21日に首都キエフを脱出してから初めて。同氏はその後、国外脱出を試みたものの、国境警備隊に阻止され失敗。その後は所在不明となっていた。
スーツ姿のヤヌコビッチ氏は、「ロシアは行動を起こす必要がある。そのような責任を負っている」とし、「プーチン大統領の性格は承知しているため、現時点でまだ何も見解を示していないことに驚いている。ウクライナほどの緊密な関係にある国の運命に対し、ロシアが無関心な傍観者でいられるはずはない」と述べた。
そのうえで、「ロシアはあらゆる手段を通して、ウクライナが陥っている混乱と恐怖に終止符を打つ必要がある」と述べ、ロシア政府に対し、自身の政権を崩壊させた親欧米派の新政権に強硬な姿勢で接するよう求めた。
ただ、ロシアに軍事支援は要請しないと言明。ロシア入国後にプーチン・ロシア大統領と電話で話し、今後、直接会うことで合意したことを明らかにした。
ヤヌコビッチ氏は、現在もウクライナの正統的な大統領であると主張。出国したのは自身と家族の生命が脅かされていたためで、安全が保証されれば帰国する用意があると述べた。
この日、ロシア系住民が多数を占めるウクライナ南部のクリミア半島で武装集団が2つの空港を掌握。ウクライナ政府はロシア軍による侵略行為と批判し、緊張が高まっている。
空港の掌握についてヤヌコビッチ氏は「当然の反応」と指摘。ただ、クリミア半島はウクライナの一部にとどまるべきとの考えを示した。
ウクライナでは27日、政変の立役者の1人で経済相経験のあるアルセニー・ヤツェニュク氏を暫定首相とする挙国一致内閣が発足。5月25日に大統領選挙が実施される。
ヤヌコビッチ氏はウクライナ国民に対し、暫定内閣を拒否するよう呼びかけ、5月25日の大統領選は法律に則っていないものとして、出馬しない意向を示した。
*内容を追加します。
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