March 7, 2014 / 3:52 AM / 6 years ago

コラム:ウクライナ問題、注目すべきは中国の出方

[ロンドン 5日 ロイター] - By John Kemp

3月5日、緊張が続くウクライナ情勢をめぐり各国が異なる反応を示す中、長期的な視点で考えた場合、最も重要となるのは中国の出方だろう。写真は昨年12月、ウクライナのヤヌコビッチ大統領(当時)と握手する習近平国家主席。代表撮影(2014年 ロイター)

緊張が続くウクライナ情勢をめぐり各国が異なる反応を示す中、長期的な視点で考えた場合、最も重要となるのは米国でも欧州連合(EU)でもなく、中国の出方だろう。

ウクライナ問題に対する中国のこれまでの反応は例によって控えめなものだが、指導部はロシアの介入を静かに支持し、米国やEUによるロシア孤立化の試みには加担しないようにしている。

中国の人民日報は、欧米諸国はウクライナへの影響力を行使しようとしており、「冷戦時代の思考」にとらわれていると批判した。

ロシア政府によると、プーチン大統領と中国の習近平国家主席はウクライナ問題をめぐり電話会談を行い、互いの見解が近いことを確認した。

<欧米への恐れ>

ロシアと中国の両方にとって最も重要な外交関係は、圧倒的な軍事力と経済力を誇る米国との関係だ。影響力の低下は続いているものの、米国は今も、世界中で軍事力を行使できる唯一の国だ。金融・経済の最も重要な中心地であり、「ソフトパワー」はどの国よりも強力で、同盟ネットワークは全大陸に広がっている。

ロシアと中国はいずれも、対米関係は「協調」や「相互利益」と同時に、「対立」と「競争」に特徴づけられる。両国とも、米政府や同盟国の意図を懸念する理由がある。

ロシアが懸念するのは、米国とEUが単一市場と北大西洋条約機構(NATO)を拡大し続け、ロシアが主張する旧ソ連圏での「特権的利益」を認めようとしないことだ。

中国が指摘した通り、米国と欧州ではエリート層の多くに「ロシア恐怖症」が根強く残っており、それが外交関係をこじらせ、和解よりも対立を後押しする要因になっている。

一方で中国は、米国と米同盟国による包囲網を警戒している。中国指導部は「平和的成長」戦略を進めているが、軍事力と経済力の拡大は米国との対立や競争を引き起こし、中国による領有権主張や防空識別圏設定、海軍の増強、人権問題などをめぐって緊張は高まっている。

こうした問題で米国は多くの場合、中国と領有権をめぐり対立する日本、韓国、フィリピン、ベトナムなどを暗黙のうちに支持している。

米太平洋艦隊の情報部門の統括責任者は、最近行われた米海軍の会合で、中国海軍が「東シナ海で日本の部隊を壊滅させるための短期集中的な交戦」に向けて訓練をしているとし、「尖閣諸島の奪取を想定しているとしか考えられない」と指摘した。

日本は米国にとって、東アジアでの最も重要な同盟国だ。両国の間には安全保障条約があり、沖縄には多くの米兵が駐留している。日中間で衝突が起きれば、米国の関与は避けられない。

英フィナンシャル・タイムズによると、同責任者は、中国の海洋進出を「米太平洋艦隊への対抗が主な目的」だと指摘。「人民解放軍は海上戦に関する情報を得るために海に出て行こうとしている」との見方を示した。

一方、中国には経済面と軍事面で、他にも脆弱性を抱えている。インドとの間では、領有権問題や国際影響力をめぐる競争を背景に緊張が続いている。中国と米国はいずれも、アジアでの存在感を高めるためインドとの関係改善に努めてきた。

また中国は、石油・ガスを中東やアフリカ、オーストラリアからの輸入に依存しているが、供給ルートには米海軍がにらみをきかせる海上交通路も含まれ、この点でも戦略的な脆弱性を抱えている。

<勢力バランス>

故事によれば「敵の敵は友人」だが、この言葉は政治力学の原理をうまく表している。

中国とロシアは米国の敵ではないが、間違いなく同盟国ではなく、域内や世界的な影響力の競争でもライバル的な存在だ。中国とロシアはいずれも外交面で比較的孤立しており、米国の対抗勢力を演じるには、新たに非公式な同盟関係を築く必要がある。

中ロ関係は歴史的にこれまで緊張下にあった。毛沢東主席とソ連のフルシチョフ第1書記が1950─1960年代に対立し、両国間に冷戦関係が続いたことは有名だ。

ロシアが共産圏で指導権を握ることを、中国は受け入れてこなかった。米国はロシアと中国の対立を促し、中国と国交を樹立し、ソ連の影響力を抑えるために中国の近代化を支援した。

しかし歴史的にみても、勢力バランスは、互恵関係よりも利害の一致に基づいている。頼れる同盟国というのは、必ずしも好意の持てる存在ではない。

影響力が大きく低下した現在のロシアは、中国にとってもはや脅威的な存在ではない。両国の力関係は同等に近い。双方ともエネルギー問題や広範な地政学的戦略において、互いにより緊密な関係を構築する理由がある。

ロシアはガス輸出先をEU以外に拡大する必要があり、中国は安保状況を改善するため、ガス・石油の供給源を多様化させる必要がある。

ウクライナ危機を受け、EUはロシアへのガス依存低減を加速させる可能性がある。ガス供給元としてのロシアの立場は、アジア市場への輸出を拡大できれば強化されるだろう。

中国は現在、主に海上輸送で石油と液化天然ガス(LNG)を輸入しているが、供給ルートに問題が生じれば大きな影響を受けることになる。パイプラインを通じたロシアからの輸入は調達先の多様化につながり、LNG輸出国に対する交渉力も強まるだろう。

中国とロシアは過去10年間にわたりガス供給をめぐる協議を重ねてきたが、価格面で折り合えていない。ただ、昨年末には合意に近づいたとされている。

ウクライナ問題は、中国とロシアにとってガス取引の価格以上に重要な意味を持つ。両国の間には、欧米諸国によるシリア介入への反対や民主化推進をめぐる強い不信感など、共通点は多く存在する。

向こう数カ月や数年の間にロシアと中国の協力関係がさらに強化されたとしても、驚くべきことではない。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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