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焦点:米石油戦略備蓄の試験売却、エネルギー大国への第一歩
2014年3月14日 / 05:57 / 4年前

焦点:米石油戦略備蓄の試験売却、エネルギー大国への第一歩

[ワシントン 13日 ロイター] -米エネルギー省が12日、久々に戦略石油備蓄(SPR)の試験売却を発表したのは、ウクライナ情勢をめぐるロシアとの対立と偶然にも時期が一致しただけかもしれない。しかし根底にあるのは間違いなく、米国が新たに世界のエネルギー超大国となることを見据えた地均しだ。

3月13日、米エネルギー省による戦略石油備蓄(SPR)の試験売却決定の根底にあるのは間違いなく、米国が新たに世界のエネルギー超大国となることを見据えた地均しだ。写真はテキサス州にある石油戦略備蓄基地。2008年5月撮影(2014年 ロイター/Donna W. Carson)

エネルギー省はSPRから原油最大500万バレルを売却し、2日以内に入札を行うと発表した。当局はパイプラインの敷設状況の変化に伴い、製油所に原油が確実に届くのを見極めるための放出と述べた。

政府高官によると、売却の準備はロシアがウクライナに軍事介入するずっと前から進められてきた。複数のワシントンのアナリストも、数週間前に売却のうわさを聞いたと話している。

ホワイトハウスは試験売却について、備蓄の継続的評価の一環として法律で義務付けられているものだと説明した。これは1973年にアラブ諸国の先進国に対する原油の禁輸措置を受け、米ガソリン価格が急騰した際に設けられた仕組みだ。しかし試験売却が前回実施されたのは、米国が第一次湾岸戦争へと進む数カ月前の1990年だった。

多くのアナリストによると、今回の試験売却は日量1000万バレル以上を産出するロシアに対する警告という意味合いは薄い。それよりも、SPRの意義を拡大し、米国の原油輸入に深刻な途絶が起こった場合に備えるバッファーという役割から、景気を支えて究極的には外交政策に影響を及ぼすことに使える、より柔軟なレバーという位置付けに変化させたいというオバマ政権の願いを反映している。

IHSエナジーの世界原油市場担当シニアディレクター、ジェーミー・ウェブスター氏は「クリミア情勢に関係があるとは思わないが、長期的に見れば政府がSPRを地政学的手段に使えると考えているのは確かだろう」と話した。

米国では予想外に大量の原油や天然ガスの埋蔵が発見され、エネルギーを輸入に頼らない時代の幕開けを迎えようとしているが、それによって世界における米国の役割がどう変化するかについて、政策当局者らはまだ模索中だ。

共和党のベイナー下院議長など多くの政治家は、ウクライナに対するロシアの圧力を覆すため、天然ガス輸出を迅速に承認すべきだと政府に迫っている。ロシアはウクライナ経由で大量の天然ガスを欧州の他の国々にも供給しているからだ。しかし米国産天然ガスが出荷できるのは、数十億ドル規模の設備や港湾を建設してからだ。

SPRはエネルギー問題に際し、米政府が使える最も重要な政治的選択肢となっている。政府は、やはり1970年代の石油ショック時に導入された石油輸出禁止の解除や、天然ガス輸出の迅速な承認についても検討中だ。

<シェールオイルで自信深める>

シェールオイルの生産ブームにより市場が激変し、米国の原油生産量は昨年、日量100万バレルと過去最も速いスピードで増えた。

国内需要の減少と生産増加のおかげで、SPRは現在、約210日間の原油輸入に相当する規模に増え、義務付けられている90日分を大幅に超えている。

昨年は、米国が自前のエネルギー資源に対する自信を深めていることを証明する出来事があった。オバマ大統領は欧州連合(EU)と協調し、世界最大の原油輸出国の一つであるイランに対し、核開発計画をめぐる制裁に乗り出した。アナリストによると、これはノースダコタ、テキサス両州におけるシェールオイル採掘の急増がなければ踏み切れなかった措置だ。

しかし天然ガス輸出ターミナルの建設には数年を要し、原油輸出解禁は環境保護主義者らとの対立を引き起こす恐れがある。オバマ政権にとってSPRは、エネルギー生産国としての力を見せつける上で最も素早く使える道具なのだ。

<原油輸出解禁も>

コンサルタント会社、KBCテクノロジーズのエネルギー専門家、マーク・ルート氏は、SPRの試験売却は米政府が原油輸出の解禁を検討している証拠かもしれないと指摘。「米国産原油輸出の解禁は、ロシアを経済的に罰する一つの手段となる。(今回の)備蓄放出は警告であり、最終的な輸出解禁に向けて必要な第一歩かもしれない」と話した。

しかしルート氏は、米国で原油生産が劇的に増えたことにより、石油備蓄制度のあり方も大幅な変更を迫られる可能性があると付け加えた。

IHSのウェブスター氏は、オバマ政権は備蓄する原油の種類など、SPRの多くの側面を再検討しそうだと見ている。現在、SPRの3分の1はノースダコタ州で豊富に生産される低硫黄軽質油だが、米国の製油所はメキシコやベネズエラ産の硫黄含有量の多い重質油を精製するよう設計されており、必ずしも理想的ではない。

現在、米南西部にある備蓄を需要の多い北東部に移すべきかどうかや、備蓄をジェット燃料やガソリンにも広げるべきかどうかも検討課題だ。

センター・フォー・ニュー・アメリカン・セキュリティー(CNAS)のディレクター、エリザベス・ローゼンバーグ氏は「今回の件は実際のところ、エネルギー省による試験売却であると同時に、公共政策に関わるすべての人に向け、現在の市場環境でSPRはどうあるべきかを問いかける、対話の試みになるだろう」と話した。

(Timothy Gardner記者)

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