[ジャカルタ 8日 ロイター] -インドネシアで7月9日に大統領選挙が行われる。各種世論調査によると、闘争民主党が候補に擁立したジャカルタ州知事の「ジョコウィ」ことジョコ・ウィドド氏(52)が勝利する可能性が高いが、同氏の政策方針は明らかになっていない。東南アジア最大の国を運営する指針を示さない同氏に対し、外国人投資家の期待は早くもしぼみはじめている。
<沈黙するウィドド氏>
この1カ月、ウィドド氏を知る政治家や役人への取材で浮かび上がるのは、汚職が多いインドネシア政界では珍しい清廉潔白なイメージだ。首都が抱える問題を把握するため、各所で住民に話を聞くなどなど庶民派の側面も持つ。
しかし当のウィドド氏は、3月に大統領選候補に指名されてからは、メディアの取材を断っており、政策に関する見解も示していない。
ユドヨノ大統領は、6日にユーチューブに投稿されたインタビューで、「ジョコウィ氏は、自分の考えや、この国が今直面している複雑な問題を解決するために実行する政策を示すべき」と指摘。
大統領選に向けインフラ整備などの公約を発表しているゲリンドラ党は「ジョコウィ氏がわが国のために何をするのか、誰も知らない」(幹部)と主張した。
<外国人投資家は冷めた目>
闘争民主党の幹部、BudimanSudjatmiko議員はロイターとのインタビューで「強い国家主義」が党是と説明したが、それが政策にどう反映されるかについては「ジョコウィ氏が大統領になれば、われわれの政策課題が、かれの政策課題になる」と述べるだけで、具体論には踏み込まなかった。世界最大のイスラム国家を運営する政策が見えてこず、外国人投資家の歓迎ムードはすでに冷め始めている。
投資家は、首都知事としての政策などを手掛かりにしようとしている。
ウィドド知事は昨年末、首都の交通渋滞が深刻として、増大する中間層向けに低価格で燃費の良い自動車を導入する政策を批判。商業施設が多過ぎるとして、新設認可手続きを凍結した。また、賃金の引き上げについて、労組要求を大幅に下回る水準に制限した。
ジャカルタ州知事になる前、ジャワ島の町ソロの首長時代は、地元で強大な権限を持つ役人に対抗するといった、ポピュリズム(大衆迎合主義)的行動が目立つ。
外国企業のロビー団体の幹部は、ウィドド氏について「現在のところ、政策手腕は未知数。国政を担うには経験不足で、大衆迎合主義的傾向がある」と指摘した。
<メガワティ元大統領が後見か>
優勢とされるウィドド氏だが、資質を疑問視する声もあり、大統領への道は平たんではなさそうだ。
ウィドド氏擁立は、闘争民主党の党首であるメガワティ元大統領の鶴の一声で決まったようなものだとされる。複数の党幹部によると、メガワティ氏が有力な助言役になるようだ。
BudimanSudjatmiko議員は「(メガワティ党首が)ジョコウィ氏を操ることはないが、指導役を果たすことになる」と述べている。
大統領選には、直近の議会選挙で大統領選には、25%以上得票するか、20%の議席を獲得した政党の候補が正式に出馬できる。このため、9日の総選挙結果が、大統領選を左右する。
最近、大統領選をめぐり自身に強まる圧力について聞かれたウィドド氏は、「気にしていない」と答えた。
(Kanupriya Kapoor記者 翻訳:武藤邦子 編集:佐々木美和)
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