April 17, 2014 / 10:08 AM / 4 years ago

国内の長期投資家、かすかに日本株投資の動き

[東京 17日 ロイター] -日本株の自律反発は早くも一服。薄商いのなか、短期筋次第の相場展開が続いている。生損保など国内の長期投資家が、自国の株式投資にかすかに動く兆しをみせているが、慎重姿勢は変わらない。利回りで十分な魅力がありながら敬遠されるのは、日本の将来的なビジョンが見えないからだ。

一時的ではないデフレ脱却や持続的な成長軌道回復に向けた戦略策定が求められている。

<かつての「ザ・セイホ」、影薄く>

富国生命は2014年度の資産運用計画で6年ぶりに日本株を積み増す計画を策定した。割安かつ高配当利回りの銘柄を中心に投資する計画だ。ただ、規模は100億円の計画と慎重。「あくまで押し目買いに徹する」(渡部毅彦・財務企画部長)としており、上値を追うような買いはしないという。

生損保など日本のバイサイドは、依然として自国の株式投資に慎重だ。新年度の運用計画が徐々に明らかになってきているが、日本株を積極的に積み増す動きはごく少数。三井住友海上火災保険は、リスク許容度に応じてリスク性資産を少しずつ積み上げる方針だが、微増にとどまる見通しだ。損害保険ジャパン・日本興亜損害保険は引き続き削減する計画を示している。

東証の主体別売買データによると、生損保は3年連続で売り越し。かつて「ザ・セイホ」と呼ばれ、株式市場で買い主体として存在感を示していたが、最近はすっかり影を潜めている。最近では金額は大きくないが、コンスタントに売りを出す主体となっており、昨年は約1兆円の売り越しとなった。

9兆円を売り越した個人投資家を含め、日本にはロングタームで日本株に投資する投資家が乏しいのが現状だ。それはアベノミクスによる昨年の株高局面を経ても変わっていない。

17日の日経平均.N225は横ばい。早くも自律反発は一服となっている。東証1部売買代金は1兆7980億円と引き続き2兆円大台を下回った。「日銀緩和やGPIFなど2番煎じの材料と需給材料だけだ。短期筋の売買が止まれば、こう着してしまう。割安だとはわかっていても、成長ストーリーが描けず、長期投資家が入りにくい状況が続いている」(楽天経済研究所シニア・マーケットアナリストの土信田雅之氏)という。

「国内の長期投資家の不在は、日本株市場の根本的な問題だ。海外要因や海外短期筋の売買によって、必要以上に過敏に相場が振れてしまう。これでは健全な発展は望めない」とJPモルガン・アセット・マネジメントのエコノミスト、榊原可人氏は指摘する。

<ソルベンシー対応にめどつけたバイサイドも>

国内の長期投資家が日本株に依然として慎重な姿勢を変えないのは、2つの理由がある。

1つはソルベンシーマージン対応への対応だ。2011年度決算から算出式が厳格化され、株式や為替リスクを含む運用資産のリスク係数が引き上げられている。

株式は10%から20%、為替リスクを含むものは10%となった。各生損保では、国内株式を圧縮してきているが、昨年の株価上昇により、国内株式のリスクアセット金額は高い水準にあるとみられ、全体ではまた削減が続くとみられている。

ただ、対応にめどが見えてきた生損保も出てきている。富国生命は、これまでのポートフォリオ調整が奏功し、資産構成が改善し、リスク許容度が高まったという。「やるべきことはほぼ終えた」(前出の渡部氏)。12年度はグループで、13年度は単独で順ザヤになり、今年度の株式積み増し計画策定につながっている。

三井生命保険は、今年度も株式などリスク性資産を減らす流れにも変わりはないが、圧縮に一定程度の成果が出てきたことから、今年度は微減になる見通しだという。

生保の運用資産内訳(生命保険協会のデータ、かんぽを除く)で、株式は09年度の11.6%から2012年度までに8.1%まで低下しているが、11年も8.1%であり、構成比としては、下げ止まり感もみせている。一度火が付けば生損保による国内株式への投資が増加することに期待も高まる。

    <デフレ脱却なら国債投資の正当化は不可能に>

    しかし、それには日本経済の将来的なビジョンを示すことが必要であり、それが欠けていることが、日本株投資へのもう1つの障害となっている。「金融緩和や財政出動で短期間だけ、物価や経済を上げたとしても、それらの政策を毎年続けるわけにはいかない。長期投資家を日本株に振り向かせるには、安定的で持続的な物価上昇、経済成長が必要になる」(国内投信投資顧問)。

    環太平洋経済連携協定(TPP)、法人税引き下げ、戦略特区や規制緩和などの成長戦略、そして社会保障改革──。これらの政策を「骨抜き」にされることなく、決定・実施していくことが重要だ。成果が出るまでには時間がかかるのは仕方ないとしても、将来のビジョンを早めに示すことが、長期投資家を呼び戻す一助になる。

    東証1部銘柄の配当利回りは1.7%程度、益回りは6%強と、10年債で0.6%程度の日本国債と比べ、かなり高い水準にある。株価下落のリスクはあるものの、世界的な低金利で運用先に悩むバイサイドにとって魅力的だ。

    それでも生損保が日本株に慎重なのは、デフレのためだが、インフレが視界に入れば、運用スタンスは大きく変わらざるを得ない。

    実際、インフレを視界に入れた動きも出始めている。損害保険ジャパン・日本興亜損害保険は今年度から、中長期的な成長が見込める分野への投資を開始する方針だ。エネルギーやインフラに数百億円規模を投じ、インフレに対するヘッジを兼ねた新たな収益源を得るという。

    輸入物価などによるコストプッシュ型の色彩が強く、「悪い物価上昇」との指摘もあるが、曲がりなりにもインフレが視界に入れば、国内長期投資家の運用姿勢は変わらざるを得ない。

    「低金利の債券投資が正当化できたのは、デフレのためだ。もしデフレが解消されれば、圧倒的な利回りの株式に一気にバイサイドの資金が流れ込む可能性がある」と三菱UFJ投信・戦略運用部副部長の宮崎高志氏は指摘している。

    (伊賀大記 編集:田巻一彦)

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