July 22, 2013 / 7:23 AM / 6 years ago

コラム:中国で整う「デモの条件」、新興国揺るがす嵐到来か

国際政治学者イアン・ブレマー

7月19日、過去数四半期は経済成長が減速するなど「デモの条件」がそろっている中国にも、ブラジルやトルコなど他の新興国を揺るがす抗議デモの嵐が到来するかもしれない。。写真は中国の国旗。北京で2月撮影(2013年 ロイター/Petar Kujundzic)

新興国では、市民による突然の予期せぬ抗議デモは不可避となりつつあるようだ。ブラジルとトルコでは中間層が政府のやり方に反発してデモが発生し、政権支持率が急激に下がった。エジプトでは、経済情勢が政局と同じぐらい見通しが立たないなか、モルシ大統領の解任によって対立と混乱に拍車がかかった。

新興国を揺るがすこうした抗議デモの次なる発生地は中国と思うかもしれない。新たに生まれた中間層が社会保障の改善や政府の透明性向上を要求しているだけでなく、過去数四半期は経済成長が減速するなど「デモの条件」はそろっているからだ。しかし、息を詰める必要はない。中国は新興国のライバルたちに比べ、少なくとも当面は、こうした問題にはるかに取り組みやすい環境にある。

経済面から見てみよう。これまで長い間、専門家や中国政府当局者らは、中国は国内総生産(GDP)の伸び率が8.0%を下回れば、失業危機の引き金となり、社会不安や政治不安のリスクが高まると考えてきた。ところがだ。中国の楼継偉財政相は先週にワシントンで、同国経済はGDP伸び率が7%や6.5%になったとしても大丈夫だと述べた。

他の多くの新興国と違うのは、中国が経済成長の減速を対応可能な課題と見ている点だ。政府は実際、改革と不均衡是正の目標を達成するには、成長鈍化は必要だと認識している。

とりわけ政府が望んでいるのは、成長減速が産業の再編成を促し、資源消費を抑えることだ。そうなれば、政治的に大きな不安定要因になっている環境悪化にも歯止めがかかるかもしれない。経済成長の減速はまた、都市部住民の不満の種となっている不動産価格の高騰を落ち着かせる効果もあるだろう。中国の新しい指導部は、こうした問題での進展は、成長鈍化による失業率上昇で直面するダウンサイドリスクを補って余りあると確信しているのだろう。

グローバルな視点で言えば、 中国の景気減速は実際には良い兆候だと判断すべき確固たる理由がある。中国政府が経済成長を維持するための反射的な資本投入をしていないという事実は、彼らが緩やかな経済改革を受け入れ始めた証しだ。バブルが弾けるほど膨らむより、小さくなるのを良しとしているのだ。このアプローチは、今年3月に発足した新指導部の特徴と言える。彼らは前政権に比べてリスクを回避しない傾向が強く、中国が将来にわたって向き合わなければならない経済的変化を見据えている。

剛腕で、即断即決型の政治家である習近平氏が国家主席であることが、中国を楽観視する理由の1つだ。彼は前任者たちに比べて自発的でカリスマ性があり、中国のブログコミュニティーでも第一印象としては前向きな評価が与えられている。大胆な性格で共産党内での支持基盤を強化しており、うまくいけば将来のさらなる改革に向けて一段と大きな力を持つだろう。

だからと言って、中国の安定を当然視したり、今後も一切問題ないと考えるべきではもちろんない。短期的には不安定さに直面していないというその事実が、油断をもたらし、必要な改革を遅らせる余地を生むかもしれないからだ。中国が途上国から先進国になるためには、やはり長期的かつ大幅な経済的・政治的転換が必要だ。

過去30年間、中国にとって経済成長は、あたかも木の低い位置にぶら下がっている果実のごとく手にするのが簡単な目標だった。新指導部は今、木の上の部分に手を伸ばそうとしている。しかし、高い枝までには、まだかなり長い道のりがある。

中国にとって別の大きな脅威は、どんな発展途上国も通らなければならない社会の階層化だ。これまでも指摘してきたように、中国の経済成長は新しい中間層を生み出した。彼らの要求は、貧困から抜け出そうとしている農村部の望みとは違う。新指導部の景気減速に対する寛容さは、短期的には、こうした問題の解消に役立つという点でポジティブだ。しかし、いずれ中国政府は、新中間層と農村部という異質な2つの層を調和させなくてはならない。これは、長期的に取り組むべき問題だが、もし手つかずのまま放置されれば、社会不安の可能性は高まる。

新興国で広がる抗議デモが中国にも飛び火するとの主張や、中国の経済成長鈍化がハードランディングの差し迫ったサインだという話は無視していい。中国の短期的な展望は驚くほどに明るい。しかし、その背後にはさらに大きな問題が依然として控えている。習近平政権は、嵐がまだ遠い場所にある間に、立ち込める暗雲を払うことができるだろうか。

(19日 ロイター)

*筆者は国際政治リスク分析を専門とするコンサルティング会社、ユーラシア・グループの社長。スタンフォード大学で博士号(政治学)取得後、フーバー研究所の研究員に最年少で就任。その後、コロンビア大学、東西研究所、ローレンス・リバモア国立研究所などを経て、現在に至る。全米でベストセラーとなった「The End of the Free Market」(邦訳は『自由市場の終焉 国家資本主義とどう闘うか』など著書多数。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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