August 29, 2013 / 7:04 AM / 7 years ago

ブログ:西成から見た「ハルカス」、低所得者の春遠く

長田 善行

写真は2009年8月、大阪の道頓堀を歩く人々(2013年 ロイター/Issei Kato)

大阪・ミナミのさらに南に位置する阿倍野地区。そこに近畿日本鉄道(9041.T)が事業主となる超高層ビル「あべのハルカス」がそびえ立つ。

地上300メートルの高さは、横浜ランドマークタワーを抜き日本一。来年春の本格開業を前に、入居する近鉄百貨店(8242.T)が6月に部分開業した。

ハルカスに先立ち、大阪・キタでは複合商業施設「グランフロント大阪」やエイチ・ツー・オー リテイリング(8242.T)の百貨店「阪急うめだ本店」が相次いでオープン。アベノミクスの心理的な効果か、大阪市内では買い物袋を下げた女性の姿が以前より多くなった印象を受ける。

近畿経済産業局によると、大阪府の6月の大型小売店販売額は前年同月比9.4%増。4カ月連続で前年同月を上回った。ハルカスに入居する近鉄百貨店本店の7月の売上高は、旧店舗の前年同月比で30%増になった。開業効果のほか、宝飾品・時計などの販売も好調だったという。

こうした景気回復への流れは、低所得者層の生活向上につながるものなのだろうか。ハルカスに近いJR天王寺駅から西へ一駅進んだ周辺に、日雇い労働者が集う西成・釜ヶ崎、通称「あいりん地区」がある。アベノミクスと無縁の街ともいえる。

この地で職業紹介事業を手掛ける西成労働福祉センターによると、7月の同地区における求人の数は前年同月に比べほぼ横ばいだった。日本経済に明るい兆しが見えつつあっても、関西では東北の復興関連需要が少ないことなどもあり、同地区の求人自体に大きな変化はないという。

別の福祉団体幹部も「(日雇い労働者向けの)仕事が大きく増えている感覚はない」という。特に東北関連の求人については、以前は電信柱に福島第一原発周辺何キロ以内という表記と携帯電話の番号が書かれた張り紙があったが、今ではほとんどなくなったという。「(斡旋業者は同地区で探さずに)現場で使えそうな人間を囲ったり、電話で直接(求職者に)連絡したりするケースがあるようだ」と同幹部は語る。

一方、高度経済成長期の建築現場を下支えしたあいりん地区では、急激な高齢化という新たな課題を抱えている。肉体的な衰えが顕著となる50代以上の日雇い労働者向けの仕事は限られる。職にあぶれた労働者が福祉マンションに入居し、生活保護の受給を申請する事例が後を絶たないとの声も出ている。

大阪市によると、今年5月時点の生活保護受給者は15万1795人。大阪市民の約18人に1人が受給している計算だ。全国の約59人に1人(4月時点)と比較すると、市の受給率がいかに高い水準にあるかが分かる。不正受給の問題も取りざたされているが、あいりん地区の存在が市の財政を圧迫している事実は否めない。

景気回復の波に乗れないのは日雇い労働者だけではない。

大阪労働局が29日発表した大阪府の7月の有効求人倍率は0.97倍。前月比で9カ月連続の上昇となった。半面、正社員の有効求人倍率は0.59倍。非正規雇用への企業側のニーズが依然根強いことがうかがえる。企業業績が回復基調にあるとはいえ、将来に不安を抱える非正規雇用者の消費マインドが好転することなどあるのだろうか。

「生活保護も年金も(今後)増えるわけがない。消費税上げられたら、食事の回数を減らさなあかん」。あいりん地区の公園内で元日雇い労働者の70代の男性はため息をつく。空には西日に照らされた「あべのハルカス」。その橙色は、関西経済の闘志を示す炎の色のようにも、縮まらない所得格差に向けた怒りの色のようにも見えた。

(大阪 29日 ロイター)

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