September 24, 2013 / 9:16 AM / 6 years ago

コラム:リスクオンの円安再開へ、年末「ドル106円」も視野=亀岡裕次氏

5月22日にバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が量的緩和(QE)縮小開始の可能性に言及して以来、米国金利が上昇し、名実ともに日米の金利差が拡大したが、ドル円は同日に103円台後半でピークアウトした。日米金利差とドル円の連動性が失われた理由は、リスク許容度の動きにある。

米QE縮小観測の台頭が米国金利を上昇させる一方で、景気減速への懸念によるリスクマネーの引き揚げを招き、世界的な株価や商品相場の下落をもたらした。そして、為替市場では高金利通貨の資源・新興国通貨などが売られる一方で、低金利通貨の円が買われた。リスク回避のなかで、ドルは資源・新興国通貨に対しては上昇する一方で、円に対しては下落した。

つまり、日米金利差が拡大しても、リスク回避行動が強まると、ドル円は上昇するどころか下落してしまう。ドル円はクロス円に比べて金利差に連動しやすい通貨ペアではあるものの、そのドル円でさえもリスク許容度が鍵を握るのだ。

<緩やかな金利上昇でリスクオンは保持される>

FRBは9月17―18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で資産買い入れの縮小を見送った。最近の長期金利上昇が経済成長を鈍化させることを懸念し、経済指標の改善を確信できるまでにはもう少し時間が必要と考えたようだ。

事前には国債買い入れを減額するとの市場予想が多かったため、減額見送りを受けて米長期金利は低下し、ドル安・円高に振れた。ただ一方で、金利低下が景気見通しにプラスに働き、株高や商品高などリスクオンに傾き、クロス円は円安に振れた。QE縮小見送りは、米金利低下のドル安に働く一方で、リスクオンの円安に働く。おそらく今後、米金利低下は続かない一方でリスクオンは続き、結局は円安効果がドル安効果を上回ることになるだろう。

FRBが発表した9月時点の経済予測によれば、バーナンキ議長がQE終了の目安とする失業率7%を下回る時期は14年4―6月頃、利上げの目安とする失業率6.5%を下回る時期は15年4―6月頃になるというのが、当局者の中心的な見方のようである。15年末のフェデラル・ファンド(FF)金利ターゲット予想の加重平均値は1.25%と、前回6月時点の1.34%よりも若干低くなったが、利上げ予想が大きく後退したわけではない。14年半ば過ぎにQEを終了させ、その後に経済状況を見極める時間を十分に置き、15年半ばに利上げを開始するとの見方が、FRBでは中心的なようだ。

バーナンキ議長が6月19日のFOMC会見で経済指標が見通しとほぼ一致すれば年内に資産買い入れを縮小させ、14年の年央あたりに終了させると述べた時点で、市場は15年5月頃の0.5%への利上げを予想していた。その後、9月初旬には15年1月頃の利上げを予想するようになったが、再び5月頃の利上げ開始予想に戻った。これは現時点のFRB見通しに近いので、さらなる利上げ期待の後退と金利低下は進みにくいだろう。

また、長期金利が急速に上昇するとFRBがQE縮小を見送るケースを経験したので、経済指標改善を受けて10月FOMCでの緩和縮小期待や将来の利上げ期待が高まっても、9月初旬にかけてのような大幅な金利上昇は起きにくいとみられる。つまり、今後は利上げ期待の高まりによる金利上昇は限定的で、緩やかな金利上昇の下でリスクオンが保持されやすいだろう。リスクオフの解消により、中長期的には日米金利差の拡大傾向に追随するようにドル高・円安が進むと予想される。

<世界的景気回復もドル円の上昇を後押し>

では、リスク許容度を左右する世界景気については、どうみるべきか。米国は株価・住宅価格上昇の資産効果、欧州は信用不安後退の効果から、景気回復が着実に進んでおり、さらには新興国の景気にも改善の兆しが見える。中国では、低迷していた先進国向けの輸出が回復し始めるとともに、景況感が改善に転じた。新興国経済に以前の勢いはないものの、それが世界経済の腰折れを招くような状況にはない。

7月に主要な商品総合指数が底打ちしたのも、世界経済の負の需給ギャップが縮まる方向にあるためだろう。世界のGDPのおよそ6割を占める先進国経済の回復が新興国に波及しながら、世界的に景気回復が明確化していく可能性が高く、リスク許容度を押し上げる要因となるだろう。

したがって、米金利安定化と世界景気回復のいずれもがリスク許容度を押し上げる方向に作用すると予想される。為替市場では、低金利通貨の円が売られ、高金利通貨の資源・新興国通貨が買われやすくなるだろう。すでに9月に入り、リスクオンによるクロス円の上昇(円安)は始まっているが、ドル円も上昇するはずだ。ドルは資源・新興国通貨などに対して下落しても、円に対しては上昇し、13年末に106円程度に達する可能性が高い。

<円高リスクは大きくない>

当面の円高リスクとしては、地政学リスク、消費税引き上げ決定、FRB議長の後任人事などが挙げられるが、いずれも大幅な円高にはつながらないだろう。米国は、対シリア軍事行動への反対世論の多さに鑑み、軍事行動ではなく外交的な解決を目指す姿勢に転じたため、そもそも地政学リスクは低下した。

もし仮に軍事介入があっても円高は大幅なものとはならないだろう。1991年の米国によるイラクへの1カ月余りの攻撃ではドル円が10円程度下落したが、現在のシリアの原油生産量は当時のイラクの10分の1程度にすぎないうえに、今回は短期間で限定的な規模の攻撃とみられるからだ。

日本政府が14年4月からの消費税引き上げ(5%から8%へ)を決定した場合、すでにかなり織り込まれているとはいえ、来年度に景気が減速する可能性から、リスクオフの株安・円高圧力となるだろう。ただし、そうした景気減速を一部相殺するような企業減税策が新たに打ち出されることで、円高は抑えられる可能性が高い。

サマーズ元財務長官が次期FRB議長候補を辞退したことを受け、市場は米金利低下、ドル安に反応した。同氏はQEの有効性を疑問視しているタカ派との見方があったためだ。ただし、もし同氏が議長に指名されたら、金利上昇がドル高に働いても、リスクオフで円高に傾く可能性も十分にあった。イエレンFRB副議長が議長の最有力候補となったことで、現金融政策を踏襲しつつも失業率重視のハト派との見方から、米金利は上昇しにくく、株価は上昇しやすくなるだろう。米金利低下のドル安よりもリスクオンの円安が大きくなる可能性が高く、円高になるリスクは小さいだろう。

*亀岡裕次氏は、大和証券の投資戦略部担当部長・チーフ為替ストラテジスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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