[東京 26日 ロイター] - コンビニエンスストア最大手のセブン―イレブン・ジャパン(東京都千代田区)の強さが際立ってきた。積極的な出店に加え、高付加価値化を追求したプライベートブランド(PB)が伸長しており、他社との差を広げている。ブランド毀損の懸念のない高付加価値PBに賛同するメーカーも多く、次々と繰り出す独自商品の品揃えがさらなる強みとして作用しそうだ。
「13年前に一緒にやりたいと持ち掛けたが、実現しなかった。ようやく、一緒にやることができた」―――。セブン―イレブン ジャパンの鎌田靖常務は感慨深く話す。長くラブコールを送っていたハーゲンダッツ ジャパンが初めて小売り業界との共同開発に踏み切ったのだ。
両社の共同開発商品として10月8日に売り出す「ジャポネ<抹茶アズキ>」は、セブン―イレブンで年間7000万個を売り上げる「高級個食アイス」のなかで、初年度300万個の販売計画を掲げ、カテゴリーNO1を目指す。価格は1個360円と、通常のハーゲンダッツのカップ商品よりも3割程度高めに設定されている。
大ヒット商品となった「金の食パン」は、発売4カ月で1500万食を売り上げた。6枚入りで250円と通常商品の約2倍の価格で、業界の常識を破ったとも言える高価格商品だ。
9月には、業界トップ企業の山崎製パン2212.Tが同価格帯の高級食パン「ユアクイーンゴールド」を発売。PBをNBが追随するという、新たなステージに入ったとも言える出来事だ。早くも10月1日にはリニューアルし、品質の向上を図る。
PBは「安かろう、悪かろう」という時代は過ぎ、今は「品質が良く、差別化された商品」と言う位置付けになっている。セブン―イレブンでは、明治の看板商品であるチョコレートで初のPB「金のチョコレート」、午後の紅茶を持つキリンビバレッジによる「金の紅茶」と、次々に大手メーカーが高価格帯のPBを手掛ける。
ハーゲンダッツ ジャパンの馬瀬紀夫社長も「最高のモノを消費者に届けたいと言う気持ち、方向性は同じ」と話し、販売チャネルとしての店舗数だけではなく、高付加価値化戦略がハーゲンダッツを動かしたようだ。
ある流通大手の幹部は、かつてコンビニを「たばこ屋」と呼んだことがある。コンビニの集客の目玉だったたばこは、喫煙率の低下によって、売上高が縮小傾向にある。鎌田常務は「現在、たばこの売上構成比は25%あるが、数年後もこのままであるはずはない。次のマグネットアイテムが必要になる」とし、セブン―イレブンのほぼ全店に設置が終わった「セブンカフェ」を候補として挙げる。セブンカフェは、缶コーヒーユーザーの男性客から、女性客へとコーヒーユーザーを広げることに成功し、調理パンなどの売上増にも貢献しているという。
「陰で舌打ちしていたメーカーが一斉にすり寄っている」(証券アナリスト)という状況。独自のPBによって、業界ではセブン―イレブンの強さが際立ってきた。
高付加価値PBである「セブンゴールド」については、PBに占める比率を2%から15%に高め、品目数も28品目から300品目に拡大させる方針。
PB「セブンプレミアム」全体では、今年度の計画6500億円は達成可能なほか、16年2月期にはグループ売上高1兆円への拡大を目指す。
8月の既存店売上高は、セブン―イレブンが1.5%増で13カ月連続でプラス。ローソンは1.0%減、ファミリーマートは同1.3%減だった。
(清水 律子 編集;田巻 一彦)
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