October 3, 2013 / 5:08 AM / 6 years ago

コラム:日本にも債務上限や歳出強制削減の条項新設を

田巻 一彦

10月3日、安倍晋三首相が消費税率引き上げを決断し、歳入の増加は図られるものの、膨張する歳出に歯止めをかける点は「野放し」状態になっていると言っていいだろう。写真は2日、都内の株価ボード前を歩く男性を映した車窓の雨粒(2013年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 3日 ロイター] - 安倍晋三首相が来年4月からの消費税率引き上げを1日に決断し、歳入の増加は図られるものの、膨張する歳出に歯止めをかける点は「野放し」状態になっていると言っていいだろう。

このままでは仮に消費税率を10%に引き上げても、債務の累増問題を解決できない危機に直面する。米国のような債務上限の設定や歳出を強制的にカットできる条項を設定すべきだ。私には、米国債のデフォルト回避に向けて議論している米国の方が、無制限の債務膨張を止められない日本よりも、ずっと健全であると映る。

<消費増税分を社会保障に充てるとの理念、急速に後退へ>

8%に消費税を上げることで、2014年度は前年度比8.1兆円の増収が見込まれている。ただ、5兆円規模の経済対策を実行するために、結果的には収支改善は3兆円前後に圧縮される。

15年度に景気刺激策を打たなければ8.1兆円の増収効果がフルに効くので、15年度にプライマリーバランスを10年度比で半減させるという中期財政計画の目標は何とか達成可能と政府サイドはみているのだろう。

ただ、2014年度概算要求をみていると、適切な歳出のコントロールが今の政府にできるのか、極めて疑問が残る展開となっている。要求総額は99兆2500億円と過去最大となり、国債費を除いた政策的経費の要求総額は73兆9707億円で、前年度予算に比べ3兆6000億円超も上回った。

与党の中には、消費増税で歳入が膨らむことを当て込み、14年度の予算編成ではかなりの予算額が獲得できると目論む声が広がっているようだ。増大する社会保障関連費に消費増税部分を充てるという理念が、急速にかき消されつつあるように感じる。

<広がるワニの口、あごが外れる危険性高まる>

歳出総額と一般会計税収の推移をグラフで並べると、歳出のグラフが上向きになり、税収のグラフが下向きになるいわゆる「ワニの口」となっている。

2013年度予算では、歳出総額が92.6兆円であるのに対し、税収は43.1兆円で歳出総額の46.5%にとどまっている。12年度の42.4%から微増したものの、税収が歳出の半分以下にとどまっているという「赤字体質」に変わりない。

足元ではアベノミクス効果で税収が上振れているが、「下あご」が明確に上がって口が閉まるようにするのは、そう簡単ではない。

「下あご」を上げるだけでなく、「上あご」をむやみに上げない努力をしないと、いずれ「あごが外れる」事態に直面する。

政府と地方、社会保障基金の債務を合わせた総残高は、2012年に1132兆円と対国内総生産(GDP)比が237%にのぼっており、13年は245%に上昇すると見込まれている。

歳出総額をこれ以上、膨張させないという強い意思が政府や国民に必要だと考えるが、現実には「政治的に難しい」という暗黙の了解で、赤字の垂れ流しを放置していると言っていいだろう。

<五輪・原発事故対応・社会保障、高まるばかりの歳出増圧力>

政府は明確な方針を示していないが、今後も東京電力(9501.T)福島第1原発の汚染水処理やその先の廃炉、除染などで膨大な国費の投入が予想される。

また、2020年の東京オリンピックの開催に向け、大規模なインフラ整備で巨額の国費投入も避けられないだろう。

一方、高度成長期に構築された現在の年金システムを抜本的に変える動きは遅々として進んでいない。医療費の急速な増大に対する制度的な見直しも、既得権益を守る声に阻まれ、目立った進展がない。

このような歳出膨張の圧力をそのままにし、「上あご」がさらに上方に開いていけば、消費税を10%に引き上げても、あごが外れる方向に進むことは防げないだろう。

<米国で実行された歳出強制削減>

そこで世論の危機意識をバネに、米国のように債務残高にシーリングを設ける債務上限を設定するか、税収の一定割合以内に歳出を強制的に抑制する条項を新設し、有無を言わさずに歳出を削減するシステムを導入するべきだ。

その枠の中で、政府の支出をやり繰りすることを義務付ければ、法律の強制力を利用し、今までできなかった行政の無駄の排除へ切り込むことが可能になる。

多くの日本人は「無理な理想論」と言うだろうが、米国では実際に実行した。2014会計年度において強制歳出削減を発動し、1090億ドルの歳出を削減。2014会計年度の裁量的支出は910億ドル減の9670億ドルとなり、2004年以降で最も低くなった。

<2020年の日本の姿、国民全体で考えるべき>

足元のグローバルマーケットでは、米債務上限の突破危機と米国債のデフォルト・リスクへの警戒感でリスクオフ心理が強まり、東京市場でも株安・円高の圧力を受けている。市場には「債務上限で毎年、大騒ぎするのはいかがなものか。別なシステムに移行してほしい」(大手銀関係者)との声が出ている。

だが、債務の膨張や許容される債務上限について、米国では日本よりも格段に真剣な議論が交わされているのは紛れもない事実だろう。日本は債務の膨張に対する危機感があまりにも希薄だ。

2020年の東京オリンピック開催を歓迎するだけでなく、その時に日本という国がどのような形になっているのか、国民の一人一人が考えるべきだ。

そのためには政治の強いリーダーシップが必要だ。膨張する債務を「コントロールできない国」というレッテルを張られることだけは、どうしても避けなければならない。

●背景となるニュース

・首相が消費増税判断、経済対策で落ち込み回避狙う 賃上げなど課題

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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