October 4, 2013 / 9:07 AM / 6 years ago

コラム:米混乱が招く安倍相場の「逆回転リスク」=佐々木融氏

米国の2014年度予算案をめぐる混乱は結局、会計年度末を越え、今月から政府機関の一部閉鎖が始まった。前回の政府機関閉鎖は1995年末から96年1月にまでさかのぼる必要があり、近年ではあまり例がない。

しかし、77年から96年までの間で見ると、政府機関が閉鎖に追い込まれたことは17回もあった。そのうち9回で閉鎖は3日以内に終了しており、短期間で終わることも多かったが、今回のケースでは前回の26日間を越える閉鎖期間となるリスクも想定しておく必要があるかもしれない。

現在の状況に鑑みると、民主党と共和党の予算案をめぐる確執は、政府債務の上限をめぐる問題にも拡がりを見せ、結局は両問題が一緒に協議されることになりそうだ。大雑把に言えば、予算案の紛糾ポイントは医療保険制度改革(オバマケア)に関する支出を認めるかどうかという点だ。これは政府債務の上限を引き上げるべきか否かという問題にもつながってくる。つまり、政府債務の上限が引き上げられるという結果になるまで、政府機関の一部閉鎖が続く可能性も考えられる。

<10月中は予想以上のドル安・円高に要注意>

ルー米財務長官によれば、これまで行なってきた特別措置もいよいよ限界を迎え、10月17日には米国の債務は法律で定められた上限に届いてしまうとの見通しである。ただ、政府機関が一部閉鎖されたことにより歳出が減っているため、債務が上限に到達してしまう日はもう少し先に伸びるかもしれない。

それでも、11月1日には670億ドルの歳出が予定されているため、遅くともその日には債務は上限に到達することは確実だ。それまでに議会が上限を引き上げられなければ、米国債はデフォルトになってしまう可能性が高まる。

つまり、逆に言えば、今回の混乱が本当の大問題につながり、世界の金融資本市場を混乱に陥れるまでは、まだ1カ月弱の余裕があるとも言える。それまで共和党と民主党の意地の張り合いが続いてしまうリスクも想定しておかなければならない。

このような米国の財政をめぐる混乱はドル安につながる可能性が高い。米国は巨額の経常赤字国であるため、そもそも市場には常に大きなドル売り需要がある。したがって、通常は巨額の投資資金が米国に流入することによってドルは安定するわけだが、今回のような問題が生じると、米国への資本流入が極端に減ることになる。前回、政府債務の上限問題がギリギリまで懸念された11年7月には、上限引き上げ決定(債務上限は8月初に引き上げられた)までの2週間でドルは実効レートベースで2.5%、ドル円は81円台から76円台まで約6%下落した。

また、米政府機関の一時閉鎖は当然、米国の経済成長にとってマイナスとなる。JPモルガンの米国エコノミストは政府機関の閉鎖が1週間続くと、実質国内総生産(GDP)成長率を年率0.12%押し下げると予想している。閉鎖が長引けば長引くほどマイナスインパクトは大きくなり、世界経済にも悪影響を与える。市場のボラティリティ(予想変動率)も上昇する可能性が高く、そうなると世界の投資家は大きなポジションを保有し続けられなくなる。

今、世界の投資家が保有しているポジションで最も大きいのは、恐らくアベノミクスに期待した日本株の買い持ちポジションと、日本の投資家などによる対外投資増加を期待した円の売り持ちポジションだろう。日本が問題の根源ではなくても、世界経済が鈍化し、金融資本市場のボラティリティが上昇してしまえば、世界の投資家はポジションを手仕舞う必要に迫られ、結果的に日本株を売り、円を買い戻さざるを得なくなる。

筆者は米国債がデフォルトに陥る可能性は極めて低いと考えているが、そのギリギリのところまで米国議会における民主党と共和党の対決が続いてしまうリスクは小さくはないと見ている。したがって、それまでの間、つまり10月中はドル円相場が予想以上に大きくドル安・円高方向に振れるリスクを警戒する必要があると考えている。

*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の債券為替調査部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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