October 8, 2013 / 4:06 AM / 6 years ago

アングル:日銀総裁発言が波紋、時間軸強化の思惑浮上

[東京 8日 ロイター] - 黒田東彦・日銀総裁が「異次元緩和」の時間軸強化に向け、事前準備を始めたのではないかとの思惑がBOJウォッチャーの一部で浮上している。

10月8日、黒田東彦・日銀総裁が「異次元緩和」の時間軸強化に向け、事前準備を始めたのではないかとの思惑がBOJウォッチャーの一部で浮上している。4日撮影(2013年 ロイター/Issei Kato)

会見の中で2%の物価目標達成が2年を超えるとも受け取れる表現を使ったほか、需給ギャップがゼロという好景気前の段階での目標達成にも言及。2年よりも長期間での目標達成を意識していると識者に思わせているためだ。市場の一部では、この発言が長期金利の低下を促す要因になるとの声も出ている。

<黒田発言、2年よりも2%達成優先か>

多くの金融関係者に「おやっ」と思わせる発言が最初に飛び出したのは9月20日の都内での講演会だった。

総裁は「安定的に2%の物価上昇率を実現するためには、景気が普通の状態の時に2%になるような経済・物価の関係を作る必要がある」と指摘。景気拡大期に仮に達成しても、その後の景気変動で再び低下しかねないという点を説明した。総裁は「普通の景気、つまり需給ギャップがゼロのとき」にこれを達成すべきとした。

しかし、BOJウォッチャーらが現実的だと想定していたのは「2%程度のプラスの需給ギャップ下での達成」(JPモルガン証券・チーフエコノミスト・菅野雅明氏)だった。

より厳しい条件を持ち出した総裁発言について、BOJウォッチャーのもとには投資家からの問い合わせが相次いだという。

「普通の景気」下での2%達成には、長い時間がかかるとみられている。BOJウォッチャーの間でも「黒田総裁の時間軸政策は、やや強まったという印象」(井上哲也・野村総研・金融ITイノベーション研究部長)との見方が浮上した。

実際、2年という物価目標達成期間について、黒田総裁自身が5日の会見で「もしかすると2年より長いかもしれないし、あるいは2年よりも短いかもしれない」と述べ、2%達成まで長期にわたり異次元緩和を続ける可能性を示した。

BOJウォッチャーの間では、2年という期間よりも2%の達成を優先することが明らかになったと解釈されている。

<総裁は一段の期待インフレ率上昇に自信>

2年・2%の目標をどうやって実現するのか、2年を超えて長期にわたり異次元緩和を継続することが、果たしてどのような結果をもたらすのか、新たな問題点がBOJウォッチャーの中で浮かび上がっている。

黒田総裁は記者会見で「足元で0・5%、1%、1・5%と2%に向けて上昇していく中で、期待も上昇していくと思う」と答え、わずか半年で物価がプラスに転換した現実が人々の期待インフレ率に影響を与えるとみて、実現可能だと主張した。

実際に円安などを通じて物価上昇を実現させることで人々の期待インフレ率を上げ、フィリップス曲線を上方シフトさせることが有効との考えは「物価ゼロの壁を乗り越えれば、(上昇の動きに)弾みがつく」と日銀の事務方でも肯定的に受け止められている。

<民間識者が疑問視する一段の物価上昇>

ただ、市場関係者の中では2%達成が今でも非現実的と見られているだけに、これからの展開は、日銀の想定通りにはいかない可能性が高いとBOJウォッチャーらは見ている。

期待インフレ率が高まっても、需給ギャップゼロの「普通の景気」で2%を達成した例は、過去にほとんどないからだ。景気拡大で需給が引き締まり、08年1─3月期の需給ギャップはプラス1.7%となったが、その前後で最も高かったコアCPIは08年度の1.2%上昇と、2%には届いていない。

しかも「今回の物価上昇の多くの部分は、資源価格上昇や円安によっている。食料品やエネルギー価格の上昇は家計にとってデフレ要因になる」(井上氏)という側面がある。

3%の消費増税が決まり、その分の期待インフレ率の上昇はあっても、一時的だ。それをカバーする賃金上昇が、果たしてどの程度実施され、目立った効果が出て来るのか──。明快にシナリオを提示できるエコノミストは見当たらない。

<国債大量購入の長期化、長期金利上昇の誘因との指摘も>

総裁発言の真意について、SMBC日興證券・シニアマーケットエコノミストの岩下真理氏は「足元の経済・物価見通しが想定通りで、前向きな循環メカニズムがしっかり働いてきているとの認識のもとで、予想物価上昇率を上昇させる強い取り組み姿勢を示している」として、「黒田緩和」のタガを緩めていないことを示していると解釈している。

実際、日銀は公式的には「2年で2%の物価目標の達成」という旗を降ろすというメッセージを一切出していない。

他方、菅野氏は一連の総裁発言について「時間軸政策の強化、つまり緩和政策の長期化を示唆することによる長期金利の低め誘導を企図している」と読み込んでいる。

また、来春の消費増税の落ち込みを緩和させる目的で、追加緩和に動くなら上場投資信託(ETF)購入が中心になると見ている。

総裁の意図が時間軸強化による長期金利の低位安定にあるとしても、毎年70兆円のバランシートの拡大継続によって「長期金利がいずれ上昇に転じるのは不可避」(菅野氏)との声も少なくない。

2年を超えた異次元緩和の継続について、井上氏は「国債購入の量をこれ以上拡大することには、疑問を感じる」と違和感を示している。

時間軸の長期化は、将来の長期金利上昇というリスクを高める副作用も持ち合わせている。

日銀の次の一手が、様々な方面に大きな影響を与えるのは間違いないようだ。

ロイターニュース 中川 泉 編集;田巻 一彦

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