March 29, 2014 / 2:57 AM / 5 years ago

コラム:ロシア孤立化とG7の限界

国際政治学者イアン・ブレマー

3月28日、クリミア編入を強行したロシアに対する制裁は、ロシアの政治的孤立とG7の限界を露呈した。写真はオバマ米大統領(左)とロシアのプーチン大統領。昨年6月に北アイルランドのロックアーンで開催されたG8サミットで撮影(2014年 ロイター/Kevin Lamarque)

[28日 ロイター] - 1週間にわたって欧州各国を歴訪したオバマ米大統領は26日、ロシアによるクリミア編入と、それに対する西側の一致した制裁措置について演説を行った。その中で大統領は「我々は一致してロシアの主要8カ国(G8)参加停止に合意し、ロシアを政治的に孤立させた」と述べた。

クリミア編入を強行したロシアは、その行為に対する制裁として、共有する価値観に基づき行動を共にするG8という組織から、暫定的に追放されたというわけだ。

しかし、ここにひとつ問題がある。そもそもロシアは他の西側諸国と価値観など共有していないし、ロシアを除いたG7は国際社会の利益を代表する団体でもなければ、もうかなり前から国際問題の解決を進める集合体でもないということだ。

そう結論付けるにはいくつかの根拠がある。まず第1に、似た価値観や政治体制を共有する国々にあっても、国益を合致させることは難しい。それはクリミア問題をめぐる西側諸国の対応がバラバラなのを見ても明らかだ。

第2に、この数十年で新興国が台頭してきており、世界のパワーバランスは大きく変化した。その結果、G7に残されたのはパイの小さな部分だけだ。具体的な例を挙げるなら、中国が加盟していない組織など、本当の意味で国際的な団体とは言えない。

国際的な政治協調というのも、往々にして役に立たないものである。国連総会で27日に採決が行われた、クリミアの住民投票を無効とする決議を例にあげよう。100カ国がロシアのクリミア編入を非難するウクライナを支持し、一見すると国際社会が一致してロシアを戒めているように見える。

この決議案に反対したのはロシア自身を含め、わずかに11カ国だった。ロシアのほかには、ロシアがにらみをきかせている隣国(アルメニアとベラルーシ)と、先進国による世界秩序に反発する「ならず者国家」(キューバ、北朝鮮、シリア、ベネズエラなど)だけだ。

しかしこの、珍しく国際社会が一致した結果にも、多くの注釈がつく。まず、中国やブラジル、インドといった有力な新興国を含む58カ国が棄権に回ったほか、採決に参加すらしなかった国々も多かった。またロシアは名指しされておらず、決議に法的拘束力もなければ、何ら具体的な行動を伴うものでもない。すなわち、ロシアが拒否権を行使することができる国連安全保障理事会の決議と異なり、象徴的なものに過ぎない。

実質的な結果を伴うようにするためには、参加者を限定し、利害が一致しなければならない。欧州でさえ、多くの国はロシア制裁に消極的だ。ロシアにおける権益を多く有する国と、そうでない国と、加盟国の間に大きな差があるためだ。例えば、ロシアの銀行に巨額のエクスポージャーがあるキプロスは、ロシアの主要産業に痛みを与えるであろう包括的な制裁措置を許容することができない。また他の欧州諸国に比べてロシアの天然ガスへの依存度が極めて高いギリシャとオーストリアも、制裁には消極的だ。

ロシアのクリミア編入後、米国が相次いで制裁を発表している一方で、欧州が沈黙を保っているのには、こうした事情がある。オバマ政権はロシアの銀行と、プーチン大統領に近い複数の財閥を制裁対象に加えたが、欧州は追随するのを思いとどまった。クレムリンはこうした温度差を認識しており、米国に対して即座に制裁の対抗措置を行ったが、欧州には行わなかった。

G7が追加制裁を示唆する共同声明を出したことは、驚くに値しない。G7はメンバーが限られており、足並みをそろえた政策は十分可能だろう。G7は、真のリーダシップや人権や民主主義、法の支配といった核心的な価値観を示すのに十分なほど志を同じくしたグループである。オバマ大統領も演説の中で、こうした理念が本質的かつ普遍的であることを確認したと述べている。

だが、これらは米国にとっては「普遍的」であっても、中国やロシア、サウジアラビアにとっては違う。これらの国々は西側とは相対する理念を持っており、その点で妥協するということはない。今の世界において、彼らの力は強大であり、西側は自分たちの価値観を認めさせたり、強制的に受け入れさせるのは不可能だ。

このような状況下において、西側が国際的な枠組みの中で自分たちの価値観に固執すれば、ほとんど成果は見られないだろう。あるいは限られた同志たちの間で価値観を固持することはできるだろうが、国際的な影響をもたらすことは難しいだろう。

ただ、それらのどちらかを選ぶなら、後者の方がまだ良いといえる。我々はいかにして利益や理念が一致する国々と連携を築いていくかという点と、世界的規模の衝撃にどのように備えるのかという点で、この教訓から学ばなくてはならない。

かつてG7は、自分たちの枠組みにロシアを入れることに熱心だった。また、国際気候変動会議で温暖化問題の突破口を見出すことや、G20が団結して動くことを期待した。国際的な枠組みを中心に問題を解決する試み(そして失敗)のために生じている深刻な結果は、いまも拡大を続けている。我々は早くこの点を認識し、より参加が制限された協力関係に重点を置けば、もっと効果的な結果をもたらすことができるだろう。

*筆者は国際政治リスク分析を専門とするコンサルティング会社、ユーラシア・グループの社長。スタンフォード大学で博士号(政治学)取得後、フーバー研究所の研究員に最年少で就任。その後、コロンビア大学、東西研究所、ローレンス・リバモア国立研究所などを経て、現在に至る。全米でベストセラーとなった「The End of theFreeMarket」(邦訳は『自由市場の終焉 国家資本主義とどう闘うか』など著書多数。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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