April 2, 2014 / 3:22 AM / 5 years ago

焦点:国内原発の再稼働展望は3分の1以下、17基は困難か

[東京 1日 ロイター] -国内の原発48基中、再稼働が展望できるのは全体の3分の1に届かない14基で、3割強の17基は不確実性を払しょくできず、残り17基は再稼働が困難とみられる──。

4月1日、ロイターが行った電力会社へのアンケートや専門家、市場関係者への取材の結果、国内の原発48基中、再稼働が展望できるのは全体の3分の1に届かない14基とみられることが分かった。写真は静岡県御前崎市にある中部電力の浜岡原発。昨年5月撮影(2014年 ロイター/Toru Hanai)

ロイターが電力会社へのアンケートや専門家、市場関係者への取材で電力会社の厳しい状況が浮き彫りになった。3年前の東日本大震災発生前に比べ、原発は半減するとの予想も聞かれる。

安倍晋三政権は近く、「原発依存度を可能な限り減らす」とするエネルギー基本計画を閣議決定するが、民主党前政権から引き継いだ安全規制の強化により、結果的に稼働できる原発の規模が、東日本大震災の前の水準から大幅に縮小される方向に進む可能性が高い。

再稼働ができない原発は廃炉が不可避となり、電力各社は難しい経営判断を迫られる。原発減少に伴い、どのような代替電源を確保するのかも国家的な課題になりそうだ。

<申請済み・申請時期明示は18基>

東京電力(9501.T)福島第1原発事故の反省を踏まえ、2012年9月に発足した原子力規制委員会(田中俊一委員長)は、地震・津波など自然災害への対策強化や、重大事故対策などを義務づける「新規制基準」を昨年7月に施行。これまでに8電力の10原発17基が、新基準に適合しているかどうかの審査を申請済み。公開での審査会合は100回を超えている。

ロイターが原子力発電事業者10社にアンケートしたところ、申請済みの17基以外で申請時期を明示したのは、中部電力(9502.T)による浜岡3号(沸騰水型=BWR)の「2014年度中」だけ。残る30基について、審査申請の「予定なし」という回答はなかったものの、再稼働が展望できない状況だ。

<川内原発、夏にも再稼働の公算>

規制委は3月中旬、九州電力(9508.T)川内1、2号(加圧水型=PWR)を「優先審査」の対象に選んだ。規制委の田中委員長は、優先対象は審査合格の見通しが立ったものとの見解だ。

安倍政権は、審査に合格した原発は、地元の了解を前提に再稼働させる方針を示している。鹿児島県の伊藤祐一郎知事はじめ立地地域から目立った反対は聞かれず、川内原発が今夏にも再稼働する可能性が浮上している。

川内1、2号が優先対象となったことで、同時期に申請した関西電力(9503.T)高浜3,4号と大飯3,4号、四国電力(9507.T)伊方3号、九州電玄海3、4号、北海道電力(9509.T)泊1─3号の計10基(いずれもPWR)の審査は、足踏み状態となっている。

ただ、優先審査は新規制基準における合格事例という「模範解答」を示すことで、後続の審査をスピードアップさせる狙いもあり、川内1、2号の審査が終了すれば、他の審査が加速する可能性もある。

重大事故対策に絡んで泊1─3号の審査は遅れ気味だが、もともと先行申請した原子炉は、各電力が自信を持つ主力級だ。先行組のPWR12基はどれも地元の強い反対が聞かれず、いずれは再稼働が可能とみられる。

<高経年原発に40歳の壁>

一昨年に改正された原子炉等規制法では、原発の運転期間を原則40年に制限。また、昨年7月施行の「新規制基準」では、原子炉建屋など重要施設の直下に活断層がある場合は、再稼働が認められない。老朽化に加え、地割れにより重大事故につながりかねない活断層の有無が、再稼働ができる原発とそうでないものの選別に大きく影響する。

運転開始から40年を超えた原発は、日本原子力発電の敦賀1号(BWR、44年)、関西電美浜1号(PWR,43年)・2号(同、41年)、中国電力(9504.T)島根1号(BWR、40年)の4基ある。今年11月には高浜1号が40年を迎える。

これらは、直ちに「引退」を迫られるわけではなく、2016年7月までは「現役」扱いとする猶予期間が設けられている。また、規制委の認可を条件に20年間を上限に1回に限り延長することが認められている。

延長を申請する場合、事業者は、原子炉圧力容器の鋼材の超音波点検やコンクリート製構造物のサンプル調査などの「特別点検」の実施を求められ、その内容を原子力規制委・規制庁が審査する。規制委の田中俊一委員長は記者会見で、「40年で(運転延長の基準を)クリアするのは時間とカネがかかる」と指摘している。

<燃えにくいケーブルの壁>

古い原発を新規制基準に適合させることが難しいとみられる要素の1つが、燃えにくいケーブルに対応していないことだ。1980年に旧原子力安全委員会による「火災防護指針」が導入され、ケーブル類には不燃性・難燃性の材料を使用することが義務付けられたが、それ以前に運転開始した原発では、こうしたケーブルが導入されていない。ケーブルの長さは1基あたり1000キロを超えるとされ、入れ替えは困難とみられる。

新基準では、不燃材料や難燃性材料の使用か同等以上の性能を求めつつ、火災対策を旧基準以上に強化していると規制委は説明する。これに対し電力側は、燃えにくいケーブルを設置していない場合、延焼防止剤を塗ることで、基準を満たすことは可能としている。こうした代替策は、新基準での審査が行われていないため、認められるかどうか不明だ。

原発メーカーの米ゼネラル・エレクトリック(GE.N)で長年エンジニアを務めた原子力コンサルタントの佐藤暁氏は、燃えにくさの解釈にとらわれること自体が、問題の矮小化だと指摘する。

「米国では、安全にかかるケーブルが2系統あった場合、分離させる規制になっている。難燃性にしたというのは非常にマイナーなこと。日本側がどれくらい熱心にケーブルの耐火実験をやってきたのか、データもない。古い材料を使った、古いレイアウトの古いプラントは、厳しく評価せざるを得ない」と佐藤氏は強調する。

<電力経営者からも廃炉可能性の言及>

ここにきて、電力業界からも古い原子炉に対する考え方の変化をうかがわせる発言が聞かれるようになった。中国電の苅田知英社長は3月27日の記者会見で、島根1号について「廃炉にするという選択肢もある」と発言。40年を超えて運転する場合には投資が必要となるが、投資回収が可能かどうか課題になるとの認識だ。

島根原発が立地する松江市の松浦正敬市長は「老朽化した原発は廃炉にすべき」と主張。中国電の場合、島根3号(BWR,137.3万キロワット)がほぼ完成済みという事情も、社長発言の背景にありそうだ。

<予想困難な活断層問題>

規制委は日本原電敦賀2号(PWR)の原子炉建屋直下の断層が活断層であると認定。日本原電側は活断層を否定しているが、規制委の判断を覆すのは困難とみられる。

東北電力(9506.T)東通(BWR)、関電美浜、北陸電力(9505.T)志賀(BWR)の各原発でも活断層の有無に関する調査、検討が続いている。

規制委は、志賀原発の敷地内にある断層について、2月に現地調査を行い、3月下旬に初回の評価会合を開催。規制委の島崎邦彦委員長代理は「現状では活断層ではないと判断できない。判断する材料が不足している」と述べている。

原発の敷地内における活断層の有無に関する調査は、専門家の間でも意見が割れることが少なくなく、個別の原子炉の再稼働を予想するうえで、もっとも予想しにくい問題の1つだ。

<東電は原発を動かせるか>

東京電力は、柏崎刈羽6、7号機(BWR)の適合性審査申請で、規制委から6、7号機直下以外の破砕帯(断層)についても、敷地内外の調査・評価に関するデータの提示を求められた。現地での掘削調査などが必要となり、結論に至るまで長期化する可能性もある。

一方、福島第1原発では、2月にタンクから100トンの汚染水漏れが発生し、多核種除去装置(ALPS)の停止、作業員の死亡など足元でもトラブルが多発している。原発事故を抱える東電による再稼働に向けた審査は「他の原子炉と違い、極めて特殊な事情がある」(規制委の田中俊一委員長)とみられており、福島第1の安定化が実現しないと、柏崎刈羽の審査にも影響が出かねない。

仮に規制委が柏崎刈羽6、7号の申請に合格を出しても、東電に対して厳しい姿勢を崩さない新潟県の泉田裕彦知事が再稼働を容認するかどうか予断を許さない。

泉田知事など地元自治体の首長だけでなく、重大事故を起こした東電が原発を再稼働させることの是非をめぐっては、国民レベルでの論争に発展する可能性も否定できない。

東電の数土文夫会長(1日就任)は、3月31日の記者会見で、柏崎刈羽6、7号が再稼働しない場合、年末をめどに電気料金を再値上げするかどうかの見極めを行うとの意向を明らかにしている。

<浜岡原発めぐり住民投票あるか>

大規模地震の想定地域に立地する浜岡原発の再稼働も、予想が難しい。静岡県の川勝平太知事は中部電の安全に対する姿勢を高く評価しながらも、浜岡の再稼働をめぐっては、住民投票の実施が必要との認識を示している。

ロイターが昨年5月、同原発から半径30キロ圏の11市町に再稼働に関するアンケートを実施したところ、反対や否定的な回答が容認的な回答を大きく上回った。首都圏から200キロ圏という距離も、再稼働の是非を問う上で論点になるとの指摘が、地元の保守系県議から聞かれる。

<原発半減時代の到来か>

今回ロイターが「再稼働可能」とした原子炉14基の出力を合計すると1284.5万キロワット。「不確実性あり」とした17基で1745万キロワット。「困難」とした17基で1427万キロワット。東日本大震災前は、福島第1原発(6基が廃炉)を加えた54基で、4896万キロワットが国内原発の総出力だった。

仮に、不確実性ありとした17基の合計出力の半分を、再稼働可能とした14基の総出力を加えると、2156万キロワットとなり、原発は震災前の44%の水準に落ち込む。ただ、不確実とした17基がどの程度再稼働するかの予想は困難だ。

国のエネルギー政策議論に加わった橘川武郎・一橋大学大学院教授は、ロイターの取材で最終的に再稼働する原子炉は25基程度との見通しを示している。橘川教授は「だいたい(審査申請で)手を上げるのが30基くらいで、そのうちいくつかは活断層などで引っ掛かりそうなのもありそうだという、非常に大ざっぱな計算だ」と話している。

国内48基の再稼働可能性に関するロイター調査は以下の通り。

原子炉 出力(万kw) 事業者 運転年数 審査申請・予定 再稼働の可能性

川内1 89 九州 29 優先審査中 可能

川内2 89 九州 28 優先審査中 可能

伊方3 89 四国 19 申請済み 可能

玄海3 118 九州 20 申請済み 可能

玄海4 118 九州 16 申請済み 可能

高浜3 87 関西 29 申請済み 可能

高浜4 87 関西 28 申請済み 可能

大飯3  118 関西 22 申請済み 可能

大飯4 118 関西 21 申請済み 可能

泊1 57.9 北海道 24 申請済み 可能

泊2 57.9 北海道 23 申請済み 可能

泊3 91.2 北海道 4 申請済み 可能

島根2 82 中国 25 申請済み 可能

女川2 82.5 東北 18 申請済み 可能

東通1 110 東北  8 時期未定 不確実性あり

女川1 52.4 東北 29 時期未定 不確実性あり

女川3 82.5 東北 12 時期未定 不確実性あり

柏崎刈羽1 110 東京 28 未定 不確実性あり

柏崎刈羽2 110 東京 23 未定 不確実性あり

柏崎刈羽3 110 東京 20 未定 不確実性あり

柏崎刈羽4 110 東京 19 未定 不確実性あり

柏崎刈羽5 110 東京 24 未定 不確実性あり

柏崎刈羽6 135.6 東京 17 申請済み 不確実性あり

柏崎刈羽7 135.6 東京 16 申請済み 不確実性あり

浜岡3 110 中部 26 2014年度中 不確実性あり

浜岡4 113.7 中部 20 申請済み 不確実性あり

浜岡5 138 中部 9 未定 不確実性あり

志賀1 54 北陸 20 未定 不確実性あり

志賀2 120.6 北陸 8 未定 不確実性あり

伊方2 56.6 四国 32 未定 不確実性あり

玄海2 55.9 九州 33 未定 不確実性あり

福島第二1 110 東京   32 未定 困難

福島第二2 110 東京 30 未定 困難

福島第二3 110 東京 28 未定 困難

福島第二4 110 東京 26 未定 困難

東海第二 110 日本原電 35 時期未定 困難

敦賀1 35.7 日本原電 44 時期未定 困難

敦賀2 116 日本原電 27 時期未定 困難

美浜1 34 関西 43 時期未定 困難

美浜2 50 関西 41 時期未定 困難

美浜3 82.6 関西 37 時期未定 困難

高浜1 82.6 関西 39 時期未定 困難

高浜2 82.6 関西 38 時期未定 困難

大飯1 117.5 関西 35 時期未定 困難

大飯2 117.5 関西 34 時期未定 困難

島根1 46 中国 40 未定 困難

伊方1 56.6 四国 36 時期未定 困難

玄海1 55.9 九州 38 未定 困難

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