April 1, 2014 / 5:37 AM / 4 years ago

消費増税に企業の強い警戒感、自動車・家電需要が最大のリスクに

[東京 1日 ロイター] -8%への消費増税がスタートした1日、政府・日銀を不安にさせるデータが発表された。3月日銀短観の中で示された企業の先行きに対する強い警戒感だ。マーケットの予想を上回る企業の慎重姿勢が継続するようなら、7─9月期からの国内景気回復シナリオに黄信号が点灯する。

この情勢を強く左右するのは自動車や家電などの需要動向だろう。増税後の消費者マインドが果たしてどうなるのか──。当局もかたずをのんで見守っている。

<駆け込みより大きそうな反動減>

「消費増税後の需要大幅鈍化が視野に入った」──。1日朝に発表された日銀短観をみて、多くのエコノミストが企業の慎重姿勢を読み取ったようだ。

6月までの企業の先行きの景況感が大きく悪化、消費の現場に直結している非製造業ではバブル崩壊の1992年2月以来の悪化幅となった。昨年12月以降の駆け込み時期の景況感改善が小幅だった割りには、増税後の谷への警戒感が強くなり、消費増税が企業に与えるインパクトは大きいものがある。

中でも小売業の先行き悪化幅は、過去最大となった。岡田元也・イオン(8267.T)社長は今年3月の会見で「4月からは瞬間的に消費が相当冷えると思う。今われわれの店でもいろいろな買いだめ、買い置きが始まっている。あらゆる業態で2月とは大分様子が違ってきている。4月からは少なくともその分は冷える。それをどのように最小限にするかに取り組んでいる」と身構えていた。

一方で、反動減からの底打ち時期について 3月上旬に実施したロイター企業調査では、7─9月までに売り上げが増加に転じるとの回答が全体の4割を占め、反動減が最も現れる小売業でも、5割以上が7─9月までの回復を見込んでいた。

野中正人・しまむら(8227.T)社長は「消費マインドは非常に強い。駆け込みがある分は反動減はあるが意外に短い。特に衣料品は少なく、限定的だ」と強気の見通しを示している。

早期の需要回復を期待する背景として、「公共事業の増加」(化学)といった政策効果や「改善したボーナス支給で消費が持ち直す」(サービス)といった所得アップへの期待感も、ロイター企業調査からはうかがえる。

<てこ入れ策で売上確保狙う企業>

企業が早期の売上げ回復を見込んでいることは、短観にも表れた。すでに上期の売上計画は全産業で前年比1.1%増と増収だ。

企業が手をこまぬいて反動減をやり過ごそうというのではなく、積極的に販売促進を図ろうとしている姿勢があるためだ。

生活必需品を扱う企業でも対策に余念はない。玉塚元一・ローソン(2651.T)COOも記者会見で「われわれは必需品全般なので大きな反動はない」としながらも、「おそらく4─5月は反動がある。様々な手を打っているが、大きくセールをやったり、プロモーションをするよりは、競争力ある商品を打ち出しながら、増税後の流れを変えていきたい」と意気込む。

消費増税分をカバーするため消費者の低価格品シフトを見込んだ対応も出てきた。総合スーパー(GMS)のイトーヨーカ堂は4月1日から約165店舗で、価格据え置き1797品目、値下げ775品目のセールを実施する。

<自動車と家電、需要減退波及のおそれ>

小売の現場の努力だけでなく、製造業でも、反動減を乗り切る工夫がうかえる。鉱工業生産統計では、3月から4月への予測指数の低下幅はわずか0.6%。前回1997年3月から4月には2.6%程度だったが、今回は生産の振れは小さい。駆け込み需要には在庫取り崩しで対応し、回復を見込んで在庫補充へ生産を続ける態勢だ。

とはいえ、今回の反動減の谷には大きなリスクも潜む。1つは自動車と家電の販売不振が、生産活動全体に影響を及ぼしかねないことだ。

エコカー補助金やエコポイントといったこれまでの種々の政策により、耐久財消費は需要を先食いしてきた。そこへ増税前の駆け込み需要が加わった。

このため、日本電機工業会では14年度の白物家電の生産見通しが前年度比8.7%減少、自動車工業会では14年度生産が15%以上減少するとの見通しを発表している。

    第一生命経済研究所・主席エコノミストの熊野英生氏は、冷蔵庫もエアコンも平均使用年数は10年を超えているとして「将来、家電メーカーが被る需要減退の悪影響は深刻」だとみている。

    経済産業省でも、薄型テレビにおける地上波デジタル移行前の特需が尾を引き、今回の駆け込みではテレビに盛り上がりが欠けているとしている。

    特に裾野の広い自動車は、今回の短観でも6月見通しが38ポイントと過去最大の悪化となり、景況感がマイナス2と悪化超過に転じている。

    「自動車の長い買い控えが発生すれば、鉄鋼・化学・非鉄・金属などの素材業種で生産調整をもたらすことになる。生産調整は、製造業の企業収益を減少させる」(熊野氏)といった悪循環を生みかねない。

    <輸出・公需の下支えは機能するのか>

    反動減が底打ちしても、その後の回復力は鈍いままといった状況も否定できない。ある政策当局者は「消費増税に伴う物価上昇に実質賃金が追いつかないため、14年度のGDPベースでの消費は実質マイナス」とみている。

    それを補うと期待されているのが、輸出の回復と公共工事だ。しかし、短観での今年度輸出売上見通しはわずか1.4%増、円安で11%増となった13年度に比べわずかな伸びにとどまっている。海外製品需給も足元では改善していない。

    公共工事による下支えでは、人手不足に加えて資材不足が工事進ちょくを阻んでいる。生産統計をみると、セメントやコンクリート管、道路用コンクリート、タイルといった資材は生産能力を超えており、足元で在庫水準が著しく低下している。

    4─6月の増税後の景気悪化を緩和するため、政府は5.5兆円の経済対策を打ち、日銀は輸出の回復をシナリオに織り込んでいた。企業は夏のボーナス増加により7─9月期の回復を期待しているが、春の谷が予想以上に深くなればボーナス増加自体も危うくなる。

    JPモルガン証券・チーフエコノミストの菅野雅明氏は「企業が増税後の景気に慎重な見方を示したことが確認できた」と指摘し、今回の短観も踏まえ「従来と同じような景気見通しを示すのかどうか」をポイントに、黒田東彦総裁の記者会見に注目している。

    中川泉 取材協力:清水律子 編集:田巻一彦

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