April 5, 2014 / 12:26 AM / 4 years ago

コラム:EUの未来を救う3つの「悪いニュース」

[2日 ロイター] - By John Lloyd

極右政党の躍進が、欧州議会を震撼させようとしている。フランスでは先週の統一地方選で、厳しい移民政策などを訴えるルペン党首率いる国民戦線が議席を伸ばした。同じような右派政党の伸長は、程度の違いこそあれ、欧州各地で起こりつつある。

5月に実施される欧州議会選挙では、仏国民戦線のほか、オーストリアの自由党、英国独立党、オランダの自由党のほか、フィンランド、ベルギー、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリアの極右・右派政党が100人を超える当選者を出すとみられている。

この半世紀で最も厳しい難局の中、欧州連合(EU)の舵取り役を担うブリュッセルの政治家や役人にとって、こうした極右議員らの選出は新たな「悪いニュース」だと言える。ただ、この悪いニュースは、他の2つの打撃となる問題とともに、実際にはEUを救う可能性もある。

EUの目的について無条件に議論を戦わせることは、眠気を誘う欧州議会を活性化させるだろう。極右政党が主張する反EU的な議題が取り上げられることもあるかもしれない。

こうした議題は長年避けられてきたが、次期選挙では避けて通れない争点となる。EUの擁護・推進を議論の中で熱く訴えることは、欧州の人々がEUの意味を理解し始めることにもなるだろう。

2つ目の悪いニュースは今やなじみの問題だ。低成長やマイナス成長が続くイタリア、スペイン、アイルランド、ポルトガル、ギリシャといったユーロ圏諸国が抱える公的債務の現状は、デフォルト(債務不履行)懸念さえもたらしている。ユーロ圏を構成する17加盟国の債務総額は昨年末時点で8兆8400億ユーロ(約1264兆4800億円)で、ユーロ圏諸国の国内総生産(GDP)の約93%に当たる。これは、ユーロ圏が定めた対GDP比60%という上限をはるかに上回っている。

ただし、これは進歩でもある。債務額は過去数カ月でわずかながら減少しており(1年前に比べて上回っているが)、ユーロ圏諸国は輸出額が輸入額を上回っているため、経常収支は現在黒字化している。これはいいニュースだ。欧州危機が起きた1つの理由は、こうした国々が数年前に蓄積した経常赤字だった。

しかし、経常黒字は同時にぜい弱さの兆候でもある。黒字転換に大きな役割を果たしたのはユーロ圏の内需停滞で、消費者は輸入品の購入を手控えた。こうした国々が消費意欲の改善につながる力強い成長を再び実現できなければ、良好に見える指標もスタグネーション(景気停滞)や新たな危機につながる可能性がある。

では、こうした問題に利点となり得るものはないのか。1つには、ユーロ圏、そしてEUの統合拡大につながるかもしれない。EUの政策執行機関である欧州委員会は、「深遠で純粋な経済・通貨連合」を目指そうとする議論を通じて、災いの中から福を得ようとしている。そして、この考えは「政治連合」と平行して実現されるべきものだ。

危機の裏側には、新たな国の創設という考え方がある。それはEUの創設者らが構想した「ヨーロッパ合衆国」で、ゆっくりとではあるが、やがて現実となるかもしれない。

3つ目の悪いニュースは切迫した悲劇だ。ウクライナの一部でありながら、ロシアに編入されたクリミアの問題。北大西洋条約機構(NATO)は、ロシア軍がウクライナ国境地帯に「非常に大規模な」部隊を集結させていると懸念を示している。ロシアのラブロフ外相は、ウクライナのNATO参加に対する拒否権行使やウクライナの中央集権排除を含む案を推し進めている。これにより、ウクライナ東部もロシアに取り込む狙いだ。

ウクライナのヤヌコビッチ前大統領は、EUとの協定計画を数カ月にわたって検討したが、署名の数週間前になって突然撤回し、ロシアが提唱する関税同盟「ユーラシア連合」加盟に向けて協議を始めた。これを受け、ヤヌコビッチ氏はデモ隊によって大統領の座を追われることになった。

ウクライナへの提案がロシアにどういう意味を持つのか、そしてウクライナがその提案を受け入れた場合、同国が欧州とロシアの間で取っていたバランスも壊れることを、EUが熟慮しなかったことを責めるのは当然だ。

これら3つの大きな問題は、どれも深刻かつ困難だが、反転につながる可能性もある。ただし、それは、将来に戦争を起こさないという、第2次世界大戦後のEU創設の背景にあった情熱や理想が復活したときだけだ。現在の後退は、欧州にその価値やエネルギーを再発見させ、逆境に打ち勝つことでより強い連合が生まれることを理解させることになるかもしれない。

欧州の人々にとって、挑戦は待ったなしと言える。指導者らが課題に立ち向かうことができれば、EUに未来はある。しかし、問題は消えてなくなると期待しながら、内向きになって恐れていては、未来はない。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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