January 2, 2018 / 4:35 AM / a year ago

焦点:中南米で「女性大統領の時代」終焉の意味

[サンチアゴ 19日 ロイター] - チリのバチェレ大統領が3月に任期を満了するのに伴い、中南米における「女性指導者の時代」が終わりを迎える。政治的に右傾化する同地域で、女性の国家元首がいなくなる。

 12月19日、チリのバチェレ大統領が3月に任期を満了するのに伴い、中南米における「女性指導者の時代」が終わりを迎える。写真左からアルゼンチンのフェルナンデス大統領、チリのバチェレ大統領、ブラジルのルセフ大統領。チリのビニャデルマルで2014年3月撮影。肩書きは当時(2018年 ロイター/Eliseo Fernandez)

2010年ごろには、マチズモ(男性優位主義)で知られる中南米地域において、アルゼンチン、ブラジル、コスタリカとチリの各国で女性がトップの座に就いていた。

だが17日に行われたチリ大統領選の決選投票で、保守派のピニェラ前大統領が返り咲き、その時代に終止符を打った。

バチェレ大統領は、コモディティブームに後押しされ南米経済が急成長した時期に、左派傾向の強まりを受けて権力の座についた最初の女性指導者だった。2006─2010年に大統領を務めた同大統領は、2013年に再選された。

バチェレ大統領は、ブラジルのルセフ前大統領やアルゼンチンのフェルナンデス前大統領と共に、まん延していた女性への暴力をやめさせる法律を成立させ、公職に女性枠を設けることで議会での女性議員比率を欧州より高めるなど、地域女性の前進を象徴する存在だった。

だがいまや、女性の権利推進が停滞しないかと危惧されている。

「われわれは、過去15─20年の前進に対して疑問を呈する保守政治へのシフトを目の当たりにしている」。国連開発計画で中南米のジェンダー問題を担当するエウゲニア・ピザロペス氏はそう指摘する。

保守派グループが、地域全体で男女平等主義を標的にしていると、ピザロペス氏は言う。ペルーとコロンビアでは、伝統的な女性の役割から脱皮するよう少女たちを啓発する授業に対して抗議デモが起きたことで、教育担当大臣が辞職に追い込まれた。

チリのピニェラ候補は選挙戦で、出生率低下に対する懸念を訴え、バチェレ政権が緩和した人工妊娠中絶関連法の改正に意欲を見せた。バチェレ氏は厳しい中絶要件を緩和し、レイプや胎児の不育、出産時に妊婦が死亡するリスクがある場合などは、中絶を認めていた。

女性指導者の方が男性よりも女性の健康や権利を前進させるという明確な研究結果はないものの、米オクラホマ州立大で政治科学を研究するファリダ・ジャラルザイ氏は、中南米における調査でそうした傾向がみられたと語る。

「例えばジルマ(ルセフ氏)は、貧困や住宅対策など既存政策を取り上げ、それが女性の問題だということが明確になるように仕立て直した」と、ジャラルザイ氏は言う。

ピザロペス氏は、2007─2015年にアルゼンチン大統領を務めたフェルナンデス氏について、女性を対象とする寛容な社会政策プログラムを通じて、男女間の貧困格差を縮める効果を上げたと話す。

駐チリ欧州連合(EU)代表部のステラ・ゼルウダキ代表は、バチェレ大統領による女性省の創設や、女性が経営する会社に対する交付金プログラム、結婚の平等を推進する政策などを挙げ、「女性が指導者でなければ、これほど強力なものになったと思えない」と語った。

またバチェレ大統領が、EUとの通商協定の改定交渉で、男女の賃金平等や、育児休暇取得の平等、テクノロジーへの女性のアクセス改善などを盛り込んだジェンダーに関する章に力を入れたことを指摘した。

<汚職スキャンダル>

大統領が汚職スキャンダル陥ることの多い地域で、南米の女性指導者は名誉ある例外とはなっていない。

ルセフ氏は2016年、国家予算関連法を操作したと認定されて罷免され、その後収賄で訴追された。

アルゼンチンでは、今は上院議員となり収賄容疑で捜査を受けているフェルナンデス氏が、1994年の爆発事件へのイラン関与を隠ぺいしたとして反逆罪で訴追された。

両名とも容疑を否定している。ルセフ氏は最近、ブエノスアイレスにあるフェルナンデス氏の自宅を訪ねて励まし、自らの罷免手続きにも女性差別の要素があったと発言した。

ブラジルの保守派大統領テメル氏は、ルセフ氏の退陣後、全閣僚に男性を指名。ルセフ氏が罷免された時には、議員が「さよなら、かわいい人」と書かれたプラカードを掲げた。

ピニェラ氏は18日、「女性と男性」で閣僚を組むと表明し、男女バランスのとれた政権作りを示唆した。第1次政権メンバーが男女同数だったバチェレ氏を手本としたのかもしれない。

バチェレ氏自身の支持率は、義理の娘が銀行融資を確保するのに政治的なコネを使った疑いが浮上して以来、低迷していた。

<6つの選挙>

中南米では来年、コスタリカ、パラグアイ、コロンビア、ベネズエラ、メキシコとブラジルの6カ国で選挙が予定されているが、新たに女性大統領が誕生する可能性は低い。

メキシコでは、左派の有力候補と目されるアンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール氏が、ライバルのマルガリータ・サバラ氏のことを繰り返し「フェリペ・カルデロンの妻」と呼び、女性差別だとしてサバラ氏の支持者を怒らせている。カルデロン元大統領の妻サバラ氏の支持率は10%程度となっている。

ブラジルでは、これまで2度大統領選に挑戦したマリナ・シルバ氏が最近出馬を表明したが、多くの世論調査で支持率は3位にとどまっている。

コロンビア大統領選には、複数の女性候補が立候補する見通しだが、有力候補はいない。アルゼンチンでは、ブエノスアイレス州知事のマリア・エウゲニア・ビダル氏が最も人気がある政治家だが、2019年の大統領選への出馬はないとみられている。

チリのバチェレ大統領(左上)、ブラジルのルセフ前大統領(右上)、アルゼンチンのフェルナンデス前大統領(左下)、コスタリカのチンチージャ前大統領。それぞれ2017年1月、2016年8月、2015年4月、2014年5月撮影 (2018年 ロイター/Rodrigo Garrido/Adriano Machado/Sergei Karpukhin/Juan Carlos Ulate)

いまだに政界にはびこる女性差別やセクシャルハラスメントが、トップを目指す女性の妨げになっていると、以前大統領選にも立候補したペルーのメルセデス・アラオス首相は語る。

「私は(セクハラ)被害にあったことがある」。アラオス氏は最近記者団を前にそう語った。「いかにそれが意欲を殺ぐものか、認識することが重要だ」

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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