[東京 20日 ロイター] - 自民党の議員連盟「アベノミクスを成功させる会」(会長:山本幸三氏)は20日、消費税率10%への引き上げについて、予定通り来年4月から実施すべきとの提言をまとめ、安倍晋三首相に提出した。マイナス金利を活用して国債を発行し、2016年度に15━20兆円規模の補正予算を編成。3年間で37兆円規模の財政出動を影響緩和措置として実行するのが望ましいとしている。
<財源にマイナス金利活用で国債発行>
この提言では、1)増税は予定通り実施し、当面10%で打ち止めと宣言、2)16年度補正予算で10兆円の景気対策と5━10兆円の熊本地震対策基金を設立、3)17年度10兆円、18年度7兆円を本予算に計上、消費増税分はすべて還元する形で給付金約4兆円を支給、4)給付金は年金生活者・低所得者・子育て世代中心に所得再分配政策として実施し、住宅・自動車購入者に2%分還付、5)財源はマイナス金利を活用し、原則国債発行━─などの政策メニューを盛り込んでいる。
増税を単純に延期しても、「いずれ増税する」との観測が消費を下押しするため、増税の実施で不透明感を払しょくするとともに「延期と(経済効果が)同等となる財政措置が望ましい」と説明している。
山本氏はマクロ政策の立場に関して安倍首相に近く、同会は2014年に10%への消費増税を延期する提案をとりまとめた経緯がある。今年4月6日の同会の会合で、山本氏は「消費の状況はリーマン・ショック以来の事態」と発言し、増税延期を提言していた。
また、今月18日の会合では「先週末に延期との報道が出た。この会はもういらないのかと思った」とあいさつ。増税延期が持論の浜田宏一内閣官房参与(米イエール大名誉教授)を講師に招いて意見を聞いたばかりで、増税実施の提言は与党関係者の間でも驚きをもって受け止められている。
与党内では、増税延期論と実施論が交錯している。安倍首相周辺の学者や一部の政府関係者の間では、消費の弱さを根拠を増税延期の声が強かったが、一部では「大規模財政出動を伴う増税実施のほうが、格差縮小に資する」との意見も出ていた。
*内容を追加します。
竹本能文 編集:田巻一彦
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」