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コラム

コラム:レバノン爆発事故、途上国共通の惨状浮き彫りに

[ムンバイ/ロンドン 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] - レバノンは危機の上に悲劇が重なった。4日に首都ベイルートの港で起きた大規模爆発事故で周辺は破壊され、爆風が市内全域に吹き荒れた。死者は100人以上、負傷者も4000人に上る。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が生み出した医療体制のひっ迫に、より広い範囲にわたる人道上の危機が追い打ちをかけるだろう。政治が有効に機能しにくいという同国が抱える慢性的な問題により、あらゆる事態はさらに悪化してしまう。

アウン大統領は、肥料や火薬の原料となる2750トンもの硝酸アンモニウムが、適切な安全措置が講じられないまま6年間も倉庫に保管されていたと明らかにした。アウン氏は容認できない状況だと批判したが、特に市街地のすぐ近くでこんなことがあったとは、まさに衝撃を受けるほどのずさんな管理態勢だと言える。

硝酸アンモニウムの危険性は良く知られており、2015年には中国・天津市の港湾倉庫で爆発事故が発生し、犠牲者が多数に上った。

中国と違ってレバノンは、受けた痛手を独力で乗り切れるほど財政資金に余裕はない。ただでさえ苦しんでいた政治と銀行、財政の複合的な危機は、新型コロナ対策として実施したロックダウン(都市封鎖)で一段と強まった。政府はデフォルト(債務不履行)を引き起こし、国際通貨基金(IMF)からの支援を受けるために必要な改革案を、まだまとめられないでいる。

爆発事故の前ですら、IMFはレバノンの今年の国内総生産(GDP)成長率がマイナス12%に沈むと見込んでいた。レバノンポンドの非公式レートは、3月初めの1ドル=2600ポンド前後から、最近では7900ポンド前後に急落した。だからハイパーインフレが現実的なリスクだったが、今は輸入に頼る食料が手に入らず、国内に飢餓が広がるというより切実な問題が大いに懸念されている。貯蔵庫にある小麦は利用できなくなったし、爆発事故で同国最大の港が壊滅したからだ。

とりあえず人道上の危機は最も簡単に対処できるだろう。レバノンの対立する各政治派閥の後ろ盾となっている外国勢力は、互いに競うように寛大な姿勢を示す公算が大きく、国内でも悲劇を分かち合うことで政治的休戦につながるかもしれない。だが国家としての信頼を回復する道のりはずっと険しくなる。

8月5日、レバノンは危機の上に悲劇が重なった。写真は爆発で建物や車が損壊したベイルートの市街地(2020年 ロイター/Carmen Yahchouchi)

ある面でレバノンの問題は特殊だ。

それでも多くの途上国政府は、基本的な安全を確保する規制を導入するにはあまりにも足場が脆弱で、それが自然災害でも人間が起こした災難でも、適切に対応するのに苦労している。新型コロナに起因する経済的打撃のために、多くの途上国は資金が底を突き、財政が不安定化した国が次々に出てきている。

貧しい国を惨事が襲った場合、通常は豊かな国が対応に動く。こうした豊かな国の資金や寛大さを求める動きが今後強まっていくのは、火を見るより明らかだ。

●背景となるニュース

*レバノン首都ベイルートで4日、港の倉庫で大規模な爆発事故が起こり、100人以上が死亡、4000人以上が負傷した。ベイルート市内の広範囲で爆風が窓ガラスや石造りの建物を破壊し、地面を揺るがせた。

*レバノンは既に経済危機と新型コロナウイルスの感染者急増で苦境に見舞われていた。

*レバノンのアウン大統領は、現場の倉庫には安全な措置が講じられないまま、火薬や肥料の原料として使われる硝酸アンモニウム2750トンが6年間保管されていたと明らかにした。

*これまでに幾つかの映像で、港が破壊され、関連施設ががれき化した様子が伝えられている。食料を海外に依存するレバノンは、ベイルート港が主な輸入の窓口になっている。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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