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コラム:ベビーブーマー世代の怠慢がもたらす「負の遺産」
2017年10月22日 / 01:15 / 1ヶ月後

コラム:ベビーブーマー世代の怠慢がもたらす「負の遺産」

[13日 ロイター] - 第2次世界大戦後の時代に成功を収めてきた筆者ら世代の多くは、いま、後ろめたさを感じている。それも当然だ。罪悪感を感じるべき理由は、次の世代に伝えようとしている負の遺産が、われわれ自身の怠慢によるものだからだ。

 10月13日、戦後世代、特にわれわれ「ベビーブーマー世代」は、あまりにも長い間、お楽しみの時間を続けすぎた。後ろめたさを感じるのも当然だ。次の世代に伝えようとしている負の遺産は、われわれ自身の怠慢によるものだからだ。写真は2009年、グアテマラで撮影(2017年 ロイター/Juan Carlos Ulate)

物事がうまく行かなくなると、通常やり玉に挙げられるのは政治家たちであり、彼らのせいにすることはできる。全員ではなくとも、政治家の一部は何らかの責任を問われるべきだろう。

だが、怠慢の罪を政治家だけに負わせるわけにはいかない。豊かな民主主義国において戦後の数世代が比較的安楽な暮らしを楽しめたのは、生活水準が向上し、選択肢が広がり、社会がより寛容になり、米国の覇権のもとで安全が保証され、国家からの給付がたいていはさらに充実していく、といった諸条件を乱すまいという、暗黙の、集団的な合意がもたらした結果だったのである。

私たちが残す負の遺産は、憂鬱で恐ろしい代物であり、通常は、ため息と一時的な恐怖の身震いとともに無視されてしまう。だが最近はその身震いがなかなか収まらない。というのも、負の遺産の1要素である核兵器によって保障されていた安全が、これまでより確かではないように感じられるからだ。報道によれば、北朝鮮は米国と欧州の大半、そしてもちろん、米国の同盟国である韓国と日本を攻撃可能な核ミサイル開発を進めていると言われている。

ここで諸悪の根源とされているのは北朝鮮の指導者である金正恩氏だが、「北朝鮮を地図上から抹消する」というトランプ大統領の脅迫にしても、どうやら脅威をさらに高めようとする金正恩氏の決意を強めるだけに終わりそうである。

抑止力は働いておらず、有効な選択肢は限られているように思われる。

国家安全保障会議(NSC)でかつて戦略担当ディレクターを務めていた法学者フィリップ・ボビット氏が推奨するプランは、北朝鮮に「核による保障」を提供するよう中国を説得することだ。

これは実質的に、北朝鮮が独自の核開発プログラムを棚上げすることを条件に、中国による「核の傘」を北朝鮮にまで拡げるという意味だ。仮想敵国に対して核戦力の拡大を推奨するというのは破れかぶれの手段だが、それに代わる選択肢があまりに不毛で恐ろしいため、一考の余地が出てきてしまった。

核兵器の恐怖をもたらすのは北朝鮮だけではない。ペリー元米国防長官は、ある解説記事のなかで、ロシアは核戦力再編プログラムを「かなり進めている」と述べ、全面核戦争の脅威は冷戦期よりも高まっていると書いている。「米国民は、新たな核の危険に直面しているのに、知らぬが仏の状態だ」

核による絶滅は、私たちの世代が対処できなかった悪質な可能性のうち最大のものだ。

政府債務はそこまで派手ではないが、将来とりうる経済的な選択肢の幅を着実に狭めてしまっている。福祉国家による庇護の対象となる国民に、生活必需品と併せて、自動車の購入や旅行やその他の娯楽を享受する能力を与えるために、西側諸国は膨大な債務を積み上げてきた。

米国の場合、政府債務残高は今年前半に史上初の20兆ドル(約2243兆円)に達し、これは納税者1人当たり約17万ドルに相当する。これまでのところ、米国にはそれだけの借金を抱える余裕がある。だが、対国内総生産(GDP)比で見た債務がもっと大きい一部の国々では、そうはいかない。財政破たんに陥ったギリシャに次いで、欧州で最も債務水準の高い国はイタリアである。

退任するドイツのジョイブレ財務相はもっぱら欧州連合(EU)における財政緊縮派の元締めと見なされており、その評価が分かれているが、これまで「官民双方における債務増大」が非常に大きなリスクになっていると警告してきた。国際通貨基金のラガルド専務理事もこれに賛同している。

グローバル経済はこのところ成長を見せているが、債務蓄積による崩壊が、新たなリセッションを引き起こす可能性があり、その影響で、今回はさらに深刻な社会的・政治的混乱が生じる可能性がある。

 10月13日、戦後世代、特にわれわれ「ベビーブーマー世代」は、あまりにも長い間、お楽しみの時間を続けすぎた。後ろめたさを感じるのも当然だ。次の世代に伝えようとしている負の遺産は、われわれ自身の怠慢によるものだからだ。写真はパリで2009年撮影(2017年 ロイター/Benoit Tessier)

生態系という点でも世界は少しも改善されておらず、トランプ大統領が6月、気候変動に関するパリ協定からの脱退を発表しただけに、むしろ悪化している可能性もある。

この動きは共和党支持者を含めた大半の米国民には評判が悪いようだが、それによって生態系にさらなるダメージが生じるという以上に、他国から見れば、環境配慮について模倣すべき手本を示していた国から今やまったく正反対のメッセージが送られている兆候を示しているだけに深刻である。

8月にマサチューセッツ工科大が発表した研究は、二酸化炭素排出量が削減されなければ、インド、パキスタン、バングラデシュを「致命的な熱波」が襲い、「荒廃」をもたらすと警告する。そうなれば、現在とは比べものにならないほど大量の難民が流出することになる。

私たちはこれまで、疾病や慢性症状の治療における飛躍的な進歩や、ポリオなど恐怖の的だった疾病の根絶(あるいは大幅な減少)についてよく学んできた。

だが新たな伝染病はかつてよりも頻繁に発生し、迅速に拡大し、より巧みに治療をかいくぐるようになっている。

開発途上国の無秩序に広がる人口過密の都市を発端とした、感染症のグローバルな流行が、飛行機で世界中に広がっていくのではないかとの恐れが生じている。

また、もう1つの「流行病」である肥満も急速に増加している。医学専門誌「ランセット」に発表された研究によれば、世界中の子どもたちの肥満は過去40年間で10倍に増加したという。子どもや成人の肥満は心臓疾患、糖尿病や骨・関節系の症状を引き起こし、今や富裕国・貧困国の別を問わず、医療システムに対する大きな負担となっている。

こうした脅威は政府による強力な対応を必要としているが、特に民主主義諸国を中心に、各国政府の力は低下している。

グローバル・エコノミック・フォーラムは、「政治機関・プロセスに対する信頼の低下が生じている。世界各国の市民と、彼らを代表するはずの選挙により選ばれた公務員との根本的なかい離が見られる」と報告している。言い換えれば、政府の有効性が縮小するなかで危機が拡大していることになる。

戦後世代、特にわれわれ「ベビーブーマー世代」は、あまりにも長い間、お楽しみの時間を続けすぎた。こうした言い方は、過度に悲観的であり、多くの分野で進歩は見られるし、悪いことは常に起きているが世界は続いているという事実を無視している、と思われるだろうか。

それならば、破局をもたらすさまざまな要因について考えていただきたい(そのリストはさらに長くなるかもしれない)。

こうした懸念は、もはや学術的な議論や、世界銀行や国連が発表する論文の対象ではない。リアルで、現在進行形で、そして何より、われわれ自身がよく知っていることだ。われわれが真剣に取り組まなかったら、若者たちがわれわれを許してくれるはずがあるだろうか。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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