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コラム:真実を追求するジャーナリズム、ハゲタカ化拒否を
2017年7月3日 / 06:52 / 5ヶ月前

コラム:真実を追求するジャーナリズム、ハゲタカ化拒否を

John Lloyd

 6月30日、英ロンドンの高層住宅「グレンフェル・タワー」(写真)で14日に発生し、79人が死亡した大規模火災の被害者たちの怒りは、火災前に出ていた安全面の懸念を無視した地区行政当局だけに向けられたのではなかった。彼らは、ジャーナリストたちに対しても怒っていた。6月29日撮影(2017年 ロイター/Hannah McKay)

[30日 ロイター] - 英ロンドンの高層住宅「グレンフェル・タワー」で6月14日に発生し、79人が死亡した大規模火災の被害者たちの怒りは、火災前に出ていた安全面の懸念を無視した地区行政当局だけに向けられたのではなかった。彼らは、ジャーナリストたちに対しても怒っていた。

先月の火災後、多くの記者が現場の高層住宅周辺で取材にあたったが、住民の中には、英テレビ局「チャンネル4」のベテランニュース番組司会者ジョン・スノー氏に詰め寄り、メディアは死と悲劇に集まるハゲタカだと非難した人たちもいた。

「住民たちが、この建物は安全ではないと訴えていた時に、あなたたちは来てくれなかった。ニュースにならない、というわけだ。でも人が死ねばやってくる。なぜだ」と、ある男性はスノー氏を問い詰めた。

メディアがニーズを満たしていないと非難しているのは、グレンフェル・タワーの住人だけではない。メディアへの信頼が低下しているのは、周知の事実だ。だが、最近発表されたロイター・インスティテュート・デジタル・ニュース・リポートは、デジタル革命が、世界や地域における自分の立ち位置を確認するのに必要な情報収集の方法をいかに混乱させているかについて、目の覚めるような結果を示している。

それによると、メディアへの信頼は国によってばらつきがあり、スカンジナビア諸国では60%を超えている一方で、ギリシャや韓国では20%台前半と低迷している。

米国では、メディアへの信頼は、昨年の大統領選期間中の33%から、今年は38%に上昇した。

リポートによると、これは、「誤ったニュースのオンライン拡散に対する懸念」から、プロのジャーナリズムの価値についての認識が上昇したためと思われる。

リポート中で最も反省を促されたのは、「多くのメディア企業の業績見通しは、依然として極めて厳しい」との指摘だ。この指摘には、ツイッターやフェイスブック、グーグルのようなコミュニケーション大手は含まれていない。フェイスブックとグーグルは、かつて伝統的なメディアに流れていた広告費用の80%以上を2社だけで稼いでいる。

だが、より大きいのは2つの問題だろう。1つは、ニュースサイト、バズフィード英国版のジャニーン・ギブソン編集長が言うところの「判断力なき表現」だ。

最近ロンドンで開かれたセミナーで、ギブソン氏は、デジタルメディアやソーシャルメディアの世界では、報道機関が時間と資金を使って事実確認を行ったものと、「屋根裏の人」が、判断力を使って真実性を検証することなくニュースの体裁を装って発信する個人的な意見とを、それとなく同列に置いている、と指摘した。

ギブソン氏は、後者について、「もちろん、ニュースよりもずっと早い。事実確認には時間がかかるからだ」と指摘した。結果も同様に、より退屈となり得る。記者が慎重であればあるほど、記事はより複雑になる。屋根裏の人であれば、単純でドラマチックな耳目を引く内容にできる。

極端な場合、この屋根裏の人は、「フェイクニュース」を発信していることにる。フェイクニュースは、自分を称賛しないニュースはすべて「フェイク(偽)」とみなしていると思われるトランプ米大統領によって、広く知られるようになった。フェイクニュースによって、トランプ氏は大統領選に当選したかもしれない。そうでなかったとしても、気に入らないニュースを信頼しない傾向に、信ぴょう性を与えてしまった。

もう1つ明らかになりつつあるのは、ニュースメディアの「信頼」の尺度は、本当に信頼を測るものではない、ということだ。信頼ではなく、メディアから得られる愉快度を測るものになっている。

デジタル・ニュース・リポートは、「メディアへの信頼と、政治的なバイアスの間には、強い関連がある」と指摘した。これは、人々が自分の政治的意見に沿い、さらにそれを加速させるような報道を信頼することを意味する。

これは、新しい現象ではない。ニュースの歴史を通じて、人々は、自分の政治選択に沿った出版物を選んできた。だがその歴史の大半で、情報収集にメディアを利用する人々は受け身だった。不満を表明する方法は、編集部宛てに(恐らく出版されることはない)手紙を書くか、定期購読をやめるしかなかった。

今の読者は、テクノロジーの助けを得て、時に不信感と反感から攻撃的に記事に介入することができる。英国放送協会(BBC)のニュースディレクター、ジェームズ・ハーディング氏は、ギブソン氏と同じフォーラムで発言し、こう指摘した。

「BBCでは、知っている事と同様に知らない事についても明確になるようとても留意している。だが今、人々は『知らない事』の領域を自分たちで埋めてしまうことができる」

われわれが生きているのは、まだ革命の第1段階だ。その革命とは、ジャーナリズムだけでなく、われわれが情報を探して利用する方法や、何を信頼するかにおいてである。印刷技術の登場が中世後期を揺るがしたように、デジタルが印刷に置き換わったことで、21世紀が混乱している。今こそ現在進行形で、真実や、われわれがそこに置く信頼の性質が問われている。

真実を、特にグレンフェル・タワーのような悲劇に際して、明らかにするのは難しい。それを探し当て、公表することで、記者が怒りに直面することもある。だがジャーナリストは、悲劇に群がるハゲタカではなく、真実の探求者であることを示す必要がある。

それにより、ジャーナリズムに必要とされる民主的役割に、実質的な内容が伴うようになる。ジョン・スノー氏に投げかけられた「なぜ」の問いにも、答えが示されるかもしれない。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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