Reuters logo
コラム:リベラルは今こそ反撃を 
2017年8月1日 / 23:00 / 4ヶ月前

コラム:リベラルは今こそ反撃を 

John Lloyd

 7月28日、ポーランドが揺れている。与党「法と正義」による、司法を政府の統制下に置こうとする決定は、大半の主要都市における大規模な抗議デモの発生に続き、アンジェイ・ドゥダ大統領が拒否権を行使したことで、部分的には頓挫した。写真はワルシャワの最高裁前で7月22日に行われた抗議デモ(2017年 ロイター/Kacper Pempel)

[28日 ロイター] - ポーランドが揺れている。与党「法と正義」による、司法を政府の統制下に置こうとする決定は、大半の主要都市における大規模な抗議デモの発生に続き、アンジェイ・ドゥダ大統領が拒否権を行使したことで、部分的には頓挫した。

だが、拒絶されて引き下がるような政権ではない。この法案に対して欧州連合が送付した勧告に対し、ポーランドのズビグニエフ・ジオブロ司法相は、政府は「脅迫、威嚇には屈しない」と述べた。「どのような脅しも我々を阻むことはない。外部の者が我が国に干渉することは認めない」と同氏は記者団に語った。

ここで「外部」と呼ばれてしまったEUだが、2004年に他の9ヶ国とともに加盟したポーランド(この10ヶ国のうちうち8ヶ国は旧共産圏だった)は、EUの民主的・市民的な規範を熱心に支持していた。その「部外者」は2015年、ポーランド経済に134億ユーロ(142億ドル)を注入してくれた。ある面では、EU加盟国に対する最大規模の補助金である。

EUに加盟して以来13年、ポーランドはEUから約1500億ユーロの支援を受けている。ポーランド系ナイジェリア人の批評家レミ・アデコヤ氏は、「いま我々が目にしているのは、明らかに、国家間の富の移転としては現代史における最大規模のものの1つだ」と書いている。

この「外部」とは、指導者による支配よりも法の支配を優先しなければならない西側世界である。もはや、民族の違いが差別や偏見に結びついてはならない世界だ。

またこの「外部」はグローバリゼーション、つまり、貿易協定や、国家の枠を超えた企業生産、そして包括的な金融、政治、司法機構が織りなす複雑なネットワークである。そしてこの「外部」では、1991年のソビエト共産主義の崩壊以来、開放性と多文化主義、変化を厭わない意志を重視する、概ねリベラルなイデオロギーが主流となってきた。

現在のポーランド政府は、こうしたもののほとんどに反している。しかし、そうならないはずがあるだろうか。西側世界の指導者も似たようなものではないか。

ドナルド・トランプ大統領は7月初めにワルシャワで行った演説のなかで、問題となっている司法制度改革法案に触れることを避け、代わりに、ドゥダ大統領とともに報道メディアへの嫌悪を語り合い、欧州の衰退を嘆いたが、暗黙のうちに、その衰退からポーランドは除外されていた。自国に戻ったトランプ氏は、米軍からトランスジェンダーの人々を排除することで、あいかわらず反動的な態度を示した。ジェフ・セッションズ米司法長官は、法の定めに従い、2016年の米大統領選におけるロシア介入疑惑に関する捜査から離脱したが、トランプ大統領はこの決定が自分にとって「不公正である」として非難し、「政府」と「自分」を同一視する考えを示している。

世界中の政治・社会に変化が起きつつある。その変化がどこまで及ぶかは誰にも分からない。1990年代初頭に共産主義から解放されたことによって、当のロシアも含め、旧共産圏の国々がリベラルで民主的な規範をしっかりと支持するものと(当時東欧駐在の特派員だった筆者自身も含め)多くの人が期待した。

だが、それはリベラル派の幻想だった。今やその誤りは明らかになりつつある。最も顕著なのはロシアだが、ハンガリー、ポーランド、スロバキアも同様であるし、そして恐らく今年10月の選挙を経て、チェコでも同じ状況になるだろう。これらの諸国では、共産主義の対極は今やリベラルな民主主義ではなく、準独裁的なナショナリズムなのである。共産主義の時代には、それは秘められた要素だったのに、共産主義の崩壊以降、以前よりもはるかに露骨に表舞台に登場したのである。欧州理事会のドナルド・トゥスク大統領(元ポーランド首相)が言うように、「ポーランドは、時間的にも空間的にも、我々を『東』へと押し戻している」のである。

だが、それは東欧に限った話ではない。戦後の西側社会において、程度の差こそあれリベラル、保守、社会民主主義のいずれにも支持されてきた民主国家としての理念・慣例に、トランプ氏は公然と戦いを挑んでいる。トランプ氏の巨大な影のもとで、極左・極右双方の勢力は、彼らから見れば寿命の尽きかけている、あるいはそもそも正統性すら欠いている政界主流派に対する嫌悪感を、これまでよりはるかに遠慮なく表現するようになっている。

7月初めにハンブルクで開催されたG20(20カ国・地域首脳会議)において、左派勢力がその一例を示している。ドイツのアンゲラ・メルケル首相が開催地としてハンブルクを選んだのは、この街の急進的でオープンな文化ゆえだったが、それが仇となり、若者を中心とした覆面姿も多く見られる抗議参加者によって、市街の一部が破壊・放火の憂き目に遭った。18ヶ月前にこの地にたどり着いたシリア出身の難民は、この様子を目撃して、「目を疑った。こんな美しい国を破壊しようとしているなんて」と記者に語った。

抗議参加者たちが破壊したのはハンブルクの店舗には留まらなかった(配備された2万人の警察官のうち200人以上が病院に搬送された)。ドイツのベテランジャーナリスト、ヨセフ・ヨッフ氏は次のように語る。「反資本主義」を掲げる抗議参加者は、「古代ローマで『パンとサーカス』を求めた群衆のポストモダン版だ。ほとんどリスク無しに楽しみ、セルフィー(自撮り)ばかり撮っている」

右派の側では、トランプ大統領の上級顧問を務めるスティーブ・バノン氏のようなイデオローグが、大衆ジャーナリズム的な毒の強いテーマややり方を支持している。特に、右派の政治プログラムを支持する世論を築くことを目的とした、「移民は犯罪的で怠惰」「国家は抑圧的」「主流政治家は腐敗している」といった表現が顕著である。ジャーナリストのイアン・バイレル氏によれば、トランプ氏は今や、リベリアやルワンダ、カンボジアといった国々の独裁的な指導者にとって格好の手本になっているという。リベリアのサーリーフ大統領はあるインタビューで、自分の息子を政権内に登用したことは縁故主義ではないかとの質問を受け、「私の息子など問題ではない。トランプ氏の例を見なさい」と反論した。

自由主義的なグローバリゼーションの影響とされるものについて、西側諸国の人々の多くが幻滅し、懸念を抱くのは無理もない話だ。賃金は伸び悩み、急速な変化はエリート層や富裕層にとって有利に働き、生活とコミュニティを形作ってきた熟練技術はますます知的になっていく機械に奪われようとしている。だが、米国民・ポーランド国民が共に理解しつつあるように、右派がもたらす「解決策」は、むしろより悪質である。

左右の過激な勢力は、中道派が存続しないことを願っている。フランスとオランダにおける右派の敗北の後でさえ、ナショナリストとグローバリストのビジョンは激しく対立したままだ。穏健なリベラリズムは、これまで長年にわたり自分たちが堅固な基盤に支えられていると思い込んできたが、今こそ、精神と精神の戦いにおいても力があることを実証しなければならない。

(翻訳:エァクレーレン)

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」
0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below