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焦点:中国の夢破れた韓国ロッテ、割高な事業立て直しに直面
2017年10月25日 / 07:24 / 24日前

焦点:中国の夢破れた韓国ロッテ、割高な事業立て直しに直面

[ソウル 25日 ロイター] - 今年2月、韓国政府の要請で米軍の新型迎撃ミサイルTHAAD(サード)の配備に必要な土地提供を余儀なくされたロッテグループには、懐疑的になるべき十分な理由があった。

 10月25日、小売から化学製品まで幅広いビジネスを手掛けるこの韓国ロッテ・グループは、THAAD配備を巡る中韓両国の外交対立によって、最も甚大な被害を被った企業となった。写真は建設工事が中断された中国瀋陽のロッテ・グループのショッピング施設。3月撮影(2017年 ロイター)

南部星州郡に所有していたゴルフ場を提供し、代わりにソウル近郊の土地を受け取る取引に渋々同意してからわずか8カ月で、同社が10年かけて取り組んできた中国進出戦略はガタガタになり、今後の事業成長見通しにも疑問符が投げかけられている。

小売から化学製品まで幅広いビジネスを手掛けるこの巨大複合企業は、THAAD配備を巡る中韓両国の外交対立によって、最も甚大な被害を被った企業となった。

ゴルフ場提供を受けて中国では商品ボイコットが発生し、ロッテは同国に築いたスーパーマーケット事業を、投資額の何分の1となる金額で売却する羽目に陥ると見られている。

中国での巨大ショッピングセンター建設計画も延期となった。その一方で、アイスクリームから観光まで、気前のいい中国人観光客への依存を高めていた韓国国内におけるビジネスも苦戦を強いられている、と政府関係者や投資家は指摘する。

韓国第5位の大複合企業体であるロッテは現在、インドやミャンマーを含めた新興市場で、食品企業などの新たな買収先を探している、と同社幹部は語った。

とはいえ、投資家や企業専門家は、中国やかつて中国市場に抱いた将来性を、他の市場で穴埋めすることは至難の業だと述べる。

「ロッテには痛い一撃だ」。ソウルを拠点とする企業調査会社CEOスコアのPark Ju-gun氏はそう語る。「ロッテグループは、戦略を練り直す必要がある。東南アジア向けの積極投資でやり過ごせる部分もあるだろうが、小売り企業にとって、中国は他の市場をもって代えがたい存在だ」

<「ノー」と言えない>

別のロッテ幹部は、グループ売上の4分の1を占める化学製品部門を強化する方針だと言う。

しかし、世界的に商品価格のボラティリティが高まるなか、化学部門への重点投資は同社の収益予測をより困難にする、と約9・4兆ウォン(約9500億円)の資産を運用するマイダス・インターナショナル・アセット・マネジメントのホ・ピルソク最高経営責任者(CEO)は語る。

創業一族による後継者争いや汚職捜査で混乱していたロッテは2月、THAAD配備向けの土地提供を求める政府の要請に同意した。

「政府の提案を受け入れるかどうか苦悩した」と、別のロッテ幹部はロイターに明かす。「だが、国の防衛にかかわる問題であり、ノーとは言えなかった。政府要請を断れば、国内でビジネスができなくなる」

韓国国防省の報道官は、土地提供は、法律の範囲内でロッテと相談して実施されたと説明する。

<拡大する損失>

米軍のTHAADは、ミサイルの発射実験を繰り返す北朝鮮の脅威に対抗するため韓国に配備されたが、中国政府はこれを地域の安全保障バランスを乱すものだとして反発している。

10月25日、小売から化学製品まで幅広いビジネスを手掛けるこの韓国ロッテ・グループは、THAAD配備を巡る中韓両国の外交対立によって、最も甚大な被害を被った企業となった。写真は3月、閉店した北京のロッテ・スーパー店舗(2017年 ロイター)

旅行会社によると、THAAD配備後、中国は韓国への団体旅行を禁止し、クルーズ船も韓国への寄港を取りやめた。また、民間機のフライトも一部削減されたという。

中国で展開するロッテストア112店舗のほとんどが、今年に入って防火基準違反の疑いがあるとして、中国当局から閉鎖を命じられており、ロッテ・グループは現在、売却先を探している。

銀行関係者によると、売却額は数百万ドル規模にとどまる可能性が高く、これは同社が投じた1.9兆ウォンの数分の1程度に過ぎない。

中国の瀋陽と成都で計画していた大規模な複合娯楽ショッピング施設の建設も無期延期となり、同社の建設や金融部門も、打撃を受けた。

主力の免税品販売が中国人観光客減少の直撃を受けたホテルロッテは上半期に、決算データ公表を始めた2008年以降初となる営業損失を計上した。

10月25日、小売から化学製品まで幅広いビジネスを手掛けるこの韓国ロッテ・グループは、THAAD配備を巡る中韓両国の外交対立によって、最も甚大な被害を被った企業となった。写真は、THAADが設置された韓国星州郡のかつてのゴルフ場。6月撮影(2017年 ロイター/Kim Hong-Ji)

ホテルロッテのIPO(新規株式公開)も、THAAD騒動の余波もあり、無期延期となっている。ただ、ロッテの小売り・食品関連子会社4社を1つの持ち株会社に再編成し、10月30日に再上場する計画は、予定通り実施される。

格付け会社ムーディーズの韓国部門アナリストKim Ho-seop氏は、新たに設立される持ち株会社ロッテ・コープは、中国事業の停滞と国内事業の収益悪化という逆風に直面することになると指摘。

ロッテ広報のLee Byung-hee氏は、長期的には同社の中国事業が回復することを期待しており、スーパー事業売却は、同市場からの撤退を意味する訳ではないと説明している。

<孤立無援>

韓国の文在寅政権は9月、THAAD騒動で打撃を受けた国内企業に対して税金の納付を最大9カ月猶予することを認めたが、中国ビジネスの再興に向けた支援策は何も打ち出さなかった。

また、影響を受けた自動車部品サプライヤーに対して政府系金融機関を通じた融資支援を拡充したが、ロッテに対しての財政支援はなかった。

「政府が今後、痛みを和らげるための追加策を打ち出す可能性はあるが、特定企業に対する支援を期待することは、現実的ではない」と政府高官は語った。

投資家も先行きに懐疑的になっており、ロッテ関連企業の株価パフォーマンスも市場を下回っている。

中国から撤退すれば、短期的な損失は抑えられるが、他市場への進出を狙うロッテの戦略を困難にすると、一部の投資家は指摘する。

「ロッテのような小売事業者にとって、インドネシアや東南アジアでの事業拡大には、同じような大きなリスクが伴う」と、マイダスのCEOは指摘する。「多くがそれぞれの国に特有の文化的、社会的な違いを過小評価する傾向がある」

(翻訳:山口香子 編集:下郡美紀)

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