February 20, 2018 / 11:01 PM / 7 months ago

コラム:米中の次なる「イデオロギー対立」

[16日 ロイター] - 中国政府は2014年、指導部による声明または政府系メディアで、米国と「新たな形での大国関係」を築く意欲を示し始めた。このやや曖昧ながらも強気な野望は、世界における自身の役割を再考し始めたことを示す最初の兆候の1つだった。

2月16日、中国政府は国内の政治言論に対する締め付けを強化し、米国人は中国が国外に与える影響力の性質に不安を感じている。写真は2017年11月、北京でトランプ米大統領(右)を迎える中国の習近平国家主席(2018年 ロイター/Damir Sagolj)

この優雅さに欠ける表現が広まることはなく、中国政府も最終的にはひっそりと取り下げた。だがそれでも、新たな米中関係は現実にその姿を現し始めた。

この数十年間、共通の利益追求を基軸に成り立っていたその関係は、加速度的に世界観の相違によって定義されるものに変わりつつあるようだ。中国政府は国内の政治言論に対する締め付けを強化し、米国人は中国が国外に与える影響力の性質に不安を感じている。イデオロギーが、再び米中関係を定義しつつある。

トランプ氏の米大統領当選が、様々な世界的潮流の転換点だったと指摘することが流行している。だが米中の場合、変化は米側よりも中国側指導部によるところが大きい。

2012年に中国共産党総書記に就任して以降、習近平氏は常に、毛沢東以降の歴代指導者の誰よりも強硬なイデオロギー路線を取ってきた。

中国共産党からの圧力を受けたチャットアプリ「微信(英語名:ウィーチャット)」は、プライベートなチャット会話に出てくる「歪んだ」中国史観を検閲することに同意した。このアプリが世界中で使われていることを考えれば、影響は中国の国境をはるかに越えて広がる。

中国政府が、改めてイデオロギー統制に力を入れ出したことは、中国で活動する外国大学への新たな規制からも読み取れる。

学問の自由を約束されて中国に招致されたニューヨーク大やデューク大のような教育機関は、今やキャンパスに共産党支部を設置し、ハイレベルな意思決定権を党職員に与えることを強要されている。

中国政府は先月、顧客アンケートの1つに台湾を「独立国」と記載したとして、米ホテル大手マリオット・インターナショナルに公式な謝罪を要求した。政府の怒りようは激烈で、ホテル側は謝罪した。

国外にイデオロギーを広めようとする中国政府の取り組みが狙うのは米国だけではないが、米国側はより強硬な反応を示しつつある。

トランプ大統領は1月下旬、中国政府の「不公平な」通商行為への対応として、中国製ソーラーパネルと洗濯機への関税を大幅に引き上げると発表した。

関税引き上げが、その目的を達成してもしなくても、象徴的な意味は大きい。米国はもはや、世界の貿易システムを支えるために必要な市場開放のコストを、以前ほど負担する意思がないのだ。

この数カ月、中国が米国で展開するプロジェクトや影響力に対する風当たりが強まっている。

中国の大学教育現場でのイデオロギー統制の強化を目にした米国の大学の多くが、中国政府が米国各地の大学キャンパスに開設した「孔子学院」の意義を大っぴらに疑い始めている。さらに、最近まで中国をグローバル社会に組み込むことの利点を強調してきた米国の政治学者が、中国政府の行動や動機、価値を批判し始めている。

「ソフトパワー」という言葉の生みの親として知られるジョセフ・ナイ、ハーバード大教授は、中国が世界に及ぼす影響力を「シャープパワー」と呼び始めた。そして、それにわれわれは抵抗しなくてはならないと呼びかけている。

米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は先週、米国にいる中国人学生が、中国政府の「非伝統的な」情報収集者となる可能性があると指摘した。

イデオロギーは、米中関係の最初の数十年を決定づけ、両国は30年近く敵対関係にあった。だが1970年代後半のポスト毛沢東時代の雪解け、特にトウ小平氏が経済の「改革開放」路線を表明した1979年以降は、米中はイデオロギー的な立場の違いのほとんどを棚上げにし、貿易やテロ対策から環境に至るまで、共通の利益を追求してきた。

こうした協力関係にも関わらず、根本的なイデオロギーの対立は依然として解消されていない。

米国の政治文化は民主主義や開放性、公民権や活発な議論に変わらずコミットしている。中国共産党は、一党支配と権威主義、そして情報の完全管理を旨とする。両国の政治指導者は、自身が世界に対する歴史的責任を負っていると考えている。

ここ数世代に渡り、われわれは、中国と米国が「グローバリゼーション」に代表される経済開発や自由貿易などの共通利益の追求をもって、政治的課題の枠組みとすることに慣れてきた。これにより、イデオロギー対立の影響を抑えられるはずだった。だがイデオロギーが消え去ることはなかった。

米中両国はともに革命の産物であり、革命に内包される騒乱が、われわれの価値を決定した。そして両国とも、今こそその価値を高らかにうたい、広げる好機だと考えている。

これは、われわれの指導者や世論に、これまで避けてきた選択を強いるだろう。こうした選択肢のいくつかについては、われわれは十分に準備ができていない。

われわれの中国観や対中政策は、平和な時代に築かれたものだ。激動の時代向けの新たなものが、必要になっている。

*筆者は、ニューヨークのシンクタンク「The Metropolitan Society for International Affairs」の創設者。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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