March 19, 2020 / 8:53 AM / 20 days ago

コラム:政策総動員でも株下落、「ショック死」回避の道は

[東京 19日 ロイター] - 米欧日の財政・金融当局が政策を総動員しても、世界の株価は下げ止まらず、同時に安全資産の日米国債も売られ、政策効果が全く見えなくなった。第2次世界大戦後の金融秩序の下では見たこともない「未体験ゾーン」に突入した。政策当局が確信を持てなくなったという点では、1929年の世界大恐慌の時と情勢が似ている。

3月19日、米欧日の財政・金融当局が政策を総動員しても、世界の株価は下げ止まらず、同時に安全資産の日米国債も売られ、政策効果が全く見えなくなった。写真は東京の上野公園で桜を眺める人々(2020年 ロイター/Issei Kato)

当時のダウ.N225は高値から89%下落した。今回の「コロナ危機」でもチャート分析は無力化し、底値は見えない。新型コロナウイルスに効く「特効薬」にメドが立つまで「籠城」して持ちこたえる必要がある。その際、注目すべきは日本の大企業の持つ479兆円の利益剰余金の存在だ。米欧企業に比べ「兵糧」は潤沢だ。また、日本で開発された「アビガン」や「ナファスタット」もある。株価急落は覚悟しつつ、次のフェーズを展望し、最悪期を耐えることが必要だ。

<ECB債券買入でも株下落>

欧州中銀は18日、7500億ユーロの緊急債券買い入れプログラムを公表し、「あらゆる措置を講じる」(ラガルド総裁)と強い決意も示した。これを受けて、グローバルマーケットは好感すると思われたが、直後にS&P500種ミニ先物は3%下落し、19日の日経平均.N225は高く寄り付いたものの、午後になって大きく売り込まれた。

日米中銀の大胆な緩和政策やトランプ米大統領の1兆ドル規模の経済対策など、過去の経済的危機の際の株価下落時に「効果」があった財政・金融政策のカードがことごとく通じない。

あろうことか、株価の急落中に最も安全と見られていた10年米国債US10YT=RRが18日には一時、1.2%台に急上昇した。「換金売り」と言ってしまえばそれまでだが、米欧の金融機関や機関投資家は完全に冷静さを失ってしまった。

19日の東京市場でも、日経平均が1万6000円台前半まで下落する中で、10年最長期国債利回りJP10YTN=JBTCが一時、0.085%まで上昇。日銀が異例となる1日に2回の臨時国債買い入れを実行。「差し水」を入れた格好となった。

<大恐慌と酷似する政策と現実のねじれ>

この市場の狼狽(ろうばい)ぶりと政策当局の繰り出すカードとの「不一致」は、1929年の世界大恐慌時と酷似している面がある。

ダウは1923年から29年9月3日まで5倍に跳ね上がり、3日に381.17ドルの最高値を更新した。だが、9月24日に最初の暴落を引き起こし、その後の1カ月間で約17%急落。30年4月17日に294.07ドルの高値を付けたものの、翌31年から下落が顕著になり、32年7月8日に41.22ドルの底値を記録した。実に89%の下落率である。

当時の政策当局は、株価暴落による資金繰りの悪化を契機とした企業倒産と「首切り」の連鎖を止める手立てを知らなかった。今、当局が採用している財政・金融のマクロ政策を総動員するという経験がなく、悪く言えば、事態の悪化を傍観してしまった。

一方、今回の「コロナ危機」では、マクロ政策のノウハウは十分に蓄積されているが、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために講じる「移動規制」による経済的打撃をうまくマネージできていない。

早い話が、いつまで「封鎖」や「外出禁止」「イベント自粛」を続けたらよいのか、今の時点ではだれにもわからない。したがって経済的な損失がいったい、どれだけの規模に膨らむかも不明であり、日米欧でどれだけの赤字国債を発行すれば、解決に向かうのかも不明。ウイルス鎮圧のためのワクチンや特効薬がいつ登場するのか、概略的なことすらはっきりしない。政策当局のカードと現実が「ねじれ」ていることは、1929年当時と全く変わらない。

<特効薬の登場まで株下落も>

したがって「特効薬」のメドが立つまで、株価は下落を継続するだろう。実際、米ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は18日のCNNの番組の中で「今後の新型ウイルスの感染状況が、最終的な経済への影響を左右する」とし、「残念なことに、それは壊滅的なものになる可能性がある。金融危機のような状況か、あるいはそれを上回る可能性もある」と述べ、かつてない経済的な損失発生の可能性に言及した。

また、JPモルガンは18日、米経済成長率が第2・四半期にマイナス14%になる恐れがあるとの見方を示した。これは大恐慌時のマイナス幅を上回る。

ダウと日経平均が当面、下落を続けても、もはや驚いてばかりいてはいけないだろう。ましてチャートやその他の指標、過去の経験則を持ち出して「ここが底値ですね」と言っても、街頭の占い師の「託宣」と大差のない意味合いだと思う。

<日本の強み、479兆円の利益剰余金>

今、各国の政策当局が打つべき政策は、企業を倒産させず、失業者を極力出さないことだ。その点、FRB、ECB、日銀の中銀は、企業金融と市場におけるクレジット面からの破綻の芽を摘もうという政策に集中している。これは、現時点でやれることをほぼ、全てやっていると言えるだろう。

財政に関しては、損失の確定ができないので、かなり「チャレンジング」な政策対応を強いられそうだ。「特効薬」という援軍が、なかなか登場しないと、弾薬切れになって「落城」の危機に直面するリスクもある。

こうした中で、日本にはとても心強いものが存在する。それは企業が保有する479兆円という利益剰余金だ。米国はGAFAなど限られた企業を除くと、キャッシュの保有比率は低い。欧州も似た状況だが、日本は2008年のリーマン危機に懲りてため込んだ現金が潤沢にある。479兆円の残高は過去最高だ。

この剰余金を駆使して、雇用を守り、世界中に起こるであろう資金繰り危機をどこよりも軽々と乗り越え、危機後に来る「回復期」を世界の先頭に立って迎えることができる。例えれば、米国や欧州に比べ、潤沢な兵糧があり、確実に持ちこたえることができるということだ。

<アビガンとナファモスタット>

日本にはもう1つ、有利な材料がある。それは特効薬の切り札をいくつか持っていることだ。富士フイルム(4901.T)の関係会社、富士フイルム富山化学が開発した「アビガン」は、中国当局が有効性を確認したと発表した。

また、「フサン」という商品名で発売されている「ナファモスタット」は、東京大学の五神真総長が18日の会見で「ナファモスタットはCOVID-19に対してかなりの効果が期待される」と述べている。

つまり「コロナ危機」の援軍に関し、日本は非常に有利な立場にいるということだ。

株価の急落にショックを受けず、ぐっと堪えて来援を待てば、明るい展望が開けるのではないか。感染者数、死者数が相対的に少ないまま推移し、治療薬の存在で消費者の不安心理が沈静化することで、内需の回復期にかなり力強く需要が上向くと期待できる。そのイメージを持って、最悪期を乗り越えたい。

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編集:内田慎一

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