March 9, 2020 / 1:02 AM / 21 days ago

新型コロナ懸念で市場動揺:識者はこうみる

[東京 9日 ロイター] - 前場の東京株式市場で、日経平均は前営業日比1276円68銭安の1万9473円07銭となり、大幅続落した。原油先物価格も、1991年以来の大幅な下落。新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済や資産価格に及ぼす影響について、不透明感が増している。

3月9日、寄り付きの東京株式市場は大幅続落でスタートした。東京証券取引所で1月撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

国内外の市場関係者に見方を聞いた。

●原油価格急落でオイルマネーの流れに注目=三菱UFJMS 荒井氏

<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 シニア投資ストラテジスト 荒井誠治氏>

新型コロナウイルスの流行による世界的な経済危機が警戒されている中、原油価格が暴落し、きょうは資源株を中心に全面安となっている

原油価格の下落は産油国の財政に影響を与える。この穴埋めに取り得る手段として考えられるのが、保有株式の売却だ。サウジアラビアのような産油国は、政府系ファンドを通じて「オイルマネー」を日本株に投じてきた。原油価格の下落に伴い、今後そのオイルマネーを引き戻す動きに出るとなると、日本株は大きな打撃を受ける。

資源株以外で注目したいのは、金融セクターの値下がりだ。米連邦準備理事会(FRB)は先週緊急利下げをしたものの、来週に米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えていることから、市場では更なる利下げへの期待が高まっている。米国が仮に利下げに踏み切ると、日銀も何かしらの動きに出ざるを得なくなる。2015年の「チャイナショック」後の株価の乱高下と世界経済の不透明感は、結果的に日銀のマイナス金利の深堀りの決断を促した。金融セクターの値下がりは、投資家の利下げの先読みを示唆しているのではないか。

●円高一服待って落ち着きどころ探る

<キャピタル・パートナーズ証券 チーフマーケットアナリスト 倉持宏朗氏>

前週末の米雇用統計をはじめ、このところ米国の経済指標は良好だったが、これらは新型コロナウイルスの感染者が拡大する前の過去の数字と米国市場もようやく受け止める格好となった。週明けの時間外取引で米株先物が急落。マーケットを取り巻く環境は一段と厳しさを増している。

グランド・プリンセスで集団感染の恐れなど、米国でも深刻度が増しており、金利低下圧力が一段と高まった。こうなると円高に歯止めが効かなくなり、輸出関連株は売らざるを得なくなる。それだけではなく、原油先物の急落が市場に大きなダメージを与えており、リスクを回復の動きがより広がった。

当面、日本株は下値を模索する動きは避けられない。円高の一服を待って落ち着きどころを探るようになるのではないか。

●日銀が利下げ見送れば金利上昇圧力に

<野村証券 シニア金利ストラテジスト 中島 武信氏>

FF先物はFRB(米連邦準備理事会)がゼロ金利政策に戻ることを織り込んできている。円債金利は米金利に連動して低下しているが、日銀の利下げを織り込み始めていることも、金利低下要因となっている。

しかし、マイナス金利の深掘りで円高進行を食い止められるかどうかはわからない。金融機関のダメージも大きくなる。来週18─19日の金融政策決定会合で深掘りは次回以降の会合での検討課題とされ、見送られる可能性が大きいとみている。

新型ウイルスの感染拡大が止まらなければ、10年債利回りは昨年9月に付けたマイナス0.295%を試しに行くと予想しているが、日銀が深掘りを今回見送れば、利下げ織り込みの剥落で、多少金利は上昇するかもしれない。

●ドル全面安、経済・金利の両面で比較優位失った米国

<FXプライムbyGMO 常務取締役 上田眞理人氏>

ドルは9日の早朝に103円半ばまで急落し、2016年11月以来の安値をつけた。

ドル/円の急落に関しては、新型コロナウイルスの感染拡大を背景とするグローバル経済の先行き不安があり、リスク回避の円買いという側面もある。しかし、これだけでは説明がつきにくい。

米国は、景気面でも金利面でもこれまでは比較優位を保っており、世界の投資家のマネーを引き寄せていた。だが、コロナウイルスの感染拡大によって、米国や世界経済が景気後退局面に突入するとの見方が広がるなか、米国は比較優位を完全に失っている。これが足元の「ドル全面安」の原因だ。

先物取引では、投機筋がまだドルロングを抱えているが、これもスクエアにする方向に向かうだろう。目先は103円半ばがテクニカルなサポートになり得るが、次は100円ちょうどを意識する展開になりそうだ。

米商品先物取引委員会(CFTC)が発表したIMM通貨先物の非商業(投機)部門の取組(3月3日までの週)に基づくロイターの算出で、ドルの主要6通貨(円、ユーロ、ポンド、スイスフラン、カナダドル、豪ドル)に対する買い越し額は172億8000万ドルで、前週の212億1000万ドルから減少した。

人とモノの動きが停滞する中で、通貨を選択するのは難しい。今後は経済指標を一段と注視する必要があろう。

●原油急落で想定外の下げ、しばらく不安定

<大和証券 チーフグローバルストラテジスト 壁谷洋和氏>

週明けの東京市場で日本株は大きく下落し、日経平均株価は2万円を割り込んだ。

発端になったのは原油価格の急落と円高の進行だ。「OPECプラス」の協調減産協議の決裂に加え、サウジアラビアが原油の大幅増産計画を打ち出したことが引き金となった。株価は新型コロナウイルスの感染拡大とは別の次元から切り込んできた話によって想定外の下げ方をしている。

原油価格が下落すれば、米国のエネルギー産業にも打撃を与える。クレジットリスクも意識されやすくなり、米ハイイールド債のマーケットの崩壊からくる金融市場の混乱も警戒される。

株式は売られ過ぎの側面が強いが、いったんこうしたセンチメントが強まると、何が下値を支えるきっかけとなり得るのか見出しづらい。しばらく不安定な相場が続きそうだ。

●金融市場は「パラダイムシフト」、長期的なドルの優位性は不変

<みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏>

新型コロナウィルスが米国を含む世界経済全体を揺さぶる前は、米連邦準備理事会(FRB)は少なくとも年内は様子見を続けて利下げ余地を温存し、ドルの長短金利はそこそこの水準を保つという大きな枠組みが存在した。

ところが、新型肺炎を材料にした株価急落と市場心理の不安定化を座視し得なくなったFRBは、0.5%ポイントの緊急利下げで「パンドラの箱」を開けた。

米政策金利の弾切れが今後早い段階で起きるとの思惑から、米10年債利回りは今朝0.5%を、米30年債利回りは1%を下回り、市場は「パラダイムシフト」の様相を呈している。

原油市場では、「OPECプラス」での減産協議決裂を受けた原油価格が急落し、金融証券市場におけるリスク回避のセンチメントを増幅させている。

ドル/円相場の急変動については、政府・日銀は20カ国・地域(G20)の合意の範囲でドル買い/円売りのスムージング・オペレーション(相場の急激な変動を抑制する介入)を実施することができるとみている。日米貿易協議に「為替条項」が盛り込まれなかったことで、当局は動きやすくなるだろう。

中長期的にみた場合、米国がマイナスの政策金利を強く否定し続けていることを考慮すれば、FF金利の誘導目標の引き下げは0―0.25%で打ち止めになると予想する。

米国はマネーマーケットファンド(MMF)やコマーシャルペーパー市場など、流動性に富む短期商品や市場を抱えており、こうした市場にとってマイナス金利はタブーである。ここ1、2週間ではなく、より長めの見地に立てば、ドルが基軸通貨であることに変化はなく、金利面からのドルの優位性は保たれるとみている。

●あと30%下落も、米景気後退へ

<リーダー・キャピタルの最高経営責任者(CEO)、ジョン・レカス氏>

アルマゲドンの状況にある。株式相場は今後30日で30%下落する可能性もある。20階建ての建物から飛び降りた後、まだ8階にいるようなものだ。

10年債(利回り)は、多少の違いはあるとしても、経済成長率と一致する。つまり、(米)成長率は事実上、2%強からほぼゼロに一気に低下したことになる。2四半期連続でマイナス成長となり、おそらくリセッション(景気後退)に陥るだろう。

トランプ米大統領の再選も危うくなる。市場はまだ現状についていっていない。

債券市場は私がこれまでに見たことがない動きになっている。低金利は低コストの資金を意味するという見方は当てはまらない。信用収縮が起き、資金が消えるためだ。

●原油安の恩恵より景気不安に直面

<ジョーンズトレーディングのチーフ市場ストラテジスト、マイケル・オルーク氏>

週末にかけて状況が悪化した。新型コロナウイルス関連では、イタリアが4月3日までロンバルディア州などを封鎖すると発表した。

さらに大きなニュースとしては、石油輸出国機構(OPEC)と主要産油国の協調減産を巡る協議が、ロシアの反対で決裂したことを受けたサウジアラビアの動きが挙げられる。サウジは低コストで生産できる立場を利用し、増産に転換することを選択した。

これらのイベントは事態をさらに複雑にする予期しない重大な影響を市場にもたらすだろう。皮肉なことに、これが新型ウイルスの流行前に起きていれば、強気と受け止められ、自動車メーカーや航空会社、素材関連企業の株価は上昇していただろう。

エネルギー企業や電気自動車メーカーが圧力を受けるのは確かだ。全般的に原油価格の下落は実体経済にとってプラス要因だ。とはいえ、原油安の恩恵を受けるであろう企業は、新型ウイルスの影響で、より大きな景気先行き不透明感に直面している。

●アジア以外で感染ピーク迎えれば転換点に

<OCBCバンク・ウエルス・マネジメント(シンガポール)の上級投資ストラテジスト、バス・メノン氏>

原油は新型コロナウイルスと石油輸出国機構(OPEC)協議破談の両方の影響を受け、二重苦の状況。

金融市場への影響で言えば、原油市場の損失を補うために収益を上げているポジションの一部を解消する動きが考えられる。原油市場が一段の不透明感の原因となったが、現段階で重要性が高いのは新型コロナウイルスだ。

これが(株式を)買う好機かどうかについて、個人的には慎重に見ている。アジア以外の感染がピークを迎えたとの兆しが見え始めれば転換点になると考えるが、まだそこには達していない。

今は安値を拾う絶好のタイミングではない。マクロ的にはなお非常に不透明で、状況は変化しており、欧米の感染者数は増え続けている。この逆風下で市場に飛び込むのは無謀だ。

●2つのブラックスワンが出現

<ファー・ミラー&ワシントンのマイケル・ファー社長>

2つの「ブラックスワン」イベントが重なった。コロナウイルスと原油だ。

投資家はまだ大砲とバターにシフトしていない。ハイテク株からプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)やペプシコーラにシフトしていない。私ならこうした銘柄を物色するが、さらに下振れリスクが強まれば、話は別だ。

もう1つの問題は債務だ。原油安が進み、クレジット市場がひっ迫すれば、多くの企業は借り換えや返済期限の延長が難しくなるだろう。

●一部エネルギー関連債券でデフォルトも

<キングスビュー・アセット・マネジメント(シカゴ)のポートフォリオマネジャー、ポール・ノルテ氏>

原油価格の急落によりエネルギー分野債券のいくつかで債務不履行(デフォルト)の可能性が高まっている。これが株式市場の懸念となっており、この懸念はしばらく続く可能性があると思う。

*内容を追加しました。

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