March 23, 2018 / 5:01 AM / 8 months ago

〔Market Views〕勝者なき「Lose-Lose」の貿易戦争、市場は世界経済悪化を警戒

[東京 23日 ロイター] - 金融市場に不安が広がっている。2月の相場急変を比較的短期間で乗り切ったのは、堅調な世界経済のおかげだが、貿易戦争は景気に大きな悪影響をもたらしかねない。対象国からの輸出が減ったとしても、米国も安い輸入品が使えなくなる。リスク回避のドル安が進めば、インフレを抑えるために米利上げペースが速まる可能性がある。米国も例外ではない世界同時株安は勝者なき「Lose-Lose」経済への市場の警戒感を示している。

市場関係者の見方は以下の通り。

●米国発の貿易戦争、需要減・円高での下振れ警戒

<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 投資情報部長 藤戸則弘氏>

米国と中国の貿易摩擦が、貿易戦争にステップアップしようとしている。国内総生産(GDP)で世界1位と2位の大国間の軋轢(あつれき)は、世界経済に影響せざるを得ない。資源小国の日本の経済は、自由貿易を前提に成り立っているため、その影響はとりわけ大きくなりそうだ。

今年度決算で最高益となる見込みの企業の多くが、中国で利益を稼いでいる。米国の高関税によって中国経済が停滞すれば、電子部品、工作機械、建機など、広範な銘柄に影響が及ぶ可能性がある。貿易問題は円高に作用しやすい。さらに円高になれば企業業績の前提レートも円高方向に修正され、外需企業には下振れ要因となる。

ポンペオ米国務長官、ボルトン安保担当大統領補佐官という外交面でのタカ派人事が伝わっており、地政学リスクへの警戒感が高まる可能性もある。

米国の通商政策に振らされる状況は、しばらく続きそうだ。トランプ大統領は秋の中間選挙を意識しており、旗を降ろすとは考えにくい。今は中国やメキシコがターゲットになっているが、いつ日本に矛先が向いてもおかしくない。鉄鋼、アルミへの高関税発動を前に欧州連合(EU)や韓国が適用を除外されたのに、日本は除外されていない。

今後は、日本政府の米国への働きかけが重要だ。高関税から適用を除外されるようになれば、相場にも落ち着きが出てくる。来期の下振れを織り込んでも、日本株のバリュエーションは安い。日経平均の2万円割れは売られ過ぎと言えるため、現時点では想定しなくていいだろう。相場の落ち着きとともに中長期資金が流入してくれば、5月の大型連休にかけて2万3000円付近へのリバウンドもあり得る。

●報復の応酬に身構え、世界経済鈍化シナリオ警戒

<岡三アセットマネジメント シニアストラテジスト 前野達志氏>

報復が報復を呼ぶ貿易戦争に近づいた。米国企業を含め、製造業の世界的なサプライチェーンが寸断されてしまうシナリオが現実に近づいた。今後は中国が米国からの輸入品に何らかの制限をかけることが考えられる。これを受け、トランプ米大統領がさらに関税を課す範囲を広げる話になるかもしれない。世界の株式市場は身構え始めている。

もっとも、日本からの鉄鋼・アルミの米国輸出はそれほど大きい訳ではない。鉄鋼で25%、アルミニウムで10%の追加関税を課すという232条に関する日本企業への直接的な影響はそこまで大きなものではない。日本は高性能品を手掛けているため、(関税を猶予する対象国から)除外されたのだろう。

とはいえ、世界経済が鈍化すれば日本企業の業績にも悪影響が出る。米国においても、保護主義的な政策によりインフレが加速することで、利上げペースが速まる可能性も高まる。

まずは中国の出方を注視する必要がある。報復関税の動きが警戒されるが、中国も本格的な貿易戦争は望んでいないはずだ。中国側が輸出の自主規制を模索し、それが現実のものになれば、徐々に株価は戻していく。この方向に行くのであれば、足元の日本株の水準は買い場だが、この先どう転ぶかは見通しにくい。

米国のドル安政策も根底的なものとして意識せざるを得ない。為替が1ドル103円、100円まで円高が進む可能性も十分に考えられる。最悪の場合、日銀の金融政策も円安政策と指摘され、米国側からの圧力で修正を余儀なくされるといった話が出てくるかもしれない。

足元の日本株に対しては日銀のETF(上場投信)買いの効果なども見込まれる。今後3カ月の日経平均の予想レンジとしては2万円から2万3000円とみている。

●ドル短期的に104円が下値めど、落ち着けば米景気に目線回帰

<三井住友信託銀行 マーケット・ストラテジスト 瀬良礼子氏>

米連邦準備理事会(FRB)は3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げし、来年、再来年の利上げペースも加速が予想されていた。通過後にドルが売られたのは「FOMCが思ったほどタカ派的でなかったからだ」との解説もあったが、違和感を感じていた。振り返ってみると結果的に米国の通商問題に対する警戒感の方が強かったということなのだろう。

米国と中国の「貿易戦争」懸念がどこまで大きくなるか不透明な部分がある。ただ、今のところ中国が理性的な対応をとっている。ドルはいったん104円近辺を下値めどとみてもいいのではないか。

トランプ大統領の言動を読み切るのは難しく、政権運営に一段と不透明感が強まれば104円を割りこむこともあるだろう。ただ、米景気は悪くなく、利上げサイクルに入っている状況を考えれば、一気に100円を試すような感じもしない。

日本の機関投資家の運用難の状況は続いており、4月になれば新年度を迎えた投資家からの対外証券投資などが円高の動きに歯止めをかける可能性がある。中期的には2016年の米大統領選前にもみあった102─103円レベルが1つの下値めどになりそうだ。

向こう3カ月の中心レンジは102─107円とみている。104円を中心として、どちらかと言えば上方向を広く取りたい。徐々に不透明感が解消し、市場が落ち着いてくれば、米経済の強さに世の中の目線が回帰していくとみる。

●米国発の通商摩擦が長引く恐れ、ドル安方向に潮目変化

<FXプライムbyGMO 常務取締役 上田眞理人氏>

今朝のドル/円は2016年の米大統領選以来初めて105円を下回った。心理的節目を下回った後は勢いよく戻るのが通常のパターンだが、今回はそういう流れになっていないことから判断して、ドル安/円高方向に潮目が変わったとみている。

米中貿易戦争に対する懸念が広がっているが、米国は中国のみならず世界を相手に保護貿易主義を貫く意向であり、米国発の通商摩擦は長引く可能性が高い。

米国の保護貿易主義によってグローバル経済が停滞するのは間違いない。トランプ氏が唯一成果をあげた米税制改革(減税)の景気押し上げ効果も、グローバル経済の停滞によって相殺されるだろう。

また、政治面では米国と北朝鮮の対話が期待されていたが、そこで重要な役割を担う中国と米国が通商面で衝突していれば、対話の進展も危ぶまれる。

こうした通商面、政治面のリスクは、金融市場のリスク回避行動を強め、株が一段と売られ債券が買われる展開となるだろう。

世界の投資家にドルが敬遠されるなか、ドル離れした資金の行き先はまずユーロやポンドとなるが、リスク回避の円買いも続くとみている。レベル感ではとりあえず103円が下値めどとなるが、トランプラリーの全てがはげ落ちるとすれば、101円前半までドル安が進んでもおかしくない。今年上半期のレンジは100―108円と予想する。

●日銀オペ減額しづらい

<みずほ証券 シニア債券ストラテジスト 丹治倫敦氏>

22日の米国市場では、貿易摩擦への不安が広がり米国株が急落する中、安全資産とされる米国債に対する需要が増大した。

米国債が今後どう展開していくかはやや複雑で、シンプルにリスク回避で金利が下がることもあるが、為替市場でドル安が進行してインフレ率が上がり利上げ加速が意識されると、金利が上昇することも考えられる。

ただ、足元では、米連邦公開市場委員会(FOMC)を通過し米連邦準備理事会(FRB)がさほどタカ派にはならないということも分かりドルが安くなったところで、すぐに利上げを急ぐ話にはならないとみて金利が低下したと思う。

対ドルで100円を割ってくるような急激な円高になれば別だが、現状の為替水準では日銀の追加緩和はないとみている。ただ、日銀オペのオファー減額はしづらいという観測が出て、円債相場を支えることになりそうだ。

円債市場では、急激でないだろうが当面は金利は低下方向とみている。今後3カ月間の日本の10年最長期国債利回り(長期金利)のレンジはマイナス0.020─0.080%を見込んでいる。

●イールドカーブのフラット化進む

<東海東京証券 チーフ債券ストラテジスト 佐野一彦氏>

トランプ米大統領の政策は両サイドある。インフラ投資などは良い方向に捉えられた面だが、保護主義は世界経済にマイナスだ。今年は米中間選挙があるので、リップサービスという側面もある。

円債市場への影響としては、イールドカーブのフラット化が進むことになるだろう。市場参加者は来年度、超長期債を軸に投資を行うことになりそうだ。

円高が進んでいるため、日銀は買い入れ額を減らしづらいが、仮に減額されて利回りが上昇すれば需要が強まることになりそうだ。

今後3カ月間の日本の10年最長期国債利回り(長期金利)のレンジはマイナス0.025─0.075%を見込んでいる。トランプ大統領の政策に起因する世界的なリスクオフにより、円債金利のマイナス幅が広がることが考えられる。 (金融マーケットチーム)

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