February 6, 2018 / 11:07 PM / 6 months ago

焦点:仮想通貨の「盗難補償」広がるか、保険会社に温度差

[ニューヨーク 1日 ロイター] - 世界の大手保険会社が、仮想通貨の盗難をカバーする保険の提供に乗り出している。急速に発展しているとはいえ、不安定で規制も緩い仮想通貨分野だが、機会を逃すよりも、困難な挑戦に取り組む構えだ。

 2月1日、世界の大手保険会社が、仮想通貨の盗難をカバーする保険の提供に乗り出している。写真は2017年12月撮影(2018年 ロイター/Dado Ruvic)

これまでのところ、そのような保険を提供しているのは、XLカトリン(XL.N)やチャブ(CB.N)、三井住友海上火災保険(8725.T)などに限られる。だが、このほか数社も、匿名で取引されるビットコインやイーサーなどの仮想通貨を扱う企業向けの保険商品を検討しているとロイターに明らかにした。

こうした動きは、現段階ではそれほど注目されていない。だが保険市場の出現は、生まれたばかりの仮想通貨が広く社会的に認知されるための重要な一歩となる。

リスクははっきりしている。仮想通貨の投資家は、ハッキングや技術的エラー、詐欺行為などで、すでに数十億ドル規模の被害を被っている。ハッキング被害によって、閉鎖した取引所も多い。

1月26日には、東京の大手仮想通貨取引所コインチェックが、外部からの不正アクセスを受けて約580億円分相当の仮想通貨「NEM(ネム)が流出したと公表した。

保険会社にとっての課題は、商品設計や保険料決定に通常使われるデータの蓄積がない若い産業で、理解している人の少ない新技術を使う、馴染みのない顧客層に対し、こうしたリスクをどう保証していくかだ。

課題解決のカギは、似たようなリスク構造を持つ既存ビジネス分野を特定し、そこで有効な保険を応用することだ、と米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)(AIG.N)で、北米の金融機関向けサイバー関連保険を担当するクリストファー・リウ氏は語る。

「いわば、デジタル武装した自動車整備サービスみたいなものだ」と、仮想通貨会社についてリウ氏は説明する。「事故や盗難などの問題が起きる時は、いろんなものの蓄積の結果そうなるということだ」

リウ氏によると、AIGは2014年に仮想通貨の盗難に対する保険の調査を始め、数件の保険契約を結んだが、「まだ予備調査段階」だという。

XLカトリンの北米犯罪対応保険を担当するグレッグ・バングス氏は、ビットコイン盗難保険の開発にあたり、主要プレーヤーや顧客になる可能性のある人々の話を聞くなどして、自前で仮想通貨の知識を習得しなければならなかったと話す。「われわれが最初に解答を見つけなければならなかったのは、(仮想通貨業界に)製品と呼べるものがあるかどうかだった」

XLカトリンではいま、盗難1件あたり最大2500万ドルまでの1年契約の保険を提供している。

<怪しい会社>

顧客を知ることも、特に重要になる。

保険仲介大手エーオンで、金融機関向け相談担当のジャッキー・クインタル氏は、仕事の一部は、正当な仮想通貨会社と怪しい会社を見分けることにあると言う。保険会社が関わる前に、白黒がつくことが多いという。

「情報提供に消極的だったり、コンプライアンス上の質問に答えない所は、いつのまにかひとりでに消えてしまう」と、クインタル氏は明かす。

それでも、セキュリティから保管手順、運営規模から経営に関わるメンバーまで、保険会社は通常より時間をかけて仮想通貨会社の調査を行う。手続に数カ月かかることもあるという。

「ビットコイン取引所やウォレットの中には、これほどの加入審査やデューディリジェンスを受けることを想定していなかったところもある」と、チャブで北米サイバー保険部門を率いるマット・プレボスト氏は言う。

世界で7200億ドルの規模に達している商業保険市場において、仮想通貨はまだ、ほんのわずかのシェアしかないが、今後その存在は大きくなると、チャブを含めた保険会社はみている。

<ホットウォレット>

多くの保険会社は、この新分野にまだ慎重な構えだ。

アメリカン・ファイナンシャル・グループ(AFG.N)傘下のグレート・アメリカン保険などは、ビットコインでの支払いを受け付けている企業向けに、従業員による盗難を保障する保険を提供しているが、ハッキングなど外部からのリスクには対応していない。同社は2014年、通常の従業員盗難保険に、ビットコイン対応を追加したという。

オンラインに接続した状態で保管され、ハッキングのリスクが高いる「ホットウォレット」はカバーせず、オフラインの「コールドウォレット」に保険対象を限定する方針の会社もある。仮想通貨取引所なども、通常コールドウォレットを好んで利用している。

32カ国で仮想通貨取引所を運営する大手コインベースは、ホームページで、顧客資産のうちオンラインに接続された状態で保管されているものは全体のわずか2%で、これらは保険でカバーされていると説明している。

世界有数の保険市場ロイズ・オブ・ロンドンが、コインベースに保険を提供している、と関係者は語る。保険契約の内容や規模は確認することはできなかった。ロイズの広報担当者は、コインベースについての取材には応じなかった。

この広報担当者によると、ロイズの加盟保険会社は近年仮想通貨が絡む保険をわずかだが引き受けている。ロイズは加盟保険会社に対して、慎重に対応を進め、仮想通貨会社の調査を念入りに行うよう指示しているという。

仮想通貨ビジネスは、まだ想定される損失に見合う保険料を得られるほど規模が大きくないと考える保険会社もある。

「検討はしているが、保険を提供する合理的な理由はあるだろうか」と、グレート・アメリカン保険の信用犯罪部門責任者フランク・シェックトン氏は言う。

現段階では、中小企業やスタートアップ企業は、コストがネックとなり保険加入をためらっていると、仮想通貨企業向け保険を2013年から開発しているイノベーション保険グループのタイ・サガロー氏は語る。「高額な保険なので、支払う余裕のある企業は多くない」

保険専門家によれば、1000万ドルの盗難保険の場合、年間保険料は一般的に保障限度額の2%にあたる20万ドル程度となる。企業や盗難歴などの要件にもよるが、金融機関に対する一般的な盗難保険料は、保障額の1%程度だ。

仮想通貨の価格が安定しないことも、懸案の1つだ。保障限度額の設定により、保険会社側は大幅な価格変動による影響は受けないが、顧客側にとっては大きな打撃となり得る。

例えば、2017年1月に締結された1000万ドルの盗難保険は、契約当時は1万957ビットコインをカバーできたが、1年後にハッキングされた場合、923ビットコインしかカバーされない計算だ。

仮想通貨取引所ジェミニの共同創業者キャメロン・ウィンクルボス氏は、投資家は保険の有無を最重要の懸案にすべきでないと訴える。

信託会社としてニューヨーク州に登録しているジェミニでは、州規制に従い、従業員による盗難や、コンピューター不正、不正な資産移動などに対する保険に加入しているが、ハッキング被害をカバーする保険には入っていないという。ウィンクルボス氏は、双子の兄弟のタイラー氏とともに同取引所を設立した。

「保険に頼らざるを得なくなる事態を回避するため、規制当局による監視を導入し、取引所がなすべきことを確実に実行するよう促すことが重要だ」と、ウィンクルボス氏はロイターに話した。

だが、ロイズの仲介会社セーフオンラインでサイバー技術分野を担当するヘンリー・サンダーソン氏は、仮想通貨保険は、この若い市場の成熟を後押しし、同時に保険会社に新たなビジネスを提供するものだと話す。「この分野は、成長し、成熟しつつある。今参入しなければ、保険会社にとって機会損失になる」

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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