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金融相場と業績相場が異例の併存、歴史的な株高にバブル警戒も
2017年11月7日 / 09:27 / 14日前

金融相場と業績相場が異例の併存、歴史的な株高にバブル警戒も

[東京 7日 ロイター] - 金融相場に業績相場が重なるという特異な現象が、株式市場で起きている。本来なら景気が良くなれば金利は上昇し、金融相場から業績相場に移行するが、今の先進国は物価や賃金が上がらず低金利政策を継続。ドルが上がらないために新興国も通貨が安定し、利下げが可能になっている。

 11月7日、金融相場に業績相場が重なるという特異な現象が、株式市場で起きている。本来なら景気が良くなれば金利は上昇し、金融相場から業績相場に移行するが、今の先進国は物価や賃金が上がらず低金利政策を継続。ドルが上がらないために新興国も通貨が安定し、利下げが可能になっている。写真は1万円札とドル紙幣、6月撮影(2017年 ロイター/Thomas White)

世界同時好況が今の歴史的な株高の裏付けだが、異例な金融緩和がもたらすバブル発生への警戒感も強い。

<世界同時好況もたらした上がらないドル>

世界の景気動向を敏感に反映する建設機械の需要。コマツ(6301.T)では、2017年9月中間期は10ある地域別の売上高が全て前年比プラスとなった。主要建機の年間世界需要見通しを引き上げ、2018年3月期業績予想を上方修正。「全世界的にいい状況に入ってきている」──。会見に臨んだ藤塚主夫副社長は、そう述べた。

米キャタピラー(CAT.N)も、17年通期の業績予想を10月に引き上げた。株価は年初来で約48%上昇し、米ダウ.DJI構成銘柄の中で、米航空大手ボーイング(BA.N)の69%に次いで第2位。コマツの株価も年初来44%高と、日経平均.N225の20%を大きく上回っている。

世界同時好況をもたらしている一つの「鍵」は、上がらないドルにある。ドルインデックス.DXYは9月の安値から反転しているものの、年初の水準からはまだ3分の1足らずの戻りに過ぎない。ドル安は米国のグローバル企業の業績を押し上げるだけでなく、新興国にも恩恵をもたらす。

「以前は米国が金利を上げるとドルが上昇、新興国では通貨が下落しインフレが発生、利上げせざるを得なくなり景気が後退した。しかし、今回はドルが上昇せず、新興国も利下げの余地が生まれた」と三井住友銀行チーフ・マーケット・エコノミストの森谷亨氏は指摘する。今年に入って利下げをロシアは5回、ブラジルは7回実施している。

米国第一主義を掲げるトランプ大統領の誕生で、一時は保護貿易への警戒感も強まったが、世界同時好況を原動力に貿易は拡大。世界貿易機関(WTO)によると、今年の世界貿易量は昨年の1.3%増から3.6%増に拡大する見通しだ。

<米利上げでも緩和環境が継続>

上がらないドルをもたらしている要因の一つに、米国の金融政策にある。米連邦準備理事会(FRB)は15年末に利上げに踏み切り、今年9月には資産縮小も決定した。しかし、FRBも強調するように、そのレベルはまだ「金融緩和地帯」にある。

政策金利のFFレート(中心レート)USFFTARGET=は、4度の利上げを経ても1.25%。06年時点のピーク5.25%の4分の1にも達していない。10年米長期金利US10YT=RRも約2.3%と06年当時の半分以下だ。米経済は完全雇用に近づき、企業業績は過去最高水準だが、金利の水準は極めて低い。

米国だけでなく、欧州でも欧州中央銀行(ECB)が資産圧縮(テーパリング)を決定したが期間は延長、ペースも緩やかだ。カナダや英国も利上げしているが、かつての金利水準には程遠い。どの国も、通貨高をもたらしかねない利上げに慎重になっている。

みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏の調べによると、主要7カ国(G7)の政策金利合計は、足元で2.525%。サブプライム問題前は20%近くに達していた。BRICS(南アを除く)の政策金利合計値も26.1%と過去最低水準まで低下している。

各国とも、成長のスピードはかつてほどではなく、賃金や物価も上がらないからこそ、各中銀は低金利政策を維持し続けることができている。株高もバブル期と違いファンダメンタルズの裏付けもある。

しかし、経済の水準とかけ離れた低金利が続くことで、世界同時好況がもたらされているとすれば、バブル発生への警戒感は怠れない。

<日本株が直面する「初めて」の状況>

金融相場と業績相場の併存が最も顕著に表れているのが日本だ。インフレ率は先進国で最も低いものの、景気は上向き、企業業績も過去最高。一方で、日銀は金融緩和を継続している。

「これまで、ちょっとでも景気が良くなれば、すぐに引き締めに動いていた日銀だが、今回は我慢している。このため金融相場と業績相場が同時に起きている。長い間、株式市場を見てきたが、こんなことは初めてだ。この状態が続くなら日経平均は3万円に行ってもおかしくない」とケイ・アセット代表の平野憲一氏は話す。

日経平均は7日、96年に付けた「バブル崩壊後高値」を更新、歴史的な水準に達した。しかし、黒田東彦日銀総裁は、金融緩和姿勢を維持し、年間約6兆円のETF(上場投資信託)買い入れも継続する考えを示している(6日の発言)。

ただ、欧米は金利水準が低いとはいえ、金融引き締めにすでに方針転換した。いま日本株を買っているのは海外勢だ。海外株が下落局面に転じたときに、日本株だけ売らないという期待は持ちにくい。

日本企業の業績は好調とはいえ不祥事は相次ぎ、ROE(株主資本収益率)も海外に比べ低いままだ。人口減少や社会保障の問題も残されている。この好機を利用して「体質改善」を進めることが、持続的な株高に欠かせない。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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