December 19, 2014 / 2:32 AM / 5 years ago

コラム:アベノミクス加速に残る「失敗の芽」

──衆院選での重要な事実は、安倍首相率いる与党の圧勝でも、投票率の記録的低さでもない。それらすべてが人口減少社会で起きているということだ。

Japan's parliament building is pictured on Japan's general election day in Tokyo December 14, 2014. Prime Minister Shinzo Abe's party looks set for a huge win in an election on Sunday that will allow him to claim a fresh mandate for his reflationary policies to revive Japan's economy, although voter turnout appeared headed for a postwar record low. REUTERS/Yuya Shino (JAPAN - Tags: POLITICS ELECTIONS) - RTR4HXE2

James Saft

[16日 ロイター]先に行われた日本の衆院選での重要な事実は、安倍晋三首相が圧勝を収めたことでも、投票率が記録的な低水準にとどまったことでもない。それらすべてが人口減少社会で起きているということだ。

その人口動態上の現実は、アベノミクスのリフレ経済政策は滑走路こそ伸びたものの、離陸するには恐らくまだ力不足であることを意味している。

衆院議席の3分の2以上を確保した連立与党の勝利により、来年の金融政策と財政政策がさらに拡張的になる可能性は高まり、来年9月に行われる自民党総裁選での安倍首相再選にも道が大きく開かれた。

アベノミクスの第1の矢と第2の矢、つまり円安に誘導して輸出を促進しながらインフレも作り出す金融政策と、それを支援するための消費再増税先送りを含めた財政政策は今後も進められるだろう。

しかし、少子高齢化が進み、移民もほとんどいない日本社会でそれが十分に効果を発揮するかは疑問だ。女性の活躍を促す労働改革がいずれ成功したとしてもだ。

「日本に必要なのは、より多くの負債やマネーではなく、より多くの人口だ。少子高齢化は総需要を減らしている。労働人口の縮小で日本の潜在的生産も落ちている。これは財政刺激策では解決できない」と、ハイ・フリークエンシー・エコノミクスのエコノミスト、カール・ワインバーグ氏は指摘。

その上で、同氏は「人口と労働力がともに減っているときに需要が供給を上回るスピードで落ちている以上、財政支出や金融情勢にかかわらず、デフレは内在している」と述べた。

この見方は、日銀が15日発表した12月短観でも裏付けられた。企業による1年後の物価見通しは、前回調査から小幅ながら低下した。企業や消費者のデフレマインドからの脱却が極めて難しいことを物語っている。

10月の全国消費者物価指数(CPI)は、価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が前年同月比2.9%上昇したが、4月の消費増税の影響を除くと0.9%の伸びにとどまった。さらに悪いのは、この緩やかなインフレにさえ賃金の伸びがまったく追いついていないことだ。物価の変動を考慮した10月に実質賃金は前年比2.8%減と、16カ月連続でマイナスとなった。

アベノミクスはゴールに近づくことはできるとしても、自律的景気回復を作り出す力があるかどうかは疑わしいということだ。同時に日本の公的債務も膨張しており、この賭けの危険性を高めている。

<グローバル化と株主価値礼賛>

アベノミクスが抱える他の問題の1つは、輸出主導型の日本経済復活が思うように進んでいないことだ。今のところ、円安を起点として輸出企業の利益が拡大し、そうした企業の設備投資や雇用が増え、経済全体が好循環するという動きにはまだ至っていない。

ドル/円相場は、2013年にアベノミクス相場が始まる前から約20%上昇したが、輸出の伸びはそれを大幅に下回っている(11月の貿易統計速報によると、輸出は前年比4.9%増)。輸出企業は利益率を膨ませているが、国内での投資拡大にはまだ二の足を踏んでいる。

バークレイズ証券のチーフエコノミスト森田京平氏は「ごく単純化すれば、アベノミクスは輸出産業を潤したが、まだ忙しくはしていないと言えそうだ」と語っている。

そうしたことの背景には、部分的には、日本企業が製造拠点を世界各地に多角化したことがあるのだろう。日本企業はもはや、円ベースの製造業としてのみ戦っている訳ではない。日本国内で生産を増やすことは他の拠点から需要を移すことになり、利益は減ることになる。

バークレイズの森田氏は、2002年以降の円相場の激しい変動にもかかわらず、日本製品の価格はほとんど上下していないと指摘。これは、日本の製造業がグローバルに高度に統合された結果だとの見方を示した。

日本経済が円安の波に乗り切れないもう1つの理由は、米国から輸入されて過去15年ほどで日本企業にも徐々に浸透してきた株主価値の礼賛にあるかもしれない。

企業の目的は株主価値の最大化にあると主張する人からは、日本企業は円安を思いがけず手にした恩恵と受け止め、設備投資を最低限に保ちつつ、利益をため込む方が良いという議論も聞こえてくる。

もしそれを、賃金上昇をインフレ率以下に抑えつつ行うことができるのであれば、さらに好都合と、国際的な教育を受けた日本企業の経営陣は考えているのかもしれない。

 12月16日、衆院選の勝利でアベノミクスは滑走路こそ伸びたものの、離陸するにはまだ力不足な状態であることに変わりはない。写真は15日撮影(2014年 ロイター/Toru Hanai)

アベノミクスは恐らく失敗するだろう。しかし衆院選が終わった今、その粘り強さや頑丈さが試されているように見える。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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