March 3, 2016 / 5:06 AM / 4 years ago

コラム:大統領選敗北でも米経済に残る「トランプ効果」

[2日 ロイター] - 2016年の米大統領選挙は、経済全体において労働分配率が高まり、資本分配率は低下する結果を生む構図になっている。つまりは、経済のパイを拡大するよりもそれをどう切り分けるかに重点が置かれているのかもしれない。

 3月2日、2016年の米大統領選挙は、経済全体において労働分配率が高まり、資本分配率は低下する結果を生む構図になっている。写真は、共和党候補指名争いでトップに立つ不動産王のトランプ氏。フロリダ州で1日撮影(2016年 ロイター/Scott Audette)

これは長期的な経済成長を抑制する可能性があるとともに、企業利益率を押し下げる流れになるのは間違いない。

スーパーチューズデーが終了した段階で、民主党はヒラリー・クリントン前国務長官、共和党は不動産王のドナルド・トランプ氏がそれぞれの党候補指名を獲得しそうな情勢になった。

わたしは投資家のポジションや世論調査が現在示している通り、トランプ氏は11月の本選で敗北すると想定している。もしも彼が勝利するようなら、あなたの投資に最大限の幸運が舞い込むことを祈るしかない。

トランプ氏が今打ち出している各種政策が実現した場合に何が起こるかについて、ここで多くの時間を費やして解説するつもりはない。なぜなら実現する可能性がある、もしくはそれらが「政策」という定義にあてはまるとはまったく思っていないからだ。選挙期間中は、トランプ氏に絡む要因を考慮したリスクプレミアムが増大し、市場のボラティリティが高まるとだけ言えば十分だろう。

もっともトランプ氏の台頭自体には、米国民に「われわれはどこで間違ったのだろうか」という反省を促す以上の大きな意味がある。

投資家は、トランプ氏が大統領になったらどうしよう、と深刻に心配することはない。どうせ当選しないのだから。ただ、同氏が立候補して以降、ずっと感じていたかもしれない社会に幅広く根差した何らかの動きにはしっかりと目を向けるべきだ。

クリントン氏は、予備選の相手であるサンダース上院議員とトランプ氏のために、本番の選挙では本来の政治スタンスよりも左寄りの立場を取らざるを得なくなりつつある。

もちろんクリントン氏は、トランプ氏の万事に対して乱暴な姿勢とは逆を行くだろうが、トランプ氏が取り込んだ経済的に弱い立場の有権者にもアピールしないと勝利はないということを理解できるだけの賢明さはあるし、周囲からもそう助言されているだろう。

サンダース氏とエリザベス・ウォーレン上院議員はこれまで、金融サービス分野の規制問題でクリントン氏を左派的に仕向けることに成功している。実体経済で活動する人々の間で、制御できない力(金融)にだまされているとの見方が広がっている点も考えると、クリントン氏はトランプ氏と対決する際にも厳格な金融規制路線を維持する可能性が大きい。

金融規制を厳しくすれば恐らく短期的には経済成長を押し下げるが、景気の過熱と急激な落ち込みの発生は少なくなると期待される。これは、より長い目で見ると、資産価格にとって好材料だが、目先的にはレバレッジが抑えられ、投資リターンに悪影響を及ぼす。

<労働者のパイ>

トランプ氏の移民と通商問題に対する姿勢は、見当違いや非常識なものだらけではあるが人気が高い。それは少なくとも、中・低所得層の有権者が、何年という単位ではなく何十年もの間、経済におけるかれらのパイを減らされてきたことが1つの理由になっている。

米国内総生産(GDP)に占める賃金・給与の比率は現在43.8%と2010年の過去最低水準から若干上向いたものの、50%超だった1969年に始まった長期にわたる低落傾向は変わっていない。

企業利益率はこれとほぼ正反対に同じ期間でおおむね上昇し、足元では過去最高水準近くで推移している。

グローバル化は資本にとって朗報だし、その波をうまく乗り切れる技能を持つ米国でもごく一握りの最上位層にとっては素晴らしい現象だ。インドやメキシコ、中国で貧困を脱する事例も生んだ。だが今から11月の本選挙の間に取り上げられる重要な論点ではない。

より注目されるのは、米国の雇用を守ったり、国内賃金、特にグローバル化で痛めつけられた下位80%の賃金引き上げにつながる政策だろう。そう考えると、米政府が中国からの輸入鉄鋼製品の一部に266%もの関税を課し、他の6カ国にも中国製品ほどではないがかなりの関税をかけても驚きはない。

わたしは、「クリントン政権」が誕生した場合に貿易戦争が起こるとは予想していない。だが、彼女らは、米国の給与所得者のために積極的に闘っていると評価されることを重視し、これと相反する多国籍企業からの要望への反応は鈍くなるとみられる。「クリントン政権」が通商問題で、環太平洋連携協定(TPP)にまい進したオバマ政権ほど企業に友好的な態度を取るとはとうてい思えない。

税制に関しても、トランプ氏が出馬していなかった世界に比べると再配分色が強まるだろう。トランプ氏の登場が今後の世の中に最も長く残すレガシーは、低い税率と経済成長への期待という共和党の基本理念に致命傷を負わせたことかもしれない。

こうした状況がもたらすさまざまな結果は良い場合も悪い場合もあり得るが、企業利益率にとっては全体として好ましくない形になるだろう。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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