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コラム:ヘリコプターマネー、ECBの選択肢となるか
2016年4月8日 / 04:21 / 2年前

コラム:ヘリコプターマネー、ECBの選択肢となるか

[7日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は穏やかな口調ながらも財政支出と構造改革の必要を訴える一方で、消費促進や物価押し上げのために国民に直接資金を配る「ヘリコプターマネー」の手法を取るべきだとの見方は否定している。

 4月7日、ECBが、国民に直接現金を配る「ヘリコプターマネー」を検討していないことは本当かもしれない。それでも、単なる「与太話」というよりは現実的な選択肢の側面が強まっているようにも見える。写真はユーロ紙幣。ブリュッセルで2011年11月撮影(2016年 ロイター/Thierry Roge)

いずれも検討に値する選択肢であるだけに、こうした正反対の姿勢は注目すべきだ。

ECBの中で何が起きているのかはもちろん分からないが、より伝統的な政策手段に対する彼らの自信が薄らいでいるのは確かなように思われる。

ECBは7日、追加緩和を決めた3月10日の理事会の議事要旨を公表した。そこでは中銀預金金利のさらなる引き下げと資産買い入れ増額の双方について、内部の意見対立があらわになった。特にマイナス金利が銀行のビジネスモデルに及ぼす悪影響には懸念が表明された。

キャピタル・エコノミスクのエコノミスト、ジョナサン・ロインズ氏は調査ノートに「議事要旨でECBの政策手段が枯渇し始めているとの懸念が強まるかもしれない。従って、最終的にはヘリコプターマネーなどのより過激な措置が打ち出される可能性は否定しない」と記した。

ただ7日には2人のECB当局者が、ヘリコプターマネー政策が実施されるとの思惑を打ち消した。

プラート専務理事は現金の直接配布はECBの議題になっていないと発言し、コンスタンシオ副総裁はもっと率直にヘリコプターマネー戦術に触れて「検討課題ではないし、いかなる形の議論もされていない」と述べた。

ECBが積極的に現金の直接配布を検討していないことは本当かもしれない。それでもドラギ総裁が先月、そうした手法を「実に興味深い」と位置付けた点からすると、単なる「与太話」というよりは現実的な選択肢の側面が強まっているようにも見える。

ECBはこれまでの緩和策を実施したことで、何もしなかった場合よりも物価上昇率をおよそ0.5%ポイント押し上げたと評価している。それでも3月のユーロ圏の消費者物価指数は前年比で0.1%下落したという現実を考えなければならない。

現金の直接配布には、金利に基づく金融政策や資産買い入れでは効果を及ぼせないようなところに影響を与えられるので、それなりの妙味を持つ。配られた現金は、資産価格を押し上げる投機バブルに使われるよりも消費に回される割合も多いだろう。同時に、「ただ」の現金はマイナス金利と違って、銀行システムも銀行の収益力も損なわない。

政治面と実務面でヘリコプターマネーには難しい問題があるとはいえ、ECBが大好きな財政刺激拡大と構造改革に比べればやりやすいかもしれない。

労働市場と生産市場をより効率的にしていく取り組みは長期的なプロジェクトだが、いつもECBがもっと歳出を増やして景気を刺激してほしいと要求することで軌道修正を余儀なくされる。

議事要旨では「理事会メンバーは、(欧州連合の)安定成長協定を順守する必要性とともに、協定にうたわれている柔軟性に関する項目を活用すべきだと強調した。財政政策のうちの成長押し上げ効果がより大きい要素が景気回復を支える可能性がある」と記された。

これは、ECBが従来と変わらず弱音を吐いている姿を表しているだけだ。理事会メンバーのビスコ・イタリア中銀総裁は、ECBは「時間を稼ぐ」ことはできでも、財政の後押しなく独自の政策のみで持続的な経済成長を生み出す役割は果たせないと述べている。

改革と財政資金の両方を懇願することは、結果に結びついていないかもしれないものの、公正な態度と言える。ユーロ圏における政策の世界では、税制と財政が中心からすっぽりと抜け落ちているため、金融政策が過度に重視されてしまうことはほとんど避けがたい。

そうした金融政策を続けながら、財政政策の面ではほとんど意味がない労働市場改革をやってみればどうなるか。ユーロ圏が抱える問題は解決に長い時間がかかるし、デフレは自己増殖的に進んでしまう。すると耳を澄ませば、ヘリコプターの爆音が聞こえてきてもおかしくない。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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