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コラム:米朝戦争リスクで「株売り」は賢明か
2017年8月17日 / 03:10 / 1ヶ月前

コラム:米朝戦争リスクで「株売り」は賢明か

 8月14日、北朝鮮の核兵器・ミサイル開発を巡り米国との緊張が高まっているにもかかわらず、金融市場が奇妙なほど穏やかな反応を見せているのはなぜだろうか。写真はニューヨーク証券取引所。6月撮影(2017年 ロイター/Lucas Jackson)

[14日 ロイター] - ファンドマネジャーは、ターゲットとするベンチマーク指数の動きから逸れないようにすることで報酬を得ている。このことが、北朝鮮の核兵器・ミサイル開発を巡り米国との緊張が高まっているにもかかわらず、金融市場が奇妙なほど穏やかな反応を見せている大きな理由の1つだ。

米国と北朝鮮が戦争に突入した場合、株式の大暴落が生じるだろうが、どれほど優秀で人間的であっても、顧客をその種の衝撃から守ることで報酬を得ているファンドマネジャーなど存在しない。

彼ら自身も一般人同様、何が起きるか予測できる立場にないというだけでなく、もし戦争の勃発に備えるため、最も安全で安心できる選択肢として運用資産を売り払おうとすれば、自らのキャリアやポートフォリオを、不当に大きなリスクにさらすことになる。

トランプ大統領が先週「炎と怒り」による報復を警告し、北朝鮮がグアム近海に向けたミサイル発射計画の策定を表明したことで、世界的な株安が起きたが、下落は比較的穏やかなものだった。MSCI世界株価指数.MIWD00000PUSは最大1.5%下げ、韓国の総合株価指数.KS11は一時4%、S&P総合500種.SPXは約2%下落。だが、米朝間の挑発がそれ以上続かなかったことで、11日と週明けの14日には市況は回復した。

核戦争がもたらす想像を絶する被害、そして、たとえ通常兵器による戦争であっても、経済混乱と甚大な人的被害が伴う可能性が高いことを考えれば、こうした下落はさほど大きな動きとは言えないだろう。

市場は常に効率的に動いているとする「効率的市場仮説」を巡る誤解に基づいて、人々はこのように想像してしまいがちだ。ある出来事に対する市場の反応は、その出来事によって生じる影響、そして今後の出来事の発生確率の分布の変化について、多少なりとも確かな手掛りを与えてくれる、と。つまり、恐ろしい結果が生じる可能性が高まれば、株式市場は下落するはずだというのだ。

米ジョージ・メイソン大学の経済学者アレックス・タバロック氏は、核兵器による大量虐殺は、株式の売却益で購入可能なあらゆるモノの価値を低下させてしまうと指摘する。

「結論としては、株式を売り払ったとしても、実際には核戦争への対応という意味では役に立たないし、それによって核戦争勃発に至るまでの生活が大きく改善されるわけですらない。問題は市場ではないのだ」とタバロック氏は記している。

「市場で起こすどんな行動も無意味、もしくは高いコストを伴う以上、核戦争の可能性が高まったことを知ったところで、ほとんど役に立たない情報なのだ。無益な情報は無視して、その情報が存在しなかったかのように株式の売買に臨む方がましだ」と同氏は主張する。

<ベンチマークにこだわる習性>

これは優れたアドバイスだ。

というのも、トランプ大統領が今後どう動くか、米国や同国機関の反応、もしくは北朝鮮が進む道について、正しく予想できると自信を持って考えられる人など、ほとんどいないからだ。

ヘッジファンドや年金基金を運用する立場にある誰かが、自分のスキルを有効かつ巧みに活用して核戦争の勃発に賭ける、などという発想は馬鹿げている。

1962年のキューバ危機の際には、米国と旧ソ連がほぼ確実に「相互確証破壊」を伴う戦争に(今日のわれわれよりもはるかに)近づいたが、そのときにも株式市場ではほとんど何も起きなかった。

キューバ危機のあいだ、株価はほとんど動かず約1%下落しただけで、危機解消後は3.5%上昇した。対照的に、その年の初めにケネディ大統領がUSスチールによる値上げを批判したことの方が、はるかに大きな影響を与えている。

投資家であり人間であるわれわれは、大惨事をうまく予測できないし、それによって利益を得ることも困難だ。だからわれわれは、本能的にもっと影響の小さい問題に意識を集中させる。

そして金融市場ではいつものことだが、何が起きているのかを理解するためには、市場仲介者がどのような仕組みで報酬を得ているのかを理解しなければならない。

きわめて悲惨な状況への備えを提案する財務アドバイスの市場も存在する。だがその市場は、ヘッジファンドや投資信託を販売するのではなく、AMラジオを通じて、金貨や非常食を販売するものだ。

大多数のアクティブファンドやヘッジファンドの運用担当者は実質的に、確率は低いが影響の大きい出来事を予想して動くのではなく、ベンチマークを上回ることで報酬を得ているのである。

戦争リスクが高まっているときに運用資産を売却してベンチマークから乖離(かいり)することは、ファンドマネジャーにとって、非常に大きなキャリアリスクを意味する。結果的に戦争が勃発しなければ解雇されても不思議はない。実際に戦争が起きたとしても、どうだろうか。

ここで重要なのは、緊張が高まるなかで市場が平穏だからといって、安心するべきではないという点だ。

株式市場が経済そのものを体現しているわけではないのと同様、それは決して人類そのものと同じではない。そして、事態が急迫してきたとき、私たちの将来の運命を占うバロメーターとして、株式市場はまったく参考にならないのだ。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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