[シンガポール 3日 ロイター] - スイスの金融大手クレディ・スイス のアジア太平洋地域のプライベートバンキング事業を統括するフランチェスコ・デ・フェラーリ氏は、富裕層向けサービスのコストが上がって大手企業だけが利益を稼げる状況になっているので、今後アジアではプライベートバンキング業界の再編が一段と進むという見通しを明らかにした。「ロイター・グローバル・ウエルス・マネジメント・サミット」における発言。
フェラーリ氏によると、プライベートバンキング業務の費用収益比率(1ドル稼ぐのにかかる固定費)が少なくとも0.80ドルに達したことで、アジアにおける大半のプライベートバンクは富裕層が急増している中でも赤字を出している。
同氏は「現在の費用収益比率では業界は持続不可能であり、今後3─5年でプライベートバンキング業界では多くの再編の動きを目にするだろう」と述べた。
実際に業界再編は加速している。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ は昨年、海外のウエルスマネジメント事業をスイスのジュリアス・ベア に売却。HSBCホールディングス は2011年12月に日本のプライベートバンクをクレディ・スイスに売った。最近ではスタンダード・チャータード が、モルガン・スタンレー のインドのウエルスマネジメント事業を買収することに合意している。
同氏はアジアの富裕層がさまざまな金融商品やサービスを求めているとし、これはつまり銀行は投資銀行とプライベートバンキングの双方を備えて、「それを重ね合わせた顧客へのサービスの提供を非常に重視する」必要があることを意味すると指摘した。
こうした中で同氏は、クレディ・スイスでは投資銀行とプライベートバンキングの連携がうまくいっている状況だとした上で、「当社のアジアにおけるプライベートバンクは利益を上げてる。われわれは過去2年間でかなりの高成長を続けてきた」と語った。ただ、具体的な利益の数字には言及しなかった。
クレディ・スイスは昨年、アジアにおいて資産ベースでは22%増加して1070億スイスフラン(1115億ドル)まで拡大。今年第1・四半期には資産規模は1120億フランとなっている。
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