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〔情報BOX〕イエレン米FRB副議長の「最適コントロール」モデルと金融政策

[20日 ロイター] - 次期米連邦準備理事会(FRB)議長に指名されたジャネット・イエレンFRB副議長がハト派と評される理由の一つには、失業率を迅速に低下させるため、インフレ率がFRBの目標である2%を一時的に上回ることを容認する「最適コントロール」モデルの提唱がある。

イエレン氏の議長指名承認に向けた上院の最終採決が来月6日に予定されるなか、投資家はこの政策モデルが米国の金融政策にどのような意味を持つかを慎重に検討するとみられる。

ゴールドマン・サックスのエコノミストは、FRBの金融政策が「最適コントロール」モデルに基づく場合、金融市場が現在予想しているよりも長期にわたり利上げが先送りされる可能性が高いと指摘する。

来年からイエレン氏が率いる予定のFRBはインフレを管理不能にさせるほど利上げを遅らせるのか、あるいは時期尚早な政策引き締めによって新たなリセッション(景気後退)を招くという、より大きなリスクが存在するのか、議論が始まっている。

<最適コントロールモデルとは>

イエレン氏が最初に政策金利の設定における「最適コントロール」モデルを公に披露したのは2012年6月の講演だった。

ただ、ここでいう失業率とインフレ率の関係のような政策のトレードオフという数学的モデル自体は、経済学に共通した概念だ。簡単に言えば、このモデルは物価安定と最大かつ持続可能な雇用の実現というFRBの2つの責務に沿った経済的成果を最適化する政策の決定方法を示している。

イエレン氏が説明するように、FRBはインフレ率が目標の2%を超えることを一時的に認める場合、目標を厳格に守る場合よりも迅速な失業率の低下を実現できる可能性がある。

同氏は2012年11月の講演で金融政策について「インフレ率の目標値2%からのかい離の最小化、失業率の目標値6%からのかい離の最小化の双方を同様に重視して目指していると考える」と語った。その当時、FRBは完全雇用を維持する上で失業率6%が上限と考えていた。

イエレン氏が講演で示した「最適コントロール」モデルに基づく試算では、FRBは2016年初めまで事実上のゼロ金利を維持し、2018年までは従来型モデルが示す水準を下回る水準に政策金利を維持する見通し。低金利が維持される見返りに、失業率は2015年半ばまでに6.5%に低下する見通しとなった。2015半ば時点の失業率見通しは、当時のFRBのベースライン予想は7%で、従来型モデルに従ってFRBがより早期に利上げを行った場合には7.5%とされる。

<懐疑的な意見>

「最適コントロール」モデルをめぐっては、経済的成果を最適化させる可能性はあるものの、コントロール機能が欠如し、政策ミスのリスクを高めるとの懐疑的な意見もある。

ノーザン・トラスト(シカゴ)のチーフエコノミスト、カール・タネンバウム氏は「最適コントロールモデルは、それ自体のコントロールを必要とせずにコントロールができるという錯覚をもたらす」と指摘する。

失業率目標の達成のためにより高いインフレ率を容認することで、FRBは手遅れになるまで問題を認識しない可能性があると懐疑的な向きは懸念する。

さらに、FRBの一貫性を維持するにはインフレ率と失業率の目標の定義が緩やか過ぎることも問題視されている。FRBはインフレ率の目標を2%としているが、目標には「中期的に」取り組んでいる。失業率目標については、FRB当局者は5.2─5.8%となる可能性が高いと話しているが、正確な数字は知らず、いずれ変更される可能性も認めている。

タネンバウム氏は「FRBは結局、同じデータを基に幅広い措置を講じることを正当化できるようになる可能性がある」と述べた。

<賛成意見>

イエレン氏が正しい方向に向かっていると考えるエコノミストは、現在のようにインフレ率が目標を下回る場合にFRBが直面する問題を説明するための「常識的な」方法として、「最適コントロール」モデルを捉えることを好む。

政策ミスのリスクは諸刃の剣であるうえ、時期尚早な政策引き締めは数百万人規模ではないにしろ数十万人の米国民の失業期間が、引き締め判断がなかった場合よりも長引くことを意味するかもしれない。

カリフォルニア大学サンディエゴ校のジェームズ・ハミルトン経済学教授は「政策判断は国民の生活に対して、もっと言えば、われわれが国家として成し遂げられることに対して永続的な影響をもたらす可能性があることを認識する必要がある」と述べる。

<現在の金融政策にすでに影響>

イエレン氏は先に「最適コントロール」モデルについて、有用な指標ではあるものの金融政策の判断に代わるものではないとし、「金融政策をコンピューターに任せることを推奨していない」とも述べている。

ただ、FRBの最近の動きは「最適コンロトール」の考えにかなり沿ったものだ。FRBは長期間にわたり低金利を維持するとの確信を金融市場に持たせるため、当局者はインフレ見通しが2.5%を下回って推移するかぎり、失業率が少なくとも6.5%に低下するまで利上げしないと公約してきた。現行のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は0%─0.25%。11月の失業率は7.0%だった。

FRBは12月18日に出した連邦公開市場委員会(FOMC)声明でこの公約を若干修正し、「とりわけ予測されるインフレ率が2%の長期的な目標より低くとどまる場合、失業率が6.5%を下回っても相当の期間(well past the time)、現行のFF金利の目標誘導レンジを維持することが適切になる公算が大きい」とした。

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