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〔アングル〕物価上昇にインフレ期待の効果、4月以降は企業の価格政策が動向左右

[東京 31日 ロイター] - 31日に発表された12月消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)は前年比プラス1.3%と、日銀の14年度見通しに一致するところまで上昇した。大方の予想より早いテンポで物価が上昇している背景には、円安や原材料高によるコスト転嫁に加え、期待インフレ率の上昇を反映した企業の強気な価格設定がある。ただ、春闘の賃上げ気運は高まっているものの、所得の伸びは物価上昇に追いつきそうにない中で、増税後の物価動向は、消費税の上乗せや付随値上げをめぐる企業の価格政策の行方に大きな影響を受けそうだ。

  <予想を上回る物価上昇率>

  12月コアCPIの上昇率は、5年2カ月ぶりの大きさとなった。電気料金や外国旅行パックなどの上昇に加え、テレビやパソコンの価格下落が止まってきたことが影響した。政策当局は、円安やコスト転嫁をだけでなく、期待インフレ率の上昇によって、企業の価格設定行動が変化した表れとみている。

アベノミクスは、インフレ期待に働きかけることを通じて、デフレ脱却を達成しようとしてきた。人々が将来のインフレ率上昇を予見すれば、景気状態が大きく変わらなくても、値上げを受け入れやすい環境が生まれる。     政府も日銀も、計測が難しいこの「期待の上昇」を何とか客観的なデータで把握しようと分析してきが、昨年後半あたりからはっきりとインフレ期待の上昇が確認できるようになったようだ。

政府高官のひとりは「需要と供給のバランス改善がさほど大きくない割には、物価の上がり方が大きい。これは人々のインフレ期待が少しは上がっている証拠」だと見ている。

日銀でも、円安による価格転嫁だけでなく、インフレ期待の上昇、需給ギャップ改善による物価上昇(景気に対する物価感応度の回復)が実際に表れてきたとみている。2000年代には海外安値品流入により失われてきた物価感応度も、このところ値引き販売が陰を潜めていることなどから、よみがえりつつあると感じているようだ。

民間エコノミストの予測をまとめたフォーキャスト調査では、13年度と14年度の物価上昇率について、当初は日銀の見通しをかなり下回っていたが、月を追うごとに上方修正されつつある。

この点について、 黒田東彦総裁は1月の記者会見で「実際に物価上昇率が上がってくる中で、予想物価上昇率も徐々に上がってきている」と指摘。民間エコノミストの物価見通しより強気な点について「予想物価上昇率について、まだ民間の方がやや慎重な見方をしているため」として、期待インフレ率による物価の押上げ効果を強調している。

  <消費増税時にコスト転嫁の動きも>

  実際の物価は、人々の消費行動や物価に対する見方を感じ取った企業が、製品やサービスの価格をどう設定するかに左右される。

ロイターの1月企業調査 では、4月以降、増税分の価格転嫁以外に、値上げを検討している企業の割合が4割にのぼり、原材料コストや人件費、その他を価格転嫁しようとしていることが明らかとなった。   回答企業からは「これまでコスト上昇でも値上げを見送ってきたが、増税を契機に価格改定を行う」(サービス業)、「適正利潤を確保したい」(食糧品製造業)など、ようやくコストカットからコスト転嫁へとカジを切る環境が整ってきたとの声が多い。

こうした動きも踏まえると、4月以降は増税転嫁分でおおむね2%程度、足元の物価上昇分1%強を足し合わせて、3%以上の物価上昇が起こるというのが、官民ともに共通した見通しだ。

  <4月以降の物価上昇率、民間では見方分かれる>

他方で、今年の賃上げ率は大企業などで定期昇給を含めても2%台というのが大方の見方となっており、中小・零細企業の勤務者や、非正規雇用者を含めれば、雇用者全体の所得の伸びはかなり低く、実質的な所得は目減りすると予想されている。

政府・日銀は、消費について好調だった2013年度と比べてマイナスの伸びになることを覚悟している。それでも、日銀では期待インフレ率が上昇していることから、物価の上昇は途切れないとみており、実質成長率が13年度の2.7%から1.4%へと減速する14年度でも、物価上昇率(消費増税分を除いた実質ベース)は1.7%程度へと高まるとみている。  

他方で政府はもう少し慎重だ。「消費増税後の物価の動きがどうなるか不安がある」(政府高官)として、デフレ脱却宣言は今年中に出せるかどうか、まだわからないとしている。中には「日銀と同様に2%を達成するまではデフレ脱却とはいかないだろう」と考える政府関係者もいる。  

民間エコノミストの間でも、見方は定まらない。「景気回復に伴う需給ギャップの縮小が続くことに加え、企業や家計の期待インフレ率も緩やかに上昇する可能性が高く、CPIコアの上昇率が最も低下するとみられる14年夏場でも、プラス1%程度の伸びは確保できるのではないか」(第一生命経済研究所・主席エコノミスト 新家義貴氏)との声が出ている。   他方で「増税後に便乗値上げと還元値下げのどちらの影響が強く出るか見極めは難しいが、コアCPIの伸び率が1%割れとなるのは、早ければ4─6月期、遅ければ7─9月期となる見込み」(SMBC日興証券・シニアエコノミスト、宮前耕也氏)との厳しい見方もある。

期待インフレ率の上昇や景気に対する物価感応度の回復も、長期にわたるデフレの後だけに、増税後の企業の価格設定と賃上げのバランス次第で崩れかねない脆弱さには注意が必要だ。 (中川泉 編集:田巻一彦)

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