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〔アングル〕黒田日銀総裁、物価と金融安定の両立強調 シグナルの可能性も 

[東京 28日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁が、金融政策による物価目標達成と金融市場安定の両立の重要性を強調し始めた。2%の物価目標達成に向け自信を深めつつあるが、いまだに低位にとどまる長期金利が急上昇するリスクについて、えん曲に警戒を呼び掛けたのではないかとの声も出ている。

  黒田総裁は28日午前、日銀本店で開かれた国際会議で講演し、金融政策運営の課題として「物価と金融の安定をどう両立させるか」「金融政策運営において物価と金融の両者の安定を考慮すべきか」などと問いかけた。

「講演は一般論」で具体的な今後の金融政策の可能性をにおわすものではないというのが、日銀の公式見解。

だが、需給ギャップが「思いのほか速いペースで縮小」(4月30日開催の金融政策決定会合議事要旨)し、日銀は2%の物価目標達成に自信を深めている。

市場では2%の達成に懐疑的な声も多く、物価面での市場と日銀のギャップは埋まっていない。そこに長期金利の意図せざる急上昇が起きた場合、果たして金融市場の安定的な運営は可能なのかどうか──。そこに目を向けてほしいとのメッセージが秘められているのではないかとの見方が、市場の一部で浮上している。

  ある国内銀行の関係者は「一昨日の岩田規久男副総裁の発言に続き、日銀は市場に対し、0.6%の長期金利に安住するな、とシグナルを出してきた可能性がある」と述べる。

岩田副総裁は26日の講演で、物価が2%を恒常的に上回りつづければ「政策を調節する」と表明。緩和縮小の可能性に言及していた。

日銀の衛藤公洋・金融機構局長は27日、ロイターのインタビューで「金利がどのような事情で上がったとしても、金融システムは相応に耐えられる」と指摘。日銀の公式な見解として、金利上昇リスクを吸収できると説明している。

しかし、長期金利が低位に張り付くことで、ある日突然に上方へ跳ねる「マグマ」が市場にたまることへの懸念も、日銀内部にはあるもようだ。   黒田総裁が繰り返し「量的質的金融緩和(QQE)は実質金利を押し下げる」と強調しているのは、裏を返せば物価上昇に伴い名目金利は自然に上昇するとのメッセージだろう、と複数のBOJウオッチャーは指摘する。

また、ある市場関係者は、黒田総裁が指摘した「金融の安定」の中には、膨らんだ日銀資産を膨張から縮小に転じさせようとした場合に、どういう影響が金融市場に出るのかというもっと「大きなピクチャー」を前提にした問題意識が隠されている可能性があるとみている。「学術的なミーティングだったので、中長期的な問題意識を込めていたのではないか」との見立てだ。

元日銀理事で富士通総研エグゼクティブ・フェローの早川英男氏は20日に開かれた「ロイター日本投資サミット」で、1%台前半で推移している物価上昇率が再び上がり始めれば、市場が動揺するのではないかと予測。早ければ今年末にも長期金利が上昇する可能性があると語っている。

この日の黒田総裁の発言が、数カ月たって振り返ってみれば、市場への「明確なメッセージ」だったとわかる日がくるかもしれない。 (竹本能文 編集:田巻一彦)

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