[ロンドン 16日 ロイター] - 経済協力開発機構(OECD)は16日、多国籍企業の課税逃れの防止策に関する報告書を公表した。実行されれば米グーグル やアマゾン・ドット・コム などによる節税行為が困難になる可能性がある。
多国籍企業の課税逃れは社会問題化しており、主要20カ国・地域(G20)は昨年、OECDに対して防止策をまとめるよう要請していた。
課税が強化されれば米大手ハイテク企業が最も大きな打撃を受けるが、製薬会社や消費財メーカーのほか、多くの欧州企業にも影響が及ぶとみられる。
OECDは声明で、報告書の素案は既にG20とOECDの全加盟国の支持を得ているとした。
ただ、今回の報告書は来年にまとめる「課税ベースの縮小と利益移転」への対応策の一部で、加盟国は提案の全体像を確認した上で法制化を検討する見込み。
OECDは今回の提案について、二重課税の回避などを目的とした国際的な税制上の取り決めを多国籍企業が悪用することを防ぐのが目的と説明。OECDの租税部門を率いるパスカル・サンタマン氏は電話会見で「われわれは二重非課税の解消を目指している」と述べた。
報告書は、グループ企業間の取引による利益の移転を制限するよう求めている。
英通信大手ボーダフォン は、ルクセンブルクに拠点を置く子会社が通信機器を購入し、他のグループ企業に売却することで多額の利益を計上しているが、この利益は同国では非課税扱いとなっている。
またOECDは、課税対象となる事業拠点を置かずに事業を行うことを可能にする現行ルールを変更するよう提案。
アマゾンは昨年、欧州での売り上げ150億ユーロを課税が免除されているルクセンブルクの子会社に移しているが、ルール変更により影響を受ける可能性がある。
音楽配信を手掛けるアップル、ソフト大手大手アドビ・システムズ 、オークションサイトを運営するイーベイ など、国際的な電子商取引を展開する企業も、売り上げが発生した国で計上を求められることが考えられる。
会計事務所BDOのアントン・ヒューム氏は、OECDの提案が採用されれば、企業がこれまでの慣行を見直し、租税回避地(タックスヘイブン)から本国へ雇用を戻す可能性があると指摘した。
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