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〔アングル〕原油安と円安進行でQQE副作用の声 深まる日銀との溝

[東京 19日 ロイター] - 足元で急速に進む原油安と円安という外部環境の下で、日銀が進める量的・質的金融緩和(QQE)の副作用を指摘する声が、金融市場の一部で浮上してきた。ただ、日銀の黒田東彦総裁は、そうした「批判」とは距離を置き、リスクが顕在化しそうになれば、ちゅうちょなく政策対応する姿勢を強調。批判する意見との溝が深まっている。

黒田総裁は19日の会見で、原油安による物価上昇率の低下が大きくなった場合には、円安を誘発する可能性もある追加緩和の可能性を否定しなかった。   また、同日の閣議後会見で甘利明・経済再生担当相は、円安と原油安について「いいとこ取りができている」と述べ、前向きな見方を示した。

第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏も「外需型企業には円安は輸出採算改善に、内需型企業には円安コストを原油安でカバーしており、うまい組み合わせになっている」と見ている。

市場では、10月末の追加緩和に対し、輸出企業をさらなる円安で後押しするために実施した政策として、それなりの効果を認める声も多い。

 11月のロイター企業調査では、日銀の追加緩和について、事業にとって「影響はない」との回答が63%にのぼったものの、「好影響」との回答も25%あった。輸出型企業からは「円安による為替差益が発生」「設備投資の増加」、内需企業からも「株価上昇による資産効果」などの指摘が出ていた。

一方で、追加金融緩和以降に一段と円安が進行し、円安進行への不安感が一部の企業や消費者の間で強まっていることを示す経済データも出てきた。

11月消費者態度指数や景気ウォッチャーのデータなどで、悪化が止まらない背景には、消費者の物価高への懸念がある。12月ロイター短観で製造業の業況感が悪化したのも、円安によるコスト増の負担感が輸出型企業にものしかかってきていることが影響している。

帝国データバンクの11月調査でも、来年の景気への懸念事項として、円安進行との回答が50%を超え、昨年同時期の29%から大幅に増えた。ロイター10月企業調査でも、115円より円安が進行する事態には、政府に介入を希望する企業が7割近くを占めた。   企業にも消費者にもメリットの大きい原油安を、追加緩和による円安によって、相殺していると指摘する声も出ている。  

原油価格が2割下落すると、年間の原油輸入額が6兆円削減され、消費税3%分の引上げに伴う国民負担額8兆円のかなりの部分を相殺する効果がある。

BNPパリバ証券・チーフエコノミストの河野龍太郎氏は、ロイターに投稿したコラムの中で「原油安は現在の日本経済にとって、実質所得を改善させる数少ない要因」だと指摘。「すでに原油価格下落の減税効果は、円安で3割近くが失われている。今後、1ドル=132円程度まで円安が進むと、当初の効果の半分が失われる。167円で全てが失われる」と分析した。

  日銀は原油価格下落により消費者物価の2%目標が遠のいた場合、さらに追加緩和に踏み切るのか──。19日の会見で黒田総裁は、原油安の効果がいずれはく落するとの見方を示し、2%の物価目標達成には引き続き自信を示した。

これに対し、第一生命経済研の熊野氏は、来年国半にかけて今年の反動で原油安がはく落すると同時に、物価を押し上げてきた円安効果がはく落すれば、物価が再浮上することは難しくなるとみている。

来年後半にかけて、物価が2%に向かって上昇していくとの黒田総裁の説明は辻つまが合わなくなっていると指摘。このため、追加緩和の実施可能性が高いと予想している。

  また、東短リサーチ代表取締役の加藤出氏は「経済の体温が上がって、後から物価上昇がついてくるはずだが、日銀のように先に物価上昇を目指すと、経済にゆがみが生じかねない」と述べる。

さらに円安の弊害が目立ち始めたこともあり、日銀が物価目標のために短期的視点でエネルギー価格下落に対応する政策を推し進める姿は、本来の中央銀行のあり方ではない、と批判的だ。

こうしたゆがみを回避するため、海外では、原油安など外部環境で物価が下がっている場合は、短期的に対応しないのが中央銀行の常識だと指摘。エネルギー価格などの外部要因でインフレ率が目標から外れても責任を免除するとされていると述べている。 (中川泉 編集:田巻一彦)

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