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WRAPUP1‐消費増税 有識者の7割が14年3%上げ容認、激変緩和策に焦点

[東京 31日 ロイター] - 来春予定される消費増税について、有識者から意見を聴く政府の「集中点検会合」が31日、終了した。出席した60人のうち、約7割の44人が、2014年4月に予定通り3%引き上げるべきと主張。経済は着実に回復しており、先送りした場合、国際的信認が失われ、企業活動・金融システム・財政に与える打撃が大きいとの副作用を理由に挙げた。社会保障分野の実務者からは財源確保のための容認論が大勢を占め、産業界からは増税による景気下押しへの対策を求める声が相次いだ。

甘利明経済財政相は来週前半にも点検会合の概要を安倍晋三首相に報告する。首相は会合での意見も参考に、10月上旬にも増税の是非を最終判断する予定。学識経験者や産業界などの実務家の増税容認は首相の判断に影響を与える可能性がある。今後は、点検会合で要望が相次いだ、低所得者・中小企業対策、財政出動、減税措置など、増税による景気の悪影響を緩和する経済対策の具体化が、増税の時期や手法などとともに焦点になりそうだ。

  <消費増税判断なら、十二分の対策が必要との意見が大勢>

  甘利明経済財政相は31日、7回の会合を通じ、増税による景気下押しへの対策については全員が必要との認識だったとし「この危機を乗り越える対策は、足らずに失敗することはあってもやり過ぎて失敗することはない。仮に予定通りという判断になるなら、十二分な対応をすべきとの意見が大勢だった」と指摘。十分な対応を検討する可能性を示唆した。

29日の会見でも甘利氏は「消費増税について判断する際、首相が経済の仕組みが回ることを後押しするプランの取りまとめを指示するだろう」と述べ、増税を最終決断する際には、首相が経済対策の検討を指示する可能性を強くにじませた。

 29日には、自民・公明両党の与党税制協議会も秋の臨時国会に提出が予定される投資減税案について9月中にとりまとめる方針を確認。消費増税時に低所得層に一律で現金を配る「簡素な給付措置」の具体化を協議することも決めた。水面下では、首相が最終判断を明確にすれば直ちに動き出せる準備が進められている。

  <44人が予定通り引き上げに賛成、反対論では「1%刻みや1年延期」論>

政府は26日から31日まで合計7回の「集中点検会合」を開き、増税の是非や、増税が経済に与える影響などについて検証した。意見表明した60人のうち2人が判断を保留、44人が「やむを得ない」を含め予定通りの実施を主張した。慎重論者は、増税開始時期の1年先送りや、毎年1%ずつの小刻みな引き上げなど政府案の変更を提案し、明確な増税反対論も複数あった。

 このうち、焦点のひとつになっているのが、3%の消費税引き上げに耐えうる景気の力強さが展望できるかどうかという点だ。30日に公表された一連の経済指標を受けて、甘利経済財政相はデフレ状況について「脱却しつつある」と述べるなど、「デフレ状況ではなくなりつつある」としてきた従来の判断を前進させている。

会合では増税がデフレ脱却を阻害するかどうかについて、賛否が分かれた。慎重論者は、予定通りの増税は「アベノミクスによる景気回復とデフレ脱却を阻害する可能性がある」(浜田宏一・内閣官房参与、イェール大学名誉教授)、「デフレ脱却途上では増税の刻みは小さくすべきだ」(本田悦朗・内閣官房参与、静岡県立大学教授)などと主張。増税時期の先送りや小刻みな引き上げを求めた。

これに対して、伊藤隆敏・東京大学教授は消費増税に伴う景気の落ち込みは「軽微」とし、「増税とデフレ脱却は両立する」と反論した。

計画が先送りされた場合の財政の信認低下への危機感は強く、「消費増税に伴う景気後退リスクと、見送りによって財政の信認を損なうリスクをてんびんにかければ、後者が重い」(武田洋子・三菱総合研究所チーフエコノミスト)、「国際的な信認が失われ、株・債券などへ悪影響を与える。長期金利の冒頭が懸念され、企業活動・金融システム・財政に大きな打撃となる。将来世代へのつけがさらに拡大する」(岡本圀衛・経済同友会副代表幹事)、「政府は少しでも先送りしていると思われることをすべきでない」(吉川洋・東京大学教授)など懸念表明が相次いだ。

他方、2段階引き上げを見送り2015年に5%上げを主張した白石興二郎・読売新聞グループ社長は、見送りによる金利急騰リスクへの対応として「歯止めなく先送りするのではなく、15年10月に10%に引き上げることを国際的に公約し、(国際社会に)説明する」ことなどを挙げた。

社会保障分野の実務者・有識者などからは、「消費税の引き上げ分は社会保障の財源に使う必要がある」(横倉義武・日本医師会長)、「(社会保障の)安心感が増税の理解につながる」(井伊雅子・一橋大教授)、「社会保障制度の持続可能性が高められるのであれば有意義」(岡崎誠也・国民健康保険中央会会長、高知市長)と、容認する声が大勢だった。

  <1%ずつの上げには、中小企業などから反対の声>

増税による経済への影響が最も軽微とみられ、慎重論者が提案する「1%ずつ」の小刻み案には、中小企業を中心とした実務家から反対意見が相次いだ。「対応するための事務量が膨大」(岡村正・日本商工会議所会頭)、「価格転嫁を阻害し、中小企業の収益悪化を招く」(鶴田欣也・全国中小企業団体中央会会長)と表明。価格転嫁の難しさや事務コストの大きさが、中小企業の重荷になる構造を浮き彫りにした。

  <税・財政両面から対策を求める声>

予定通り3%引き上げた際に必要となる対策については、補正予算、低所得者対策、規制緩和や法人減税など、毎回、税・財政両面から多様な要望が相次いだ。

具体的には、「法人減税の前倒し、自動車取得税・重量税廃止・一時的な所得減税など対策規模5兆円」(岩田一政・日本経済研究センター理事長)、「低所得者層への配慮、投資減税や住宅取得者向け優遇措置」(中空麻奈・BNPパリバ証券投資調査部長)、「中小企業の軽減税率、実効税率下げ」(鶴田欣也・全国中小企業団体中央会会長)、「車体課税見直し」(豊田章男・日本自動車工業会会長)など。31日の会合では、景気が下振れした際の機動的な金融政策を求める意見も出た。

*有識者の具体的な意見は〔情報BOX〕点検会合、予定通りの消費増税への賛否 をダブルクリックしてご覧ください。 (吉川 裕子 編集;田巻 一彦※)

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