[フランクフルト 3日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は9月から、銀行による実体経済への融資を促進するため、銀行に超低金利で期間4年の資金を貸し出す。「的を絞った長期資金供給オペ(TLTRO)」と呼ばれるこのプログラムの詳細は以下の通り。
◎適用対象
ECBの資金にアクセスできるユーロ圏の銀行すべてが対象。単独ではアクセスできる資格を備えていない銀行でも、資格を有する1銀行を柱としたグループを通じて借り入れることができる。ECBがこうした手法を可能とするのは、業界全体に銀行融資を行き渡らせるのを助ける狙いがある。
◎いくらまで借り入れが可能か
ドラギECB総裁は3日、最大で総額1兆ユーロ(1兆3600億ドル)が貸し出されるとするECB自体の予測値を紹介した。
銀行は第一段階として、9月18日と12月11日に実施するオペで最大約4000億ユーロの借り入れが可能。
2回のオペにおける1行の合計借り入れ額は、2014年4月30日時点の住宅ローンを除くユーロ圏企業および家計向け融資額の7%を上限とする。
銀行は15年3月から16年6月にかけて四半期毎に実施されるオペを通じ、さらに借り入れることができる。1行の借り入れ限度額は実体経済への融資額に応じて決まる。
4月30日までの1年間に実体経済への融資を増やした銀行は、融資増加分の3倍まで借り入れが可能。
14年4月までの1年間に融資を減らした銀行の融資額は、15年4月までの1年間も同様のペースで減少を続け、その後横ばいになると想定される。そうした想定に基づき基準額が設定される。
こうした銀行であっても、個々の基準額より融資を増やせば増加分の3倍までTLTROによる借り入れが可能。最初の2年間は返済が行われない。
◎銀行が返済を迫られるのはいつか
ECBはプログラム開始の2年後に銀行の融資状況を調査する。ECBが設定した正味の融資想定額を達成できなかった銀行は、16年9月に借り入れを全額返済しなければならない。
すべてのTLTROは18年9月に期日を迎える。
◎銀行は借り入れた資金で国債を買えるか
銀行は低利のTLTRO資金を利用して、国債などより利回りの高い資産に投資するのではないか、との懸念が出ていた。わずか2年後に返済を迫られるとしてもだ。
しかし、ECBが期間3年のLTROを実施し、銀行が「キャリー取引」に利用した2011─12年に比べ、そうした行動を採るインセンティブは弱まっている。
銀行は現在、通常のECBオペにおいてリファイナンス金利の0.15%で資金を借り入れることが可能で、この金利はTLTROで想定される0.25%を下回る。TLTROの金利はその時点のリファイナンス金利に10ベーシスポイント(bp)上乗せした金利だ。
プログラム設計の背後にある考え方は、現在よりも政策金利が上昇しているであろう2018年まで銀行は現在の低金利を固定できるというもの。このため途中返済が罰則として機能するわけだ。
また、ユーロ圏の国債利回りは12年以来大幅に低下しているため、銀行が高い利回りを得ようと国債を買うインセンティブは低下している。
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